悪妻愚母&鬼嫁

専業主婦のバタバタ日常。ドラマ、本、P、菓子なども気分に任せて語っています。My Homepage悪妻愚母もよろしく。

輪違屋糸里(上下)浅田次郎

2007-05-30 10:40:21 | 本 コミック
 新撰組も浅田次郎が書くとこうなるのか。糸里の生まれた小浜の海辺の描写から、島原の太夫の華やかな道中の描写。一転、生々しい侍たちの苦悩と殺し合いが描かれていく。

 新撰組内部の対立と陰謀は、いろいろな隊士の視点から描かれてきている。侍たちは江戸から京へ、壬生の浪士から新撰組へと世の中の大きなうねりの中に身を任せている。この新撰組内の大事件、芹沢鴨の暗殺事件を女性の視点(自宅を屯所として提供した壬生の八木、前川家のおまさとお勝、土方の愛人?糸里、芹沢鴨の愛人お梅、平山五郎の愛人吉栄)から描いていく。事件を目の当たりにしただけでなく、意に沿おうが沿うまいが、積極的に関わりを持ってしまうのだ。

 すべてが終わり、天神から太夫になった糸里の初道中、穏やかな小浜にいる吉栄の描写で終わる。善人も悪人も、必死に生きた末の結果。光の当て方が違えば善人も悪人、悪人も善人に。悪人にならざるを得なかったと言うことか。

 どうしようもない立場に置かれた女性たちなのだが、それを受け止めて真っ当していく姿はいつも浅田氏が描く、人間の愚直さ。作者の「壬生義士伝」の愚直さにも通じるものを、天下の大悪役、芹沢鴨にさえ感じてしまった。

 巻末、末國善巳氏の解説が興味深かった。