goo blog サービス終了のお知らせ 

como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「太平記」を見る。その1

2012-07-14 00:32:11 | 往年の名作を見る夕べ
 久しぶりに、往年の名作を見る夕べを催したいと思います。
 去年、「黄金の日日」をやり始めたのですが、ちょっと忙しくなって中断してしまい、再開しようとおもったら、なんと、行きつけのツタヤの大河コーナーから姿を消してしまいました。ショックはたとえようもありません。
 この経験を踏まえ、往年の名作大河も、いつでも借りて見られるものと楽観せずに、見たい気持ちが盛り上がったとき、時間的余裕のあるとき、怠けず挑戦しておくもんだなーと強く思ったのです。

 というわけで、今回は、これもいつ大河コーナーから消えるかわからない、と強い危険信号を発して棚から誘っていた、これです。

「太平記」(1991年/平成3年)

原作 吉川英治「私本太平記」
脚本 池端俊策 他
音楽 三枝成彰
ナレーション 山根基世アナウンサー


 うん、これは名作の誉れ高いんだけど、わたしは当時…実はあんまり…ってか正直にいって、ほとんど見てなかったんですよね。
 当時は若く、仕事に遊びに色恋に忙しく、ってか自分にもそんな時代があったのな(笑)。照れるわ。いえね、バブル期のヤングってのは、なんだかやたら忙しかったんですよ。今のように、若い人が自分の趣味に没頭したり、家でまったりしているのが認められる空気じゃなかったんですよ。
 まーそんな言い訳や昔話は置いといて。いってみましょう、

第一話 「父と子」

 1時間15分拡大SPです。初回なので野外ロケシーンが多く、スケールの大きい印象なのは大河ドラマ一般のとおり。
 あと、初回のタイトルが「父と子」っつうのも(笑)。いまとなっては懐かしいような大河の王道的なつくりで、タイトルバックの音楽も超カッコいいですよね。勇壮なオーケストラに篳篥・笙のような和楽器が絡み、コーラスで盛り上げるところなど、ゴージャスであり、視聴意慾を昂進させるものがあります。

 第一回の冒頭は、主人公の生まれるはるか前、有力御家人・足立泰盛が、宴会の席を幕府軍の夜討ちにおそわれ、おのれ北条…と呪いながら自害して果てるという場面からはじまります。
 正直いって、初回の冒頭のツカミにしては、かなり意味不明なのですが、夜討ちのシーンはカッコ良く、火矢を食らった侍が火だるまになる描写とか迫力満点です。
 で、物語はこの20年後。足利の庄に館を構える足利貞氏(緒形拳)のやしきに、鎌倉幕府に追われた塩谷宗春という武将の一族が庇護を求めて駆け込んでくる。門前には幕府軍が包囲し、謀叛人と同心したと思われたくなければ疾く引き渡し候え!と恫喝するわけです。
 そこで、貞氏の先代の家時が、やはり鎌倉に断罪されて自害に追い込まれたらしい、それが冒頭の安達泰盛の一件と関連している、みたいなことが仄めかされます。幼いときにそれを見てしまったのが貞氏のトラウマで、そのトラウマがプレイバックて頭に血が上り、「なにゆえそこまで幕府に諂わなくてはならんのか?!」とブチ切れ寸前になった貞氏は、こうなったら幕府と戦じゃ!!と、一線を越えそうになります。なるんですけど、寸止めで、「塩谷の方々を門の外までお送り申すのじゃ…」と。ようは日和ってしまうのですね。
 こんなふうに、ストーリーは主人公の父ちゃんのカッコいい振る舞いじゃなく、重大な挫折・屈辱からはじるまるわけですね。

 で、まもなく生まれた嫡男の足利又太郎。のちの足利尊氏は、生まれながらに父親が北条家に低姿勢なのを、ものすごく不満におもってます。よくありがちなガキパートの反抗期ですね。
 ガキパートの間に隣の新田庄の新田家のせがれ・新田義貞との運命の出会いもあります。領地に入った・入らないを巡って河原でケンカし、つかまつって「新田の家人にしてくれる」と脅された又太郎を、さっそうと馬で川を踏み越えて登場した若い武士が救い、主従の誓いをかわします。これが一色右馬之介(大地康雄)ね。
 大地康雄は、実は、あの塩谷宗春一族の生き残りで、北条の圧力に逆らって、貞氏が一命を助けた子供なんですね。ですので、初登場の初期設定から、足利家のために命かけてます。命捨ててます。忠臣オーラが暑苦しいほどムラムラ出ています

