処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

JR上野駅公園口

2021-04-05 16:11:16 | 

著者 柳 美里

出版 河出文庫

初版 2021年2月 181頁

文庫181頁という軽小な形態とは裏腹に、随分と中身の重厚な本である。

フィクションを読んでいるのを忘れるほどのノンフィクション的構成と展開。東北農村からの出稼ぎ生活からホームレス生活に変わりゆく様相を現代天皇家の家史を所々に絡めて秀逸。しかしそれが声高には語られているわけではない。

この点を中心に原武史が巻末に「天皇制の〈磁力〉をあぶりだす」のタイトルで解説を載せている。蓋しすべて納得。正鵠を射る。この解説から読むことを薦めたい。

今思うのは、アメリカという国は大したものということ。帯にあるように全米図書賞を授賞した。受賞無かりせば、どれほどの人が読んだであろうか。私もその一人。結果、良書に出会えて得をした思い。大いに満足している。