湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

成熟の詩パート6

2016-06-27 00:00:46 | オリジナル
共通テーマ「成熟」でTが書いた詩を投稿します。

親子

「ランゲルハンス島ってどこにあるの?」
りん りん 倫子が聞く
「からだの中よ」
瑠璃色のイヤリングを付けながら答える私
「からだの中に島があるの?」
倫子は首を傾げる
赤いルージュを塗りながら からかってみる
「膵臓という内臓の中にある大きな島よ」
倫子は口をとがらせて
分からない という顔をする
凛々しいまなざしは冷凍保存しておきたい
垣根に絡まるスイカズラの香りが漂っていた昼下がり

何年が過ぎただろうか
梅雨に入りかけた夕暮れ
珍しく霧が出た
倫子はあやふやになった道を歩き
街のささやきを聞く
手さぐりで 倫子の成熟がはじまる
くちびるも 鎖骨も
乳房も 指も はじめてそれを自覚する
最後に倫子を自覚する
「身長縮んだの?」
りん りん 倫子がからかう
髪も染めなくなった私を
上から見つめる優しいまなざし

コメント
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