 んで、高氏の反抗期はさらっとすませて、すぐに元服し、足利高氏と名乗りを上げるのですけど、この元服の場面が、いろんな意味で見ごたえがあります。
 そう、北条高時(片岡鶴太郎)が登場するんですよ。高時は、初登場からイッちゃってる目をし、烏帽子をかぶせる又太郎の頭をガシガシ押さえつけて、「あたまを上げよ、上げてみよ。上がらぬか」とか言ってからかい、烏帽子をいいかげんにズボッとかぶせると、「存外非力じゃのう~~」と嘲笑します。
 このドラマの鶴太郎さんのバカ殿演技は、伝説の神演技としてつとに有名なのですが、これをみて、わたし、「眼技」ということばを思い出しました。眼力じゃないです。眼技。ようは、眼球を寄せたり散らしたり、ロンパリみたいにもできる技術。イッちゃってる人の壊れた迫力を出すのに、これ以上のものはないです。当時はなにげに見てたけど、今思うと、なんで鶴太郎さんこんな技術を隠し持っていたのか?。

 こうして又太郎は、北条高時から一時もらって「足利高氏」となりますが、足利家は、というか同時代の有力御家人は北条家に頭が上がらず、屈辱的な日々を過ごしています。
お父さんの貞氏も、北条家の一門から正室を迎えているのですけど、これがどうにもならないパッパラ女で、実の兄さんに「あんな馬鹿おんなで申し訳ない」と謝られるほど。
 でも、その正室とは仮面夫婦で、事実上の妻は、京都から来た上品な側室の清子さん(藤村志保)。高氏と弟・直義の生母もこの方です。緒形さんと藤村さんの夫婦の空気が、なんともいえず和やかで良いんだよね。夫婦ふたりで、清子さんの実家からの到来物のお菓子を食べてるとことか。ほんと和むの。

 やがて時が流れて、高氏は真田広之に、弟の直義は高嶋政伸に替わります。
 当時の有力御家人の子弟の常として、鎌倉の執権の雑仕つとめに出ている高氏は、わりと優等生で、そつのない好青年。御家人のジュニアたちがいやがる雑用とか、蹴鞠などお遊びのお付き合いも楽しんでしまえる明るい性格ですが、得宗が好む「犬合わせ」は、退屈してしまうようです。
 高時は病的な闘犬好きで、鎌倉じゅうを犬だらけにして連日闘犬に明け暮れており、小姓たちにも同席させるんですけど、あるとき、闘犬ショーの席の桟敷から、小姓のひとりがつまんなそうに欠伸しているのを遠目に見てしまいます。
「あれは誰ぞ……」
と問うた高時は、足利貞氏が嫡男である、と聞いてサディスティックに目が光ります。そして、高氏に「犬を引き回させよ」と命じるのですけど、これがただの犬の散歩ではないんですね。この犬がとんでもなく根性の悪いヤクザ犬なわけです。
…っていうか、実は、この「太平記」初回で一番すげーーーっ!!と思ってしまったのは此処なんですよ。主役の真田広之が、スタントなしで、土佐犬のリードを取って、てこずり、やがて犬を怒らせてとびかかられ、追い回され、のしかかられて犬と格闘する…という、この一連を、マジで体を張ってやるんですよ!
 さすが真田広之だわ。JAC出身のアクション系でなきゃできないことだわ、とか感心している場合じゃなく、そう、ホントにしびれてしまったのは、ああ…こういう、主演俳優がマジで体を張っている姿というのは大河ドラマでは久しく見ないわあ……ということなんですよね。
 ほんとにほんとに思うんだけど、主役を甘やかしちゃいかんのよね、大河ドラマっていうのは。もっとこのように、限界に挑戦してもらわないと。主役に体張ってもらわないと

