雑然とした幹線道路から背丈の高い垣に包まれた参道が延び、
入り口の「一の門」に通じている。
異次元の世界に吸い込まれるのが実感できる。
奈良・大和郡山の臨済宗大徳寺派の慈光院、
茶人として知られる片桐石州が開いた。
木の根が飛び出た鍵型の石畳が続き茅葺の楼門に到る。
植え込みを抜けると参拝者用の玄関だが、
客人を通す書院への道もある。
大刈り込みの庭に面した重文の書院に通され、
ここでお抹茶を頂きながら、若住職から庭の説明を聞く。
時空を超える空間・奈良にあって、寺全体が
おもてなしの象徴ともされる“茶席の風情”を醸しだしている。
当時の姿をそのまま今に伝えているのは、全国的に見ても稀有だという。
住職もこの点を強調する。
皐月一種と数十種類の木々を寄せ植えにした刈り込みは、
”借景とした周囲の峰との調和を考慮したものだ”という。
この日は霧雨にうたれた刈り込みの緑が美しく
ようやく咲き始めた紅の皐月が彩りを添えていた。
住職はもてなしのキーワードとして何度も
「雪月花」という言葉を繰り返されたが、
この場では日本ならではの季節の風情や時間の変化を愉しめる。
書院から”二畳台目”の「茶室」が続いており、
ここは「現存の茶室の中で年代、作者、形状等が
証明できるものとして最古の席」だという。
さらに「閑茶室」と呼ばれる三畳の茶室が続く。
ここはにじり口ではなく、
廊下の貴人口から入る珍しい格好になっている。
茶室を囲む廊下からみる苔の緑が目映かった。
この日は雨でぬかるんでいたため庭に下りることはできなかったが、
植え込みの間を縫う散策は最高に楽しめる。
何気なくおかれている手水鉢もおしゃれだ。
今月末頃には植え込みの皐月が満開になり
お庭は奇麗な緑から薄紅色に趣を変えていくだろう。
ぜひ今一度訪れたい古刹である。
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