湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

書店員の残念なご案内

2015-06-25 00:38:02 | 
逗子湾内でシラス漁


駅前の書店で、Mが尋ねました。「現代詩手帖はありますか?」
店員さん、すかさず文具売場の手帳コーナーを案内しましたとさ。
このエピソードを聞いて、次の詩を思い出しました。

詩集と刺繍  茨木のり子

詩集のコーナーはどこですか
勇を鼓して尋ねたらば
東京堂の店員はさっさと案内してくれたのである
刺繍の本のぎっしりつまった一角へ

そこではたと気づいたことは
詩集と刺繍
音だけならばまったくおなじ
ゆえに彼は間違っていない

けれど
女が尋ねたししゅうならば
刺繍とのみ思い込んだのは
正しいか しくないか
礼を言って
見たくもない図案集など
ぱらぱらめくる羽目になり
既に刺繍を探す意志は砕けた

二つのししゅうの共通点は
共にこれ
天下に隠れもなき無用の長物
さりとて絶滅も不可能のしろもの
たとえ禁止令が出たとしても
下着に刺繍するひとは絶えないだろう
言葉で何かを刺しかがらんとする者を根だやしにもできないさ
せめてもとニカッと笑って店を出る


だいたい、ちゃんと詩集の棚に辿りつけたとしても少なくて偏った品揃えだしさ~

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シニカル海水浴 | トップ | ウォーターパークでオノマトペ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事