過去の幣原と芳沢の2代の外相は、それでも何とかチャイニーズの悪宣伝を打ち消す努力をしていました。ところが、内田(康哉)は火に油を注ぐ行動を繰り返します。まるで中華民国に宣伝の材料を提供するのが、日本国外務大臣の使命だと信じているかの如く。8月25日。第63臨時帝国議会で政友会の森恪代議士が、質疑に立ちました。外交方針についての質問で、特に懸案になっていた満洲国承認問題について外相の所見を問いただしました。森の趣旨は、「満洲国承認には賛成だが、国際情勢を考えると簡単ではない。政府は準備をしているか」です。 . . . 本文を読む
正直だから好きだの、きれいだから愛するの、などといっている段階は、恋愛感情の中に批判がまじっている。批判と打算とは紙一重だ。そこへいくと、「好きだから好きなんだ。理由はない」というのは、はるかに純粋である。谷崎潤一郎は「好きな女のなら、糞でもくらう」といっているほどだ。 . . . 本文を読む
中朝国境の西側の鴨緑江沿いを遡るのと、河口に近い中国・丹東の対岸の新義州にでっかい煙突が見える。観光ガイドは「日本時代の王子製紙の工場で今も動いている」という。さらに中流には日本時代に水力発電のために造られた巨大な水豊ダムがあり、古代・高句麗の有名な「広開土王碑」がある集安では、対岸の満浦に巨大な「日本時代の銅精錬工場」が見える。中朝国境は東側は豆満江だが、観光スポットの図們で川の水が濁っているのを見てガイドは「上流に鉱山があるから」という。 . . . 本文を読む
米国大統領リチャード・ニクソンはソ連を封じ込める効果的手段として、同盟関係を組み替え、それまで敵対してきた中国を梃子(てこ)とすることを思いつき、突如北京を訪問すると発表した。世界に「ニクソン・ショック」を与えた。最終的な米国の敵は中国である。その中国のパワーを減殺させるためには、いたずらに直接的な貿易戦争、技術移転阻止、スパイの摘発、中国企業制裁だけでは効果があがらない。げんに中国は南シナ海を支配し、戦後の世界秩序を大きく変えてしまった。こうした中国の増長に対して、日米も欧州も、いやアジア諸国もロシアも、決定打を欠いた。ならば状況を変える突破口として、トランプは米朝会談という「トランプ」(切り札)カードを切ったことになる。 . . . 本文を読む
ペマ・ギャルポ『犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る侵略に気づいていない日本人』(ハート出版)は涙なくして読み通せない。行間にも氏の苦労、チベット人の悲劇、その懊悩と悲惨な逃避行のパセティックな思いが滲み出ている。中国にあっという間に侵略され、中国に味方する裏切り者も手伝って、120万人もの同胞が犠牲となった。ダライ・ラマ法王は決死の覚悟でヒマラヤを越えてインドに亡命政府を作った。その表現しようのないほどの深い悲しみ、暗澹たる悲哀、血なまぐさい惨劇、しかしこのチベットの教訓こそが、日本がいま直面している危機に直結するのである。 . . . 本文を読む
この件は、田中氏が北京などで北朝鮮側の「ミスターX」らと30回近く非公式折衝を実施したうち、14年8月30日に政府が小泉初訪朝を発表し、9月17日に金正日総書記と日朝首脳会談を行うまでの間の2回分の交渉記録が外務省内に残されていない―という大問題なのである。通例、外交上の重要な会談・交渉内容はすべて記録に残して幹部や担当者で情報を共有し、一定期間を経て国民に情報公開される。そうしないと、外交の継続性や成果は無に帰するし、どんな密約が交わされていても分からない。それが欠落しているのだから、看過できる話ではない。 . . . 本文を読む
【倉山】 いよいよ私たちの対談も終わりに近づいてまいりました。最終章の中心は公明党です。公明党はまさに左上中の左上です。現在の安倍政権は長期化していますが、これは安倍さんが日銀人事で勝ったからです。黒田さんがお札を刷るから、株価が上がり、支持率が上がる。すると、選挙で野党に勝てるから、自民党で誰も引きずりおろせないと。それ以外ないです。強いて言えば、他が弱いだけ。 . . . 本文を読む
