わたしたちの洋書の森

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第21回 翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座

2016年04月20日 09時22分42秒 | 魔女のポーシャ

4月16日、鈴木豊雄さんによる「第21回 翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座~~PDICでつくるオリジナル辞書とメモ帳~~」が開催されました。鈴木さんの講座は、受講生がノートパソコンを持ち込んで、講師の話を聞きながら実際にパソコンを操作する、パソコンの実技講座。「第1回 翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座」でPDIC (Personal Dictionary)の基礎を、第4回の講座ではJammingによる「串刺し検索」、第9回の講座では再びPDICに戻って設定と使い方を習いました。

そして4回目の第21回では再々度PDICの基礎に戻り、既存の辞書をインストールしたり、オリジナルの辞書を作って追加したりして利用できるようになることを目指しました。パソコン辞書は翻訳作業のスピードアップに欠かせませんが、わたしのように、まだ使いこなせない人もいるのではないでしょうか。ときどきパソコン辞書の基礎を教えていただけると助かります。

受講生は、PDICを扱うのが初めての人や、まだ慣れない人がほとんどだったようです。けれども、3人のサポートスタッフの手も借りて、2時間でスタートラインに立てたのではないかと思います。これを機に、PDICを自在に操って、パソコン辞書を活用できるようになりたいものですね。

■そもそもPDICとは何か:
PDICは、辞書そのものではなく、辞書引きソフト。各種辞書を登録したり、オリジナル辞書を作成・登録したりして、複数の辞書や事典などを一括して引くことができます。翻訳作業をするパソコン画面の片隅に置き、常時自動検索をさせることができるので、便利です。

■PDICのインストールおよび設定について:
PDICのホームページから最新のバージョンをダウンロードしインストールします。インストール後最初に立ち上げたときに出てくる画面で、「見出し語」「表示項目」「検索設定」などの設定を行いますが、その中で特に注意したいのは「自動検索」です。「自動検索をする」「PDIC本体で検索」「余計な空白を削除する」にチェックを入れておくと、たとえば同時に開いているワード文書のある単語の意味を調べたいとき、その単語を範囲指定してマウスを右クリック→[コピー]を選択するだけで、当該の単語をPDICの検索窓に入力して自動検索することができます。手入力でも検索は可能ですが、入力ミスを避けることができて便利です。

■[既存辞書の追加]と[新規辞書の追加]:
今回の講座では、サンプル辞書がUSBで用意されていました。受講生はそれを各自のパソコンにコピーし、コピーしたものを[既存辞書の追加]で設定して、そのあとの検索練習に使いました。

それとは別に、各自でオリジナルの辞書を作成するときには、[新規辞書の追加]で設定を行います。メイン画面の[File]→辞書設定〈詳細〉(E) →[辞書設定]画面で右クリック→[新規辞書の追加(N)]→ファイル名入力(自分の名前を入れるとわかりやすい)と進めば設定完了。

☆以上、洋書の森のFacebookのノート欄に掲載の第1回および第9回のレポートも参考にしてください。第4回ではJammingによる「串刺し検索」が取り上げられています。
https://www.facebook.com/youshonomori/notes

■鈴木さんは、出典の入力を推奨します:
オリジナルの辞書を作成するときには、単語や表現の訳語・意味だけでなく、出典(誰が書いた何という書籍に載っていたか、どの辞書の記述か)や例文を入力しておきます。これはデータの信頼性を示すことになります。

■「関連語検索」機能:
普通の辞書は、動詞なら原形が見出しになります。また再帰代名詞もoneself で代表されます。したがってfeels herselfはfeel oneself、tore apartはtear apartと読み替えて辞書を引かなければなりませんが、「自動検索」では「関連語検索」機能がついているため、feels herselfと入れて[検索]ボタンをクリックすれば自動的にfeel oneselfで、tore apartと入れればtear apartで検索してくれます。

■リンク機能:
次の3つのリンク機能があるため、これを活用すれば、膨大な資料が網羅できます。
楽しみながらコツコツと資料を集めましょう。

1.<→(文字列)>で(文字列)へジャンプ。PDIC内の他の項目にジャンプして、さらに深く資料を参照できます。
2.URLをコピーペースト、クリックひとつで当該サイトへジャンプ。多くのウェブサイトを瞬時に参照できるので便利。
3.<file:(ファイル名、拡張子も忘れずに)>で当該ファイルを立ち上げ、表示/再生。画像や音声も参照できます。
(注)文字列やファイルを指定する「<」と「>」は半角です。

PDICの基礎は習いました。ここから先は、わたしたち次第です。辞書を充実させていくために、無料辞書をダウンロードしたり、PDIC対応の辞書を購入したりして、必要な辞書を登録し、さらに普段の仕事の中で気になる単語や表現をひとつひとつ登録するなど、やるべきことはたくさんあります。個人的には紙の辞書が好きなのですが、よりよい翻訳を生み出すためにはパソコン辞書の力が必要だと理解できます。充実した辞書環境を紙とパソコンのコラボで実現していきたいと思いました。

なお、PDIC用の辞書は↓のサイトで紹介されています。ご参考までに。
http://pdic.la.coocan.jp/unicode/dic-links.html

(洋書の森会員、斎藤静代)