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como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

平清盛 第30話「平家納経」

2012-07-31 00:08:31 | 過去作倉庫11~14
 はい、今週は第二部のおわり、節目の第30話ということなんですけど、お待ちかね、平治の乱のあといったん姿を消した崇徳上皇(井浦新)が生霊になって戻ってくるという、見せ場中の見せ場です。
 それだというのに、オリンピックがはじまって変則放送。それも、競技のようす次第では何時まで押すか見当もつかないという、まことにフレキシブルな放送時間になってしまいました。もう、こんな状態では視聴率なんて期待するほうがおかしいよね。
 それでも今回は凄かった。なにが凄いって、崇徳上皇の呪いのパワー。一世一代の見せ場の回を、このようなアバウトな放送時間にされた怨念、それはもう、想像をはるかに超えていました。
 げにもその凄まじさたるや、内村は鉄棒から落ち、北島はプールに沈み、さらに「清盛」が一時間押しになってしまった男子柔道準決勝では、前代未聞の審判判定覆し!!
 どうかどうか、崇徳院の時空を超えた怨念から解脱し、体操に、水泳に、柔道に、栄光のひかりが差し込みますように!!と祈る気持ちでわたしも納経を…あ、いや、そんなわけにもいかないので、せめて今週は「清盛」を褒めちぎりたいと思います。そんなの滅多に見られなくってよ、皆さん。
 では、いろいろ言わずに行ってみたいと思います、

第30話「平家納経」

 前回めでたく華燭の典をあげた世紀のバカップル・後白河上皇(松田翔太)と滋子(成海璃子)。できちゃった婚なので展開は早く、今週早くもベイビー誕生です。
 で、六波羅のキヨモリ(松山ケンイチ)邸に、イケアで買うのとわけが違う、超高級ブランド家具が個人輸入で持ち込まれ、キヨモリは「おせえじゃねえか」とかウサギ丸(加藤浩次)に文句いってます。個人輸入は手間かかるんじゃ、文句あるなら博多を都の隣にもってこいやボケカス、と暴言を吐くウサギ丸に、「皇子様ご誕生のお祝いの品々、上皇様もさぞおよろこびになるでせう」とか、すげえ説明的なセリフを言わされる盛国(上川隆也)。
 盛国…。前回家貞が退場したので、今週から変わってトメ枠を飾ってるのに、こんな紙芝居の説明役みたいなしょうもないセリフしかないのかしら。こういうプチ解説おじさんという役に定着し、最終回までいっちゃうのかしら。すごい上川隆也の無駄遣いだわこれ…と、強い不満を感じたのですが、いやいやいやいや。今週は盛国にとっても美味しい展開があとで待っておりますの。

 さて、実妹の滋子が皇子を産んだということで、調子づいたヤンキー兄貴の時忠(森田剛)は、平家の中でも存在感の薄い教盛(鈴之助)と基盛(渡辺豪太)を仲間に引き込んで、この憲仁親王を皇太子にしちゃおう計画を立ち上げます。
 これって立派な政治陰謀なんですが、メンツがメンツなので、ツッパリが体育館の裏でとぐろ巻いてるふうにしか見えないです。
 やってる連中のオツムがアレなので、これはたちどころに二条帝(さかなクン)←違います にバレてしまいます。ギョギョっっ!朕は陰謀はゆるさないんだからね!!と厳しく糾弾された家長のキヨモリ、すぐに三馬鹿大将に「官職を返上して謹慎しろ」と命令します。
 そんな、官職返上したらどーやって生計を立てろとゆーんです、とうろたえる平氏のおのこ達。これもオーバーだと思いますけどね。べつに解官したから生計の道を絶たれて路頭に迷うほどの緊張感もなさそうだし。
 まあ、ここでなにを言いたいかというと、この不良中年たちにくっついてる基盛ってのが、自立心に乏しくて、兄貴の重盛(窪田正孝)が優秀だもんだから自分は万事いい加減、頑張るってことをしないという、そういう性格をなんとかせにゃいかんと。
 で、こういう場合の常として、キヨモリは「おれも若いころそうだった」と無理やり自分に引き寄せて説教です。弟が優秀だったもんだから、オレはいい加減で、ぐーたらしてた日もあったがお前は違う。お前はやればできる子だ。頑張れ。みたいなこと言って。
 んで、父ちゃんに激励された基盛は、官職返上したのに急に張り切り、紫宸殿の造営だかなんだかを責任者として頑張ります!と。そして見事にやり遂げた祝いに、高野山へ奉納に。父上、母上、行ってまいります!おお道中気を付けるのだぞ
…ってこれは、もうあまりにもわかり易い死亡フラグ。このドラマにおいては、父上行ってきます、って言った時点でもう死神が貼り付くと見ていいと思う。