最後に、今回の動きを主導している人物にふれておきます。高大連携歴史教育研究会の会長・油井大三郎氏です。油井氏はその著書『未完の占領改革』(1989年)で、占領軍の日本国家解体が不徹底であったと批判している学者です。このような人が文部科学行政に影響力をもっていることは、深刻な事態であるというべきです。 . . . 本文を読む
まだこんなことを言うのかと心底あきれた。河野洋平元衆院議長が13に東京都内での講演で、次のように述べた件である。「植民地問題の処理もできていない国に、ただ(拉致被害者を)帰せ、帰せと言っても問題は解決しない。国と国の関係を正して、帰してもらうという手順を踏まざるを得ない。まずは、国交正常化と戦後賠償を優先しろということだろう。だが、実際には北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、12日の米朝首脳会談でトランプ米大統領に「安倍晋三首相と会ってもよい」と語っていた。 . . . 本文を読む
12日の首脳会談で米朝は、「朝鮮半島の完全な非核化」実現で原則的な合意をした。これが米国の思惑通り北朝鮮の核兵器完全廃棄の方向に進めば、北朝鮮は見返りとして日本からの多額の経済協力資金を得ようと日本に接近してくる。すでに5月段階で、北朝鮮政権内部筋は私に、米朝協議がうまくいけば、2002年の小泉純一郎首相訪朝時の日朝協議で取ることに失敗した多額の過去清算資金を受け取るという方針が決まっていると、話していた。 . . . 本文を読む
4月に全国に先駆けて開設された麗澤大学大学院学校教育研究科道徳教育専攻で、新たな道徳教育学の理論と実践の体系化を目指した研究が始まった。筆者が担当するのは「臨床教育と道徳教育」という科目だ。子供が問題行動から立ち直った教育実践を理論化した臨床教育学の視点から、道徳教育の在り方を根本的に見直すことを目的としている。 . . . 本文を読む
1853年にペリーの黒船が来航したとき、仰天した日本人は開国を強要され、ついには不平等条約を結ばされたと言われます。しかし、果たしてそうした見方は正しく史実を反映しているのか、検討してみましょう。じつは鎖国下にあってもオランダ商館長からの情報が日本にもたらされていたこともあって、黒船来航は知られていました。ですから、それほどまでには恐れはしなかった。 . . . 本文を読む
【スターリンの陰謀】―――スターリンは日本が敗戦寸前になると、日本との中立条約を違約して日本の領土や満洲を襲い、火事場泥棒のように領土や資産を盗んだだけでなく、多くの日本人を殺し奴隷化した。この犯罪行為は表面的にはヤルタ協定の米国の依頼によるが、スターリンはもともと満洲の支配に関心があったので、米国を騙して満洲を手に入れると最後に違約して共産化してしまったのである。 . . . 本文を読む
【平井】ついに、最終章です。最後は少し実践的に数字にだまされない方法、あるいは、数字を見たときの心構えについて語っていこうと思います。なにも難しいことはなく、中1数学がわかればOK! まずは練習問題として、「在日米軍の70パーセント以上が沖縄にある。沖縄が犠牲になっている」という論の嘘についてです。 . . . 本文を読む
トランプ氏はただならぬ深刻さを世界中の人に突きつけ、非常事態であることを示したかったのだ。北朝鮮との会談に世界中の耳目が集まっているのを勿怪(もっけ)の幸いに、アメリカは不当に損をしている、と言い立てたかった。自国の利益が世界秩序を左右するというこれまで言わずもがなの自明の前提を、これほど露骨な論理で、けれんみもなく胸を張って、危機の正体として露出してみせた政治家が過去にいただろうか。政治は自己主張に始まり、「排除」の論理は必然だと私は前に言ったが、トランプ氏は世界全体を排除しようとしてさえいる。ロシアと中国だけではない。西側先進国をも同盟国をも排除している。 . . . 本文を読む