わたしたちの洋書の森

「洋書の森」のとっておきの話をご紹介

クリスマス読書会『夜ふけに読みたい 神秘なアイルランドのおとぎ話』レポート

2021年01月01日 17時46分32秒 | 魔女のメリー

洋書の森「おしゃべりサロン」主催のクリスマス読書会が12月19日に開催されました。課題本は『夜ふけに読みたい 神秘なアイルランドのおとぎ話』(平凡社)です。吉澤康子さん(翻訳)、和爾桃子さん(翻訳)、長島真以於さん(監修)、下中順平さん(担当編集)をゲストにお迎えして、参加者とスタッフを含めて約20名あまりでの開催となりました。

「おしゃべりサロン」の読書会では課題本の訳者、ときには担当編集者もお迎えして、本の感想や翻訳について語り合います。今回は参加者の方々の感想を聴き、質問を投げかけていただきながら、訳者、監修者、編集者という異なる視点から一冊の本について話していただいたので、物語の世界が一層身近に感じられるようになりました。
参加者からは「現実世界と妖精の世界がとても近く、単純ではない深い世界観を感じる」、「敵でもあり味方でもあるフィンとゴルの関係がおもしろい」、「戦車に乗って現れた女性に一目惚れするとは! その価値観が興味深い」、「翻訳がとても読みやすかった。1巻もぜひ読みたい」など、さまざまな感想が挙がりました。こんな読み方もあったのかと気づかされ、共感することができたのは読書会ならではです。
翻訳にあたってはアイルランドの固有名詞の読み方が難しかったこともあり、専門家である長島さんの助言が必須だったそうです。そのため、しっかり確認していただいたので、資料としても価値のある本になった、とも。これは原書(James Stephens, Irish Fairy Tales)と訳を比較してみなくては、と好奇心をかきたてられます。長島さんは物語の背景となるアイルランドの歴史や神話、言葉などを解説してくださったほか、文化というものをどう考えていけばよいかも教えてくださいました。また、惜しみなく資料を提供してくださったことには感激しました。編集者の下中さんは本書を子どもたちにも読んでほしいと思っていたところ、児童文学評論家の赤木かん子さんが自身のHPで本書を詳しく紹介してくれていて、とても嬉しかったというお話をしてくださいました。(児童文学評論家【赤木かん子】Official Siteよりhttp://www.akagikanko.net/rensai/16392/)
物語について語り合い、ゲストの方々のお話を聴いて、改めてアイルランド文化の魅力に気づかされました。また、アイルランドの文学や神話の世界をもっと深く知りたくなりました。読書会を終えて、参加者の方々より感想が寄せられていますが、どのメッセージからも充実した楽しいひとときを過ごしていただけたことがうかがえます。

参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。吉澤さん、和爾さん、長島さん、下中さんには、このような贅沢な時間を過ごすことができたことに心より感謝申し上げます。

※同シリーズは本書のほかに『夜ふけに読みたい 不思議なイギリスのおとぎ話』、『夜ふけに読みたい 奇妙なイギリスのおとぎ話』、『夜ふけに読みたい 数奇なアイルランドのおとぎ話』があります。2021年1月に発売予定の『夜ふけに読みたい 動物たちのグリム童話』も合わせてお楽しみください。

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2020年、洋書の森では宮脇孝雄さん(2月)、酒寄進一さんと吉川美奈子さん(9月)、夏目大さん(11月)をお迎えして講座を開くことができました。毎月一度のおしゃべりサロン、クリスマス読書会も開催できました。一方で、感染拡大により企画を延期することもありました。2月の講座と1月、2月のおしゃべりサロン以外は、すべてオンラインによる開催となりました。
コロナ禍による制限はありますが、その中で洋書の森では皆様に喜んでいただけるような講座やイベントを企画していこうと考えています。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

昨年は洋書の森を訪れてくださって、ありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
この一年が穏やかな良いお年になりますようにお祈り申し上げます。

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1 コメント

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アンサーテン・ラック (藤田伊織)
2021-01-01 22:14:47
レーイ・キーチさんという米国メリーランド州にお住まいの小説家とこの10月に知己を得まして、この度、彼の小説「Uncetain Luck」を翻訳しましたところ、元の本を出版した米国の出版社から、日本語版ということで、出版していただきました。「アンサーテン・ラック」といいます。アマゾンで12月28日から出ています。たった2ヶ月とちょっとで実現しました。この「Uncetain Luck」はすごく面白くて、読み出したらやめられず、すぐに読了してしまいました。でも、翻訳となると簡単ではありません。特に、四十章あるのですが、各章の冒頭にに日本文学の引用がストーリーにあわせて英語で記されていて、その元の日本語を探すのが結構大変でした。最初は源氏物語でした。これは英語訳も元の日本語の原文もネットにあるので、長編の中から探すのは大変でしたが、なんとかPCの中で対応できました。でも、川端康成、三島由紀夫、大江健三郎、安部公房などの小説は、まだ著作権保護期間内なので、ネットには出ていなくて、あったとしてもPDFベースの検索できない電子本だったりするので、図書館に行って、分厚い全集本のページをめくって探しました。おかげで、ほとんど読んだことのないこうした小説家の作品に触れる機会になりました。物語は、雪国育ちの20歳の絵未子が、母が急死して、行方不明の父を探しに東京へ出て、ベトナムで負傷した米兵と出会い恋に落ち、そこから、日本と世界を救う冒険が始まる、というものです。面白かった。皆さんも年越しに時間がありましたらお読みいただければ幸甚です。アマゾンですぐ出てきます。

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