彼が休暇をもらって岡山県の倉敷市へ旅行に出かけたときのことである。一日市内を見て歩き、夜、食事をするために小さな料理屋へ入った。空いている席がないかな、と見まわすと、奥のほうに一つだけ空席がある。そこへかけようとしたときに、話し方・生き方教室で私にいわれたのを思い出し、先に座っていた一人の紳士に、「こんばんは」と明るく大きな声で挨拶をした。するとびっくりしたような顔をしながらも、その紳士も「こんばんは」と声を返してくれたという。 . . . 本文を読む
二人の共犯者AとBが留置所で取調べをうけているとしよう。二人とも黙秘を押し通せば証拠が乏しいため、別の微罪による立件となる。二人とも自白する気はなかったが、さすがの警察は各人に切り出す。「お前が自白すれば、あいつを主犯にして、お前はそそのかされたことにしてやる。ま、基本的に無罪放免だ」 . . . 本文を読む
ミス・エルザは校長で私の担任だ。9月の新学期が始まると、私たち一人ひとりを呼び出して話し合った。「ピーター。あなたには得意なものがいくつかあるけれども一つだけ生かさなかったものがある。わかる?」。私は首を横に振った。「作文。得意なのにあまり練習しなかったでしょう。作文の練習をこれからの目標の一つにしましょうね」。こんな調子で読みや綴(つづ)り、習字、算数についても目標が定められ、学習帳に書き込まれる。彼女は、潜在能力がありながらそれを生かしていない分野があると執念を燃やして対応したのだ。 . . . 本文を読む
プラチナ(白金)は金属なのにさびない。抗酸化作用が注目され、アンチェインジング(抗加齢)をうたう化粧品などに続々と配合されている。アンチェインジングの世界でプラチナが注目されるようになったのは、プラチナを人体に作用しやすい超微粒子化した「白金ナノコロイド」が開発されたからだ。 . . . 本文を読む
盧溝橋事件をきっかけにして1937年(昭和12年)に日本とシナのあいだで戦争が勃発、翌38年、日本軍は大陸の真ん中をどんどん進軍して行きます。河南省の中心である開封(かいほう)という街を占領。つぎの鄭州(ていしゅう)という町へ向かいます。そうなると、国民党政府にとって重要な都市である武漢(ぶかん)が危うくなる。蒋介石はどうしたか? なんと黄河の堤防を決壊して洪水を引き起こしたのです。 . . . 本文を読む
一人のエスキモーの老人がこんなことを言ったという。「わしらは自分たちの暮らしのことを自分たちの言葉で語りたい。英語ではどうしても気持ちをうまく伝えられん。英語ではSNOWでも、わしらにはたくさんの雪がある。同じ雪でも、さまざまな雪の言葉を使いたい」。 . . . 本文を読む
日本の憲法学者は、中世の神学者に似ています。70年以上も前に作られた日本国憲法が21世紀に生きる日本人の生活や幸福に適しているか――そんなことは憲法学者にとってはまったく関心のないことなのです。彼らにとって何よりも重要なのは、日本国憲法に書いてあることに沿っているか(合憲)か、沿っていないか(違憲)であり、それ以外のことにはまるで関心がないように見えます。 . . . 本文を読む
ここに見られるのは「新編日本史」事件の場合とは比較にならぬ教科書調査官の質の劣化と偏向である。それに加へて、現在世界的に認証を得つつある歴史修正主義から敗戦利得権者達に向けられた、その暗黒面暴露への恐怖である。歴史教育の領域に於ける文科省官僚のこの腐敗は、武漢肺炎のウイルスにも譬(たと)ふべき惨禍を教育界にもたらすであらう。 . . . 本文を読む
多くの日本人がその存在を知らないことに驚きますが、日本の大手マスコミは中国と1964に「日中記者交換協定」を交わしています。これによって国交がない段階で日本の報道機関が北京(ペキン)に駐在することが認められましたが、68年に一方的な改定である「政治三原則」を押し付けられます。 . . . 本文を読む
かつて医療費の増大に苦しんだスウェーデンでは、1990年代に病床数と医療費増大の相関関係に気づきました。その主たる原因である高齢者向けの医療制度です。寝たきり老人をたくさんつくれば医療費が増大する。しかも、高齢者のQOL(生活の質)は著しく下がります。そんな当たり前のことに気がついたのです。 . . . 本文を読む
ノーベル経済学賞を受賞した米コロンビア大学のジャセフ・E・スティグリッツ教授が、日本政府の招きに応じて経済財政諮問会議に出席したのは、2017年3月14日のことだった。資料は内閣府のホームページにも公表されている。ところが、この出来事を日本のメディアはほとんど報道しなかった。なぜか? 理由は二つある。一つは、メディアにとって不都合な事実だからだ。 . . . 本文を読む
冷戦後の米国外交には、3つのポイントがあった。第1は、二度と米国のライバルとなる国を生ませない。これはいかなる国にも地域覇権さえも許さないとする断固とした考え方である。第2は、アメリカ的価値観(民主主義)の強制である。第3は、民主主義体制でない国は力づくでも民主主義化させる(レジームチェンジ)である。この考えは「ウォルフォウィッツドクトリン」と呼ばれているが、トルーマンドクトリンと本質は同じである。 . . . 本文を読む
インタビューに、「政府が聞き取り調査をした軍人・軍属の中にも強制連行があった、と証言した人はいたのですか」と問われ、河野氏は「直接強制連行の話はなかった。しかし、総合的に考えると『文書や軍人・軍属の証言がなかった。だから強制連行はなかった。集まった人はみな公娼だった』というのは、正しい論理の展開ではないと思う」と、まことに非論理的、情緒的で曖昧な反応を示している。一、二の例外を国家総合犯罪ときめつける判断の飛躍を示している。 . . . 本文を読む
明治維新にはじまって飛躍的に発展したわが国の近代社会を、これは本当の近代と言える実体を持たない偽物であり、近代以前である、前近代であるとみなし、貶(おとし)め、蔑(さげす)み、卑しめる論評は、一部であまりにもしつこく言い古され、今では耳に胼胝(たこ)ができているくらいですが、この罵倒論法を最も極端にまで突きつめ、正気を疑わせるほどの妄言を吐いたのは、大塚久雄(おおつかひさお)です(第13章参照)。 . . . 本文を読む