わたしたちの洋書の森

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小鷹信光氏・セミナー報告

2013年09月25日 12時54分21秒 | 魔女のドミニク

みなさん、こんにちは。朝晩ずいぶん涼しくなり、日ましに秋らしくなってきますね。さる9月21日(土)、小鷹信光氏を講師にお迎えして、洋書の森で「翻訳者のためのウィークエンド・スキルアップ講座――翻訳という仕事PARTⅡ」が開催されました。今回は、小鷹氏に訳文添削をしていただけるというめったにない贅沢な企画ということもあり、遠方からの方もふくめ40名近い方が受講されました。

 セミナー前半、今月刊行されたばかりの小鷹信光+逢坂剛『ハードボイルド徹底考証読本』(七つ森書館)の帯で「ついに“日本ハードボイルド界の父・小鷹信光”にされちゃったんです」と笑いを交じえながら、ミステリ作家エルモア・レナードの小説作法10則が翻訳に通じること、人称代名詞や疑問符や感嘆符をどう処理するのか、常套句や漢字をどう使いわけたらいいのか、といった具体的な翻訳作法を解説してくださいました。

 後半、いよいよ受講生の訳文添削です。当初は数名分のみという予定でしたが、小鷹氏はなんと、提出された訳文すべてに朱入れをしてくださったんです! が、評価は「20数名のうち、及第点をだせるのは2人かな」というきびしいもの。とはいえ、そのご指摘は前半の具体的な作法にくわえ、「訳文から、自分が納得するまで追究しようとするせっぱつまった感じがない」といった翻訳姿勢にまでおよび、うなずくことばかりでした。反省しています……。

 最後のQ&Aコーナーで、受講生からの「原作(『マルタの鷹』)で登場人物がフルネームで表記されていることには、原作者のどんな意図があるのか」という質問に、「(すでに他界している)原作者の意図は不明だが、なんらかの意図があったのは事実だろう。……翻訳は一つ一つの話であって、最高の形っていうのはわからないんだよね」とご自身に言いきかせるようにおっしゃる姿が印象的でした。

 小鷹信光さん、後進を叱咤していただき、ありがとうございました。翻訳にたずさわる者が忘れてはいけない大事なことをあらためて認識させていただきました。深く感謝申しあげます。

▼【平成24年9月開催】第2回 翻訳者のためのウィークエンド・スキルアップ講座
小鷹信光氏「翻訳という仕事」セミナーリポートはこちら▼
http://goo.gl/Wpw7nU