 いえ、基盛に張り付いたのは死神というより、もっと怖いものだったんですね。
 ところはかわって、讃岐の国。この地に流刑になっていらい、俗世を離れてロハスな生活を満喫する崇徳上皇は、そこらのお百姓とも親しくなり、上皇様、今夜は自慢のうどんを作りますよってねえ~楽しみにしとってくださいねえ~、おおそれは楽しみじゃ、やはり讃岐と申さばうどんじゃのう、とかなんとかやっております。
 そして、私が何か物狂いに憑かれて乱をおこしたりしたのは、あれは何だったのであろうか。願わくばあの乱で命を落とした数多の御霊を鎮めたいもの……などと考え、暇なので、写経を始めるわけです。心をこめて。
 で、完成した写経を、王子誕生のお祝いとして後白河上皇にヤマト便で送る。ところが後白河さんは、新婚ボケに加えて子供にメロメロになっており、ちょ…崇徳の写経って気持ち悪くね?なんか怨念こもってんじゃね?ヤバくね?みたいなリアクション。しかも、ちょっと目を離したら赤ちゃんが、写経をバリバリ破ってキャッキャッ言ってます。
 あららー、ダメでちゅよー困ったでちゅー、しょーがない送り返しちゃえ!っつう、実にまあ軽いノリで、崇徳上皇の写経を、またヤマトの段ボールに適当に詰めて送り返す後白河。返された崇徳ちゃんも、そらショックですよ。
 そして悪いことは続くもの、崇徳ちゃんのもとには、仁和寺に入っている自分の息子・重仁王子の訃報が届けられます。そうそう、雅仁王子こと後白河に即位をかっさらわれた、あの悲運の皇子ね。自分と自分の子はこの悲運、しかも後白河は10代の嫁とデキ婚でルンルン生活。なんなんだこれ。なんなんだ。
 っと、穏やかなスローライフを送っていた崇徳ちゃんの内側から、理不尽と不条理への激しい怒りが爆発します。その爆発は、崇徳ちゃんの体を突き破り、目から血の涙を流し、口からはどばあっと吐血し、爪はうどんのようににゅにゅにゅ~~っと伸びて、禿げ頭からいきなり髪が生え、しかも逆立ち、とぐろを巻いて、
「日本国の大魔縁となり皇を取って民とし民を皇となさん!!!」
…っと、これ見てない方には信じられないでしょうが、この通りのビジュアルなんですよ。このくだりは諸々の古典にも描写されているので、もちろんいいんですけど、そのままビジュアル化したら、もろ「稲川淳二の怖~い話」。いいさそれも。夏だし。連日猛暑日だし。夏はホラーだよやっぱり。
 そんなことで、今週の「清盛」は、このあたりから番外編・夏のホラー特番という様相を呈していくのであります。まあ、オリンピックに降りかかった呪いが無かったら、あはははは~バッカで~~、と軽く笑ってスルーしたかもしれません…が……。

 で、死亡フラグをおっ立てて出かけた基盛は、旅の途中、川でおぼれて死んでしまい、お約束通り無言の帰宅をいたします。号泣する家族。そこに何故か西行(藤木直人)がいて、
「拙僧は見たのです。高野山で基盛様が川を渡るとき、讃岐の方角からなにか物の怪のごときもののカタマリが宙を飛んでいくのを…」
 と、気持ち悪いことを言い出すんですね。
 この讃岐の方角ってのが眉唾でねえ、だって京都から讃岐の方角って…そっち方面にはには神戸も岡山も広島もあるわけじゃない。讃岐って断言するのが、なんかなー怪しいんだよなー。
 みたいに、キヨモリは疑ったりしないわけです。基盛が急死したのは崇徳院の生霊の祟りだ。いや、崇徳院だけじゃなくって、いままで平家の繁栄のために足蹴にしてきた幾多の公家や武士たちの怨念の祟りだ、とにわかにパニクって、そして思い立つわけですよ。その怨霊の鎮めのために、それはそれは高価で霊験あらたかな壺を買おう。…あ、いや、印鑑を買おう。じゃなくって、経本を作ろう!!と。
 なんかこのあたりに、霊感商法にひっかかる心理が見える気がします。裸一貫で成り上がった社長サンとかは、特に注意するべきかもしれませんね。

