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como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

平清盛 第27話「宿命の対決」

2012-07-08 23:24:28 | 過去作倉庫11~14
 前回のラストで、「深いこと言わず、合戦シーンを45分展開してくれればそれ以上望みません」などと申し上げましたが、今週は、うれしいことに7割がた希望通りになり、その点は満足な回でした。
 まあ、とにかくいろいろ余計な味を付けず、後年の平安末期~鎌倉時代の大河ドラマ(そんなん二度とあるのか?)の合戦シーンのモブの撮りだめくらいのつもりで、様式美に徹してやってくれればよいのです。余計なドラマ上の味付けは無ければないほど宜しい。まあ今週でいえば、合戦以外で面白かったのは、あれこれ日和って右往左往する白塗り麿たちの、キモ面白すぎる顔芸とか、そんなもん。
 なにをいいたいかというと、今週が大河ドラマの合戦モブの撮りだめじゃなく、ドラマとして主張している部分は、ことごとく…とまではいいませんが、まあ8割がたゴミだったということですね。
 ハッキリいえば、最後のキヨモリ(松山ケンイチ)とヨシトモ(玉木宏)の一騎打ちシーン。あれは思いっきりカットして、シュレッダーにかけてゴミに出してしまって差し支えのないシロモノでした。
 そのことについてはあとでじっくり言わせていただくとして、今週思ったのは、「ああ、この回、三池崇史監督にゲスト演出していただきたかったなあ」という、突拍子もないことでした。
 というのは、「十三人の刺客」ですごく良かった窪田正孝君と、やっぱり「十三人…」に出ていた三池組の波岡一喜さんと、先だっての「愛と誠」ばりの大ボケ演技を披露してくれた武井咲ちゃん、そのあたりからの連想かもしれません。三池スタイルで45分ばっちり、くどいくらいのバイオレンスをやり、最後のしょうもない一騎打ちシーンもそれなりに料理してくれてたら、伝説の神回になったかもしれないのよね。そういう材料には不足のない歴史イベントなんですから。
 来年あたりは大河ドラマ起死回生の企画として、アメリカの連続ドラマみたいに、たまに有名映画監督にゲスト演出させるとか、やったらどうかと思いますよ。いいじゃない、予算あるんだからそれくらい。
 ってなわけで、ボチボチいってみましょー、

第26話「宿命の対決」

 前回、信西の死で報復を誓ったキヨモリは、六波羅のお屋敷に帰宅すると、そのまま臨戦態勢に…入るのではなくて、旅装をとして、がつがつメシ食って「やっぱ家メシはいいな~~!!」とかいって周りのものを驚愕させてしまいます。さらに、「帝と上皇様を幽閉し奉った今、この国の実質最高権力者は中納言信頼様。ゆめゆめ逆らうようなことをしてはならぬ」とか言って。
 で、内裏では、ヨシトモがバリバリの臨戦態勢で、セガレたちと打ちそろって開戦をいまかいまかと待ってんですけど、そんなヨシトモ&サンズをみて、眉をひそめる伝兵衛(有薗芳記)ともうひとりの麿(野間口徹)。っというのは、「東国武士とはなんとがさつで乱暴なおぞましき者どもか。こんな者たちに政権を掌握されたらエライことに…」「われらはとんでもない間違いをしでかしたのではおじゃるまいか…」と。
 まあ、東国武士をはじめてみる麿さんたちが生理的に嫌悪感を感じるとことか、それならまだ西国が基盤の平氏のほうが理解しやすいし、違和感がないという、そのあたりの好悪が基盤になって源氏が孤立し、平家優勢になっていくあたりは、なかなか面白いんですよね。せっかく面白いので、もーちょっと、平氏の公家化とか、政治活動なんかもこまかく描いといて欲しかったですよね。

 で、権力の座にのぼったデブ頼(塚地武雄)は、緩み切ってて話になりません。そこへキヨモリの名代として爺やの家貞(中村梅雀)がやってきて、平氏一門の名簿を差し出すわけです。めいぼじゃないのよ。みょうぷ。ようは、連名でデブ頼に忠誠を誓いますという連判状ですね。
 素直なデブ頼は、「頼もしいのう~」とか言って簡単に警戒心を解いてしまうんだけど、ヨシトモは、やっぱ「そんなはずがあるわけないっっっ!!」とか言って、ひとりでキリキリしています。オレの永遠のライバルが、そんな簡単に日和るはずがないっっ!!っつうわけだ。
 ですけど、ひとりで顔に血管浮かせて少年マンガやっているヨシトモをよそに、セガレたちも緩んでしまい、アクビとかするようになってしまいます。おめーら緊張感が足らん!!!といきり立つヨシトモに、「とうちゃん、なにも無いのにずっと緊張してろとか無理だって」と反論するセガレたち。
 キヨモリんちでも警戒ゼロで、こっちは毎日のめや歌えやの宴会を繰り広げています。敵を欺く擬態については、どっかでカムアウトしたらしく、郎党も息子たちも安心して、ってかむしろ本気で楽しそうに宴会に興じてますが、ひとりシリアスな憂い顔の人が…。重盛の嫁の経子(高橋愛)ですね。
 兄の成親(吉沢悠)が謀叛をしでかし、どうしてよいやら…と身の置き所もなく悩んでいるわけです。かわいそうですね。当の成親にいちゃんは、オレ平家の御曹司の義兄だし~、保険掛けてあるし~、みたいな感じで、クーデター陣営にいても安泰な顔してんのに。
 そんな新妻を、だいじょぶだよ…と優しくいたわる重盛。ほらね、と指さす先には、伝兵衛とアナザー麿が!(うげっ)。なんか正装して、頭を低くして六波羅屋敷をたずねてきてました。