…っとまあ、いちいち感動していては話は進まないので、元にもどしますと、高氏はこれで満座の笑いものとなり、この上ない屈辱をかみしめて家に帰ります。帰ると弟の直義が血相変えて待っていて、「あぁにぅうぇっっっ!!!」…っと。いや、なんかさ、このころの高嶋政伸のしゃべり方ってほんとケッタイ(いまでもあんまり変わってないけど見るほうが慣れた)で、「姉さん事件です!!」で出てきたときの衝撃的な違和感までリアルに思い出しましたよ。懐かしいわ。
 もとい。直義がなにをそんなに怒ってるかっていうと、犬合わせの一件とは関係なくて、どうも、両親の間で高氏の縁談が進んでるらしいと。しかもお相手は北条ご一門・赤橋家の姫であると。
 犬合わせの屈辱の直後なので、北条と聞いただけでキレた高氏は、ふざけんな、北条の女なんか呉れてもいらんわ!と親に抗議に及びます。が、ママンは優雅に「あっそう、高氏殿が嫌ならしいては申しますまい」といなし、「ところで、ちょっとお使いをしてきて。このご本を赤橋様のお屋敷に返しにいってきておくれ」と、なんの関係もない和歌の本を高氏におしつけます。
 なんだよおふくろ…とかブツクサいいながらママンのお使いに赤橋家をおとずれた高氏。すごい仏頂面で一礼して顔をあげたらば、ハッ…そこにいたのは、かぐや姫のように美しい沢口靖子!!
…まあ、こういうのは大河ドラマに限らず、古今東西のお約束ですけどね。ほほほ。

 第二話「芽生え」

 というわけで出会ってしまった高氏と登子。真田さんと沢口さんは「独眼竜政宗」でも松平忠輝と五郎八姫で夫婦役をしてますので、デウス様がお導きになったように(笑)息ピッタリ。っていうか、ふたたびの夫婦役で、よくこんなに初々しい空気を出せるもんですね。役者さんてすごい。
 登子姫と、「これは恋の歌なんですねっっ!!」とか言って和歌の本をダシに話が弾み、あまーい気持ちで満たされた高氏は、ふいに「高氏殿がいやなら、このお話はなかったことに…」みたいなことをママに言われのを思い出し、ま、まずい…と焦ります。でもその一方で、足利家が代々、登子姫のような北条一門の姫を嫁に迎えてうまく世渡りしてきたことなどにも思いをいたして、めちゃくちゃ複雑な気分になります。
 で、役所の雑仕に出てみれば、犬合わせの件で朋輩にバカにされる。あんなに笑いものにさせて、ふつうなら犬を斬り殺すくらいするわ、さすが足利殿は代々の世渡り上手よの、みたいにネチネチ嫌味を言われますが、でも、そういうこという朋輩も「かくいうわしも小国の守護の嫡子、御辺と同じ目に合えば同じことをする」と。おたがい美しゅうはないのう。つまらん世の中じゃ…と、同病相哀れむ愚痴モード。

 そんなことで、高氏が、なんだかもうクサクサしながら町を歩いてると、時宗念仏の行列がやってきて、内管領・長崎円喜(フランキー堺)の行列とぶつかるとこに出くわします。得体のしれぬ風狂者をお目にかけるな、といって管領のセキュリティが追い散らそうとするんですが、時宗の信者は異様な信仰パワーで、前進をやめないんですね。で、ブチ切れたセキュリティが抜刀し、無抵抗の信者を殺戮するという阿鼻叫喚になります。
 最初、かかわり合ったりまずいので見ないふりしてた高氏も、ムシャクシャしてたこともあって、飛び出して抜刀し、狼藉はやめろ!!っと言って戦います。かなりマジで体を張って闘います。そして、そこに加勢にあらわれたる、いやにカッコいい山伏ひとり。これが榎木孝明ね。
「内管領長崎円喜。執権北条高時をあやつる陰の執権…堂々たるものじゃ…」とつぶやく謎の山伏は、高氏のケガのてあてをしてくれて、「地に花を咲かせ、日を昇らせ給うものをご覧になりたくば、京へおいでなさいませ」と言い、京都での連絡先をメモして高氏に手渡し、去っていきます。
 で、この榎木孝明が何者かといいますと、次の場面、人目を避けるように入り込んだ場末の陋屋で、待ち合わせた人物に、
日野俊基です…」と。
 そして相手は誰かといえば
新田義貞でござる…」
 そう、新田義貞(萩原健一)。あのヤング義貞の成長した姿でした。ここではショーケンなんだけど、義貞はあとで根津甚八に代わるんだよねたしか。