 そして、国宝・平家納経が作られるわけですけど、この、経本ができるまでのビジュアルは、なかなか美しくて見ごたえがありました。紙に金箔を散らしていくところとか、平安美人の絵を描いていくところとか、細~い銀箔を線状にして貼って模様をつくっていくところとか、すごく綺麗。ここに草刈正雄のナレーション入ったらまさに「美の壺」状態。
 経文は、平家のメンバーが一巻ずつ書写していくんですけど、姿勢も美しく筆を運ぶ重盛の横で、まだ幼い重衡が真面目な顔で見ているところなんか、特に可愛らしくて良かったと思います。
んで、この「美の壺」と、稲川淳二を通り越して京極夏彦のホラー本の表紙みたいなビジュアルになった崇徳院が、己が血で呪詛を書き続け、ホンダラホニャラカホジソワカ~、ホンダラホニャラカホジソワカ~、と両手で印を結んで呪い続ける、これが交互につづくわけです。平家納経も見ごたえあるけど、どんどんB級化が進む崇徳ちゃんのお化け屋敷もすごくて、目が離せません。
 今週はストーリーとかホントどうでもよく、この場面の見ごたえだけで、ご飯三杯いける感じでした。

 かくして国宝・平家納経は完成。キヨモリは、それを豪華な箱におさめ、よき日を選んで一族うち揃って安芸の厳島神社に奉納に行くことにしました。
 そしたらその前に、時忠が、なぜか突然、帝を呪詛し奉った嫌疑で送検され、出雲に流罪ときまります。そんな…濡れ衣だとさわぐ時忠。きっと、体育館裏でウ○コ座りしてタバコ吸いながら「帝ってよー、さかなクンみたいな喋り方してよおー、ダッセーよなーあれー」みたいなことを云ってたのが呪詛とみなされたのでしょう。
「まあちょっと大人しくしてな、そのうち呼び返してやっからよ」とかいうキヨモリ。この変な余裕。キヨモリが手をまわして厄介払いに時忠に濡れ衣着せたのか?と勘繰りたくなりますが、時忠は、これも呪いではと真顔で。…まあ、いくら崇徳院の呪いがすごくても時忠なんか呪う理由も、動機もないと思いますけどねえ。

 ま、とにかく経典奉納の旅です。なぜか西行も同行しています。そして、とうぜん予想されたことですが、一天にわかにかき曇り、激しい嵐に船は翻弄されるんですね。讃岐では、崇徳院がもう人間のビジュアル通り越しちゃって、ほぼバケモノになって、ホンダラホニャラカホジソワカ~言っております。
…っと、このあたりで気づくんですけど、
 崇徳ちゃんの呪いは、西行のいるところに降りかかってないでしょうか。どう見ても。
 いやー怖いわ、西行が崇徳ちゃんを捨てて出家してから、いままで一方的に恨んでいたわけなのね。でも平家のメンズはそんなの知りませんので、「父上、こうなったら経典を海に投じましょう。投じて嵐を鎮めましょう」みたいなことを、息子たちが口々にいうわけです。
 もちろん、ここで海に投じたら、今に伝わる国宝・平家納経は存在しないわけなので。ヘタレなムスコどもを張り倒して、キヨモリは立ち上がるんですね。ウサギ丸!ナントカ丸、カントカ丸、と点呼して、最後に、「スズキ丸!!」と。
 これで「はいっ!!」と返事する鱸丸こと盛国が、もう、ここだけでまたご飯三杯いけますわって感じでねえ…。うふふふ。もう、良かった。イタコ爺の家貞の跡ついでプチ解説おじさんに成り下がらなくてホント良かったわ。
 で、ヘタレなムスコ世代をしり目に、オジサンたちは、嵐のなか舵を握ってがんばる。まあね、このあたり、DLのアトラクション・カリブの海賊、みたいな、しょーもねーお子様向けの匂いがプンプンしてたけど、「スズキ丸」「はいっ」が良すぎた余韻で、まあヨシとします。

 そして船は無事に…でもないけど安芸の厳島に到着。経典は無事に奉納されます。 
 一夜明けた讃岐でも、とつぜん憑き物が落ちた崇徳ちゃんが……なんか突然、説明もなにもなく特殊メイクが解除されて、素顏になって。
「なにひとつ思うままにならぬ一生を、崇徳上皇は生き切った」(頼朝)んだそうです。一種の憤死ですよねこれ。
 でも…まあ最後にね……時空を超えてロンドンに呪いをかけるような離れ業をやってのけたので、なにかこう、強烈な思いもあるにはあったのでしょうね。
 井浦さんお疲れ様でした。あまりにもイロモノな役でしたが、格調も高く、さらに摩訶不思議な異次元パワーまで感じさせる勢いで、ある意味神演技であったと思います。
 これも伝説になる……か?

さて来週から第三部ということで、源氏再興の話は私も楽しみなので、いいんですけど、でも第三部が始まって翌週が休止ってなあ…要領悪いよなあ……。まあこの具合だと来週も時間通りいくかわからんけど。
 まっ、とにかく来週。頑張れニッポン!!


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