 伝兵衛たちは、「私たちは中納言に騙され、巻き込まれただけです」と主張し、平氏の武力でこの混乱をおさめてくれるよう懇願します。最初、「はあ~、大納言様と検非違使別当様がうち揃ってそれがしのごとき者に頭をお下げとはこれいかに」とかいっていなしてたキヨモリは、突然態度を豹変させ、「おんどりゃワイをナメとんかコルァ!!」とかいって抜刀、麿さんたちをチビるほどに脅し上げます。ヤー様がお使いになる手ですねこれは
「死にたくなかったらワイらに協力してもらおやないかい」と首根っこ掴んで脅された伝兵衛とアナザー麿(藤原惟方ね)は、ここから一世一代の働きを見せます。
 御所にかえったふたりは、デブ頼を誑し込み、源氏の郎党たちに振る舞い酒を差し入れるように仕向けます。その酒に一服盛ったかどうしたか、飲んだとたんにコテーッと全員熟睡してしまう。その隙をついて、幽閉中の後白河上皇(松田翔太)と城西門院(愛原実花)を救出するんですね。そして二条帝も、女装させ、女房車に乗せて逃がします。育ちの悪い悪源太(波岡一喜)は帝の姿も、そのオーラもよくわかんないので、「いい女じゃねえか」とかいってやにさがって帝を逃がしてしまうんですね。こんなん父ちゃんに知れたら殺されたかもしれない。
 で、仮御所として六波羅邸に帝をお迎えしたキヨモリは、錦の御旗を掴んだら官軍ですぜ、帝の御座所は六波羅にありと都中に触れるのじゃ!!と命じて、速攻戦支度をします。ものの5分でフル武装した武者どもは、そのまま御所へ突撃!!
 突撃された御所では、振る舞い酒に脱法ハーブを仕込まれた源氏の武者たちが、いぎたなく眠りこけていて、事態を悟ったヨシトモはブチ切れ。テメエらバカか!!これでオレら朝敵になったじゃねえかよ!!!っつって、腹立ちまぎれに、近くにいたデブ頼に八つ当たりの暴力を振るいます。この期におよんで「わたくしを守れ、守るのじゃ」とか言ってるデブ頼。これは、亡き頼長様がラスト近くでさらした醜態に酷似しています。
 そんなデブ頼を、てめえも武装して戦えデブ!と一喝したヨシトモは(これもお父ちゃんが頼長に同じこといって一喝した裏返し)、ふふふ、嬉しいぜキヨモリ!それでこそキヨモリだぜ!!と熱血番長マンガのモードに切り替えて、臨戦態勢に入ります。
 そこへ現れたのが身重の常盤。もうお前とは妻でも夫でもない!と凛々しく離縁を宣言するヨシトモなのでしたが、常盤ちゃんに、「かならず勝って戻ってこの子をだいてくださいませね」とか言われて縋られると、硬派モードもメロメロっと溶解してしまうのですね。だらしねえなヨシトモ。
 というよりこの武井咲ちゃんの、空気ぜんぜん読んでない風情の天然演技が絶品で、やはり先だっての「愛と誠」のように、ここも三池監督に仕切ってほしかった。「わたしは殿が正しく立ち直るためならなんでもするわ…」とか言って。笑。

