処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

天国と地獄

2020-04-26 22:34:46 | 映画

     

”コロナ鬱”による長いリモート・ワーク。友達と気晴らしの長電話でお互いの気分転換と健康確認。なんと黒澤明全作品30巻のDVDを楽しんでいるという。ならば、と借りたのがこれ。

これまで探しまくったのだが、黒澤作品は、バラでは市場に出ていない。最も観たかったのが『天国と地獄』。時代物はTVで見てきたが、残念ながらこの現代物には出会えていなかった。コロナ禍のお陰で実現できたという次第。

  

実業家・三船敏郎と脅迫犯・山崎努の生活の落差、パートカラーの煙突の煙、犯人を囲むシーンの音楽がプレスリーの『イッツ・ナウ・オア・ネバ―』、どれも鮮烈な衝撃を受けた50余年前。再び勿体ないほどに堪能させて貰った。

  

冒頭の三船の家でのシーン、会社重役の面々の俳優陣が凄い。もうここから、尋常の作品ではない思いが押し寄せてくる。警察の捜査会議の刑事役も芸達者な面々。一癖も二癖もある男優たち。記者発表に登場する記者にも稀代のバイ・プレイヤーが顔を揃えている。ただ圧倒される。

  

有名な”こだま”車内のシーン。その車両は、ずーっと新幹線だと思っていたが、在来線の旧”こだま”だったとは。原作の『キングの身代金』ではこのシーンは乗用車。日米の違い。サスペンス的には、ここは黒澤の手腕が物を言っている。

  

舞台は、横浜の浅間町と黄金町、鎌倉、小田原。神奈川での展開とは知らなかった。飲食店や風俗店・雑踏・ネオン街の背景は黄金町であろうことはわかる。が事実の地形ではそこから浅間台は望めない。そこはそれ映画の世界。でも黒澤の手にかかると、これしかないほどに嵌っている。

  

あの世界の黒澤作品に、それも彼の初の現代劇に悪のヒーローとしてデビューした山崎努。なんと幸運な役者であることか。今に至る彼を見れば、その力量は言わずと知れたもの。黒澤の慧眼に恐れ入る。

  

戸倉警部役の仲代達也によれば、”こだま”車内の撮影は、国鉄の定期ダイヤに割り込んでのもので、NGを出せば2千万円が消えるという代物だったそうだ。豪華かつ重厚そして贅沢な映画であることか。

 

 

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