 この高氏のケンカは、家に帰る前にバレてます。長崎円喜が早々と、「ちょう不愉快」という旨のことを、足利家に言ってきてたんですね。
 とにかく何も言わずにお父様にお謝りなさい、大激怒しているから、とママがオロオロしてますが、高氏としては、まちがったことはしてない!と思ってます。だからお父さんにもハッキリ事実を言おうとしますが…なぜか、「こんな鎌倉は大っ嫌いです!こんなとこにいたくありませんっっ!!」とかなんとか、優等生がとつぜん中二状態になってしまうんですね。
 そしたら父ちゃんは冷酷に、「左様か。なら出てけ」と。
 は?とキョトンとしてる高氏に、そんなに鎌倉がいやならこのうちを出てけ。迷惑だ。荷物をまとめて明日の朝出ていけ!!と厳命する父ちゃん。
 右馬之介とか、弟の直義とかのほうがうろたえて「とにかく父ちゃんに謝っちゃいなYO!」とかいうのを、ボーっと聞いている高氏は、実は、「そっか…出ていくのもいいかも……」と思ってます。「オレ、一度鎌倉をでてみたいんだよな」と。
 そんなことで、高氏はほんとに鎌倉の足利家をおん出ることになるんですが、本気の勘当ってわけではなくて、足利家の飛び地の伊勢へ飛ばすという形なんですね。とりあえずほとぼりを冷ます目的で。長崎円喜のてまえ、ご気分を害したバカ息子にはキツイ罰をあたえました、というとこも見せなくてはならない。お父ちゃんもつらいところです。
 
 ですけど、高氏本人はむしろ大喜びです。旅の途中でもうれしくてしょうがありません。その路上で、花夜叉(樋口可南子)の率いる旅芸人一座と出くわすんですが、そこには、足利家を深く恨む俊足の芸人・ましらの石(柳葉敏郎)がいました。
 なんで恨んでいるかというと、幼いころに村を襲って両親を殺害した不良武士が、足利家の二ツ引両の家紋の小物かなんかを現場に落としていったから、という。でもさ、だから足利は親の仇だというのも単純すぎるんじゃね? その野武士がどっかから盗んだのかもしれないじゃん。でも石は、直球で単純な恨みに燃えていて、二ツ引両は親の仇!で、神社の境内で大道芸をみていた高氏の、二ツ引両紋の刀を見ると、此処で会ったが百年目と喧嘩を売ります。
 石の芸は俊足で、客が射た矢を足で走って掴んでしまうというのが売りなんですけど、この売られた喧嘩で、高氏が放った矢に、石は追いつけなかったんですね。芸人人生初の屈辱で、石はさらに足利を深く恨むようになります。
 で、一座の中には藤夜叉という美少女がいて、これが宮沢りえね。当時人気絶頂。サンタフェの前だよ(笑)。かわいいんですけど、メイクが…(笑)。ひとりだけ懐かしのバブルメイク。んー、大河ドラマに当時の人気アイドルが出ると、こういうとこにありありと時代を映してしまうよな。
あと、どうでもいいけどこの大道芸一座の、「大男・ストロング金剛」「小男・Mr.オクレ」って、このコンビなにげにファンキー…。

そんなこんなで高氏一行は、伊勢をサラッとスルーして、京に入ります、というとこで、次回に続く。


1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
太平記に絶賛ハマり中 (谷口恵梨香)
2019-09-18 20:42:50
ひょんなことから真田広之にハマってしまい、太平記を見ることに。
後半は夜を徹しての一気見!
今、二巡目だったりするんですよね〜
この感動というか興奮を共有できる人はいないかと探してここに辿り着きました。
オンタイムでちょろっと見てた記憶がうっすらあるのですが(年齢はお察し)当時は真田広之にも関心がなかったし、時代劇は画面が暗くて……
と思って見始めたのですが、面白すぎて止まらなくなりました。話がどんどん展開していくのと、それぞれのエピソードが伏線として綺麗に絡んでいくので飽きません。
足利尊氏、カッコいいですねーー!!藤夜叉を馬に載せるシーンはクラクラしました。白馬の王子現る!じゃん!とか思って(笑)
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。