湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

成熟の詩パート7

2016-06-28 12:04:33 | オリジナル
共通テーマ「成熟」でAが書いた詩を投稿します。

スイッチ

渦を巻いて流れてくる
饒舌な唄に誑し込まれ
これから何にでもなれるのに
詐術にかかって成長を止め
ごくありふれた怪物になる

尖った双眸の前に
柔らかな裸が差し出される
短く嘆きの声をあげ
生から降りる仔山羊たち

生贄の骨を乱暴に棄てると
肩をいからせ
胡散臭い正義で互いを脅す

不毛にせめぎ合った末に
手に馴染みすぎて霞んだ刃を
自分自身にも向け始め
よくある見えない怪我や病で
やがて全員が破れ去る

胸にスイッチがあるはずだ
開閉のころあいを正しく計れば
渦に巻かれて亡ばずともすむものを
だれもがタイミングを外す

寂しいと死んでしまうというのは嘘
ありふれた黒色の群衆から抜け出し
右の眼はやさしく
左の眼はかなしく
安らかに腐るまで
怪我や病や老いを見つめ
熟していって人になる

コメント
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