寅彦はぼそぼそと話すので教壇での講義はつまらなかったらしい。が、研究室では座談の名手で、めっぽう話が面白かった。弟子たちの能力を引き出すのもうまく、様々なテーマをあてがっては、自由に研究させた。 . . . 本文を読む
三番目の妻、紳は活発な女性で、東海道線の丹那トンネル開通時の一番列車や、民間航空機の一番機にも乗った。ちゃめっ気もあり、応接間で客の背後からアカンベをして寅彦を笑わそうとした、とも直彦さんは言う。一緒に芝居に出かけたりしたことが影響して、映画評を書くようにもなった。 . . . 本文を読む
大正8年(1919年)、彼は胃潰瘍(かいよう)で吐血し入院した。何にでも「不思議の目」を向ける彼の不思議な点は、吐血した41歳から死を迎えるまでの16年間に、学術論文や随筆、俳句、映画評など多方面に深い知の足跡をたくさん残したことだ。 . . . 本文を読む
クマが人里に出てくるのは、山林が荒廃して餌が不足しているから、と研究者は指摘するけれど、そんなことはない。高度成長期、伐採されて丸裸になった山は、その後、植林され、クマがすみやすい環境が生まれて繁殖した。頭数が増えたために人里に出てくる機会も増えたのだ。 . . . 本文を読む
子どもが喜々として家の手伝いをしている。母親がある時から、手伝いの報酬をやるようになる。お駄賃が悪いわけではないけれど、やり方によっては、母親が渡す報酬によって子どもが支配され、お金だけを目当てにするようになるので要注意。 . . . 本文を読む
戦後まもなく、占領軍は「WGIP」(War Guilt Information Program)に基づき、日本の歴史や文化、伝統を否定し、先の戦争でいかに日本人が悪かったかを喧伝(けんでん)し、日本は恥ずべき国という意識を植え付けた。この洗脳が、なぜか今も生き続け、日本人は誇りを失っている。だから「日米地位協定」などという屈辱的協定すら破棄できない。世界中から「米国の属国」とみられていても恥じない。菅義偉首相や大臣たちは揉(も)み手(て)して外国にワクチンを恵んでもらっているが、彼らはもちろん国民もこれを国家的屈辱と思わない。 . . . 本文を読む
当時のアメリカは、1980年代にレーガン大統領の経済政策、レーガノミックスが施行され減税と軍拡が行われた結果、財政赤字(歳入より歳出が大きいこと)と経常赤字(海外との貿易や投資活動による収支が赤字)という双子の赤字に苦しんでいました。一方の日本は、世界経済の中で一人勝ちをしていました。ベルリンの壁が壊された89年には、早くもCIA長官ウィリアム・ウェブスターが、「今後、日本を含む経済ライバル国家が情報活動の対象となろう」と言明しました。 . . . 本文を読む
一般に多くの困難を解決しようとする場合、一つ一つ着実に片づけて行こうと誰でもまず考えますが、大ていの場合、労力がかかるばかりで成功しません。いかなる個人や組織であろうと、さらにはいかなる国、世界であろうと、多くの困難が噴出しているというのは、それら全てを貫く何か一つの基軸が時代や状況にそぐわなくなっているということを意味します。従ってその基軸を変えることで諸困難を一気に解決する、というのが最も効果的なばかりか容易でもあるのです。そして最も美しいのです。 . . . 本文を読む
熊本が大地震でやられた。蘇峰の生まれた益城町は震度7で壊滅、横井小楠、徳富兄弟、石光真清を育てた熊本市は震度6強で甚大な被害を受け、北里柴三郎の小国町も震度5強だった。私の尊敬する、日本の宝物のような人々が終生思い焦(こ)がれた美しい故郷が、一日でも早く元に戻ればと祈るばかりだ。 . . . 本文を読む
豆腐やいもを通さなければ見えないものもあり、一人の貧困者が、いささか並はずれた生の欲求のゆえに、いものうたをうたったと思っていただいてもいい。実際、私はいもの皮も人参の皮も棄てずに野菜のストックをつくるのだが、一個のいものなかに料理のすべてがあるというのが、行きついた感想である。 . . . 本文を読む
柿渋は千年以上の歴史を続けてきた日本人の宝である。見直され始めた今は、柿渋元年とも言える。改めて先人たちの柿渋利用法や製法をきちんと整理し、正しく知っておく必要がある。まだ十分にわかっていない柿渋の物理的、化学的特性を研究し、柿渋を総合的に解明することも望まれる。柿の実がなる秋の風景は、私たちの郷愁を誘う。しかし、柿渋の有用さがさらに認められれば、柿を風景としてみるだけでなく、資源として懸命に柿林を育てる時代がくるかもしれない。 . . . 本文を読む
“本当の自分自身”のことを、ある人は神様と呼び、あるいは仏様、観音様、阿弥陀様と、それぞれに呼んでいるのです。実は、今から説明する「空」というのも、“本当の自分自身”のひとつの呼び方なのではないか、というのが、私が提唱する解釈です。
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日経新聞「やさしい経済学」で日本の企業家を特集しています。一人8回のシリーズで、作家や大学教授が紹介文を担当します。今回の企業家は鮎川義介。紹介者は東京大学教授の岡崎哲二さん。以下に、8回シリーズのダイジェストを記します。 . . . 本文を読む