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一日一書 1497 秋風に歩いて逃げる蛍かな・小林一茶

2018-10-27 09:27:28 | 一日一書

 

小林一茶

 

秋風に歩いて逃げる蛍かな

 

半紙

 

 

季語は「秋の蛍」。

「蛍は夏のものだが、まれに秋になってもその姿を見ることがある。」と

『俳句の解釈と鑑賞事典』(旺文社)にあります。

 

なんかユーモラスな句だなあと思って書いてみたのですが

これは、一茶が病床で読んだ句とのこと。

秋風に追われるようにヨロヨロと縁側なんかを歩く蛍に

弱った我が身を重ねたらしい。

 

そういうことを頭にいれて読むと

ユーモラスじゃなくて、哀れな句に思えてきます。

けれども、その哀れさも、決して深刻じゃなくて

「蛍が歩く」という、あまり目にすることのない姿に我が身を重ねて

どこか面白がっているふうにも思えるのです。

 

俳句というのは、どんなに深刻な心情を託しても

そこに自ずと「客観」のようなものがうまれ

そこに、自然にユーモアが生じるのではないでしょうか。

そこが短歌との大きな違いのような気がします。

 

うまく言えないけど

短歌は、作者が作品の「中」にいる。

俳句は、作者が作品の「外」にいる。

 

そんな単純なことじゃないけど、そういう感じがします。

 

 

 

 


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