 キヨモリ軍の突撃隊長は、嫡男の重盛です。ひよわな感じの文系キャラですが、重盛もけっこうやりますね。ちゃんと、平安時代的に悠長な合戦シーンの雰囲気を仕切ってくれちゃいます。
「年号は平治なり、花の都は平安城、われらは平氏なり。平の字が三つそろって、勝利は疑いなし!!」と古典文学的なキメ台詞を吐いて御所に突入するのですが、そこに待っていたのが「わが名は義平、鎌倉悪源太義平、よっつめの平だ!!」と落語みたいなツッコミを返し、重盛を迎え撃ちます。
…このあたりから、前述のように「三池監督がゲスト演出してくれてたら!!」とすごく思っちゃったんですけど、でも、あんまり脚本家が自己主張しない合戦シーンというのは、前の保元の乱もそうだったけどそれだけで見ごたえありますよね。鎧武者がダーッと並んでいるだけでいいし、しかも、けっこうマジに乱戦の殺し合いとかやっていて、こういうのは大河ドラマでは数年ご無沙汰だったので、やっぱり見てて血が騒ぎますわ。
 で、窪田正孝くんは「十三人の刺客」にも出てたので、殺陣も上手なの。悪源太の波岡さんも出ていたし。これは見ごたえあって良かったの。でもまあ、あとのほうで悪源太が突っ立ってて重盛が至近距離で弓発射してて、それをまわりのギャラリーがみてる、みたいなのはどうかと思いましたケド。
 で、乱戦がある程度になったところで、平氏はにわかに、撤退をはじめるわけです。おおっ、と突然の優勢に湧く源氏勢。それで落ち着いて体制を立て直し、逃げるとかすりゃいいものを、調子こいて「追えっ追うのじゃ、どこまでも追って全滅させよ!」とか命じてしまうヨシトモ。
 ところがこれは罠でした、追っていった先は、なななんと、あのキヨモリ・ヨシトモ青春の思い出をきざんだ賀茂川の河原ではアーリマセンカ。そこには平氏三千旗が待ち構えており、一方的な殺戮ショーに…。頼みのつなの頼政おじさん(宇梶剛士)も、もうこんなバカにつきあいきれんわ…と、サクサク見切りをつけて敵前で去ってしまいます。
 そして…

 そして…

 もうここから先は、見なかったことにしたいのはやまやまなのですが…。

 見ていないかたには信じられないでしょうが、ここでですね。平氏三千騎と、源氏もそれなりの、大勢力が跡形もなく消え失せるんです。キヨモリとヨシトモのふたりが、異次元空間にふたりでワープするんです。
 そこには、地平線まで人っ子一人いないような、恐山の賽の河原みたいな光景が広がっていましてね、そこでふたりは剣を抜き、一騎打ち…最初は馬上で、そのあと地上で、組んずほぐれつの戦いを繰り広げるんですよ。そこが正味…そう、7、8分くらいだったかねえ。でも、あまりのファンタジーさに時間の感覚を失うくらい長く感じました。

 ってか、なんでここで双方の大将ふたりが、酔っぱらいのケンカみたいなことをしなくてはならんの??

 そうなのよ。完全に酔っぱらいのケンカでした。ふたりとも鎧着てるから重さでだんだん足がもつれてきて、なんだかもうぐっちゃぐちゃになってきて、セリフもレロレロになっちゃって。んで最後、キヨモリがヨシトモをフォールして10カウントになるんだけど、ゴングもならないし、ギャラリーいないし、ってかそもそも君ら誰なんだ状態で、
「お前は負けたのだ、負けたら後が無い戦いに負けたのだ!!」
みたいなことをキヨモリが言うんだけど、それもレロレロになっちゃって。なんだかわけわっかんない。

 こういうぐちゃぐちゃな見苦しい乱闘シーンを、リアルな迫力とは断じて言いたくない。

 ってかさー、大河ドラマで主役級の役をする俳優なら、鎧着てちょっと動いたくらいで息があがってセリフにならないようじゃダメじゃんよ。もっと根本から体作って、ボイストレーニングを積んでから来いよ。あーしょもねーなーまったくよー、という、単純に技術的な問題も指摘したいのですが、それ以前の話として、

 この対決シーンは何から何までありえないだろう。

 もういろいろ言ってもしょうがないけど。仮に三池監督でも、この場面のファンキーさは、キヨモリとヨシトモがふたりで対峙して「オオカミ少年ケン」を歌い踊るとかしないと収めようがなかった気がする。
 さらに、
「キヨモリ…また会おう」
 とか言って、おいおいおい…去っていくのかいヨシトモ。源氏重代・友切太刀を賽の河原に突き刺したまま、馬に乗って去っていくのかい。なんでここでとつぜん西部劇のシーンになるんだい。
ヨシトモ・カムバーーーーック!!
…とは断じて言いたくないけど、ハッ!やはりここの場面こそ、三池イズムで仕上げてもらいたかったと思います。そう、「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」のラストに、北島三郎のうたが被ったシーンのように……。

…っつか、何のためのシーンだったんスかこれは。

 いやあ…。大河ドラマでこーゆーのがやりたいがために、歴史イベントを使うのでしたら、もうほんとに勘弁してほしい脚本センスですね。
 来週のサブタイは「友の子・友の妻」だっけか、もうこのドラマで「友」って単語も聞きたくない気もしますけど…。でも、リトル頼朝の助命のシーンとかなかなかよさげだったので、一抹の期待は捨てずに次回も見ます。

また来週っ!


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