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一日一書 499 野ざらし紀行 3・芭蕉

2015-01-31 19:19:54 | 一日一書

 

芭蕉「野ざらし紀行」より

 

半紙

 

 

本文は、以下の通り。

 

 

二十日(はつか)余(あまり)の月、かすかに見えて、

山の根際(ねぎは)いとくらきに、

馬上に鞭をたれて、数里いまだ鶏鳴(けいめい)ならず。

杜牧(とぼく)が早行(さうかう)の残夢、

小夜の中山に至りて忽(たちまち)驚く。

 

 馬に寐て残夢月遠し茶のけぶり

 

【口語訳】(小学館版・「日本古典文学全集」による)

二十日過ぎの月が、未明の空にかすかに見えるが、

山の麓のあたりは大層暗い中を、

馬上に鞭を垂れたまま、馬の歩むにまかせて山路を数里たどったが、いまだ暁を告げる鶏の声も聞えない。

かの杜牧の「早行」の詩にいう名残の夢心地で行くうちに、

小夜の中山まで来て、はっと目がさめた。

 


 馬上にうとうとと名残の夢を見続けてゆくうち、ふと気づくと、

 月は遠い山際にかかり、麓の里の家々からは、茶を煮る煙が立ちのぼっている。

 

 

 

「残夢」というのは、夢からさめてもまだ夢を見ているような気持ちのこと。

いい言葉ですね。

 

 




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一日一書 498 野ざらし紀行 2・芭蕉

2015-01-30 17:22:42 | 一日一書

 

芭蕉「野ざらし紀行」より

 

半紙

 

 

本文は以下の通り。

 

 猿を聞(きく)人捨子(すてご)に秋の風いかに

 

いかにぞや汝、ちゝに悪(にく)まれたるか、母にうとまれたるか。

ちゝは汝を悪(にく)むにあらじ、母は汝をうとむにあらじ。

唯(ただ)これ天にして、汝が性(さが)のつなきを泣け。

 

【口語訳】(小学館版・「日本古典文学全集」による)  

猿の鳴声に腸(はらわた)をしぼる詩人たちよ、この捨て子に吹く秋の風をどう受けとめたらよいのか。


それにしても、お前はどうしたのだ、父に憎まれたのか、母に嫌がられたのか。

いやいや、父はお前を憎んだのではあるまい、母はお前を嫌ったのではあるまい。

ただこれは天命であって、お前の生れついた身の不運を、泣くほかはないのだ。

 

 

「猿を聞く人」というのは、口語訳にもあるとおり

「猿の鳴き声を聞いて、腸をしぼる詩人」ということですが

これは、有名は「断腸の思い」のことを言っています。

中国の「世説新語」という本にみえる故事です。

中国、晉の武将、桓温が三峡を旅した時、従者が猿の子を捕えた。

母猿は悲しんで、キイキイと悲痛な声をあげて、百余里を追いかけた

そしてとうとう船にとびうつったが、そのまま息絶えた。

その腹をさいて見ると、哀しみのあまりか、腸がずたずたに断ち切れていた、という話です。

 

何とも哀れな話ですが 、これが「断腸の思い」の本来の意味です。

この話は、中国でも、そして日本でも広く伝わり

「猿の声」は「(親が子を思う)哀しい思い」を起こさせるものとして

多くの文学者に愛された表現だったわけです。

 

ここで、芭蕉は、富士川のほとりで見かけた捨て子を

哀れと思いつつ、食べ物を与えて去ることしかできなかったのですが

その際に、この発句を読んだというのです。

 

最後の「汝が性を泣け」とは、ずいぶん突き放した言い方にも思えますが

そこにかえって、芭蕉の哀しみの深さをみる思いがします。

 


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一日一書 497 野ざらし紀行・芭蕉

2015-01-29 15:52:34 | 一日一書

 

芭蕉「野ざらし紀行」より

 

半紙

 

 

本文は以下の通りです。

 

千里に旅立ちて、路粮(みちかて)をつゝまず、

「三更月下無何に入(いる)」と云(いひ)けむ、

むかしの人の杖にすがりて、貞享甲子秋八月、

江上(こうしょう)の破屋(はおく)をいづる程、

風の声、そゞろ寒げ也。

野ざらしを心に風のしむ身哉(かな)

 

【口語訳】(小学館版・「日本古典文学全集」による) 

前途千里の遠い旅に出るのに、道中の食糧を用意することもせず、

「夜更けの月光を浴びながら自然のままの理想郷にはいる」と言った、

昔の人の言葉をたよりに、杖にすがって、

貞享元年甲子の年、秋八月、隅田川のほとりのあばら家を出ようとすると、

風の響きも何となく寒々しく感じられる。

 

道に行き倒れて白骨を野辺にさらしてもと覚悟をきめて、旅立とうとすると、ひとしお秋風が身にしみることよ。

 

 

芭蕉の「野ざらし紀行」の冒頭です。

ちょっと大げさな感じもしますが、昔の人にとって「旅」とは

やはり、なみなみならぬ決意を要するものだったのでしょう。

 

 

 


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一日一書 496 継

2015-01-28 17:23:45 | 一日一書

 

 

空海「灌頂記」による

 

半紙

 

 

起筆で濃い墨色を出して

そのまま書いて最後にかすれさせるには

筆につける墨の量の調整がむずかしい。

なんどもやってみるしかありません。

 


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一日一書 495 気

2015-01-27 16:19:27 | 一日一書

 

 

空海「灌頂記」による

 

半紙

 

 

筆が壊れそうです。

 

あと2枚。

どれがいいのか、分からないので。

 

 

 

 

 

 


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