わたしたちの洋書の森

「洋書の森」のとっておきの話をご紹介

洋書の森セミナーのお知らせ、そしてプラスワン♪

2014年09月16日 10時13分21秒 | 魔女のポーシャ

まだ9月なのに、東京の空気は秋めいてしまいました。
それはありがたいのですが、大気の状態が不安定なのは困ります。
出かけるときには良い天気でも、折り畳みの傘をわすれないようにしないと。

洋書の森から10月のセミナーのお知らせが届きました。↓
このところ早々と定員に達してしまうようなので、お申し込みはどうぞお早めに。
講義後の交流会にも、どうぞご参加ください。

お一人でも大丈夫。すぐに翻訳仲間ができますから。
詳細のpdfは、「わたしたちの洋書の森」のFacebookからもアクセスできます。

https://www.facebook.com/youshonomori
(公開されていますので、どなたでもアクセス可能。)


そして本日のプラスワン!
10月1日のおしゃべりサロンに、翻訳者の原田勝さんが来てくださいます。
前回来てくださったときには、経験に基づくレジメの書き方をレクチャーしてくださいました。
今回は、編集者には聞きにくいリーディング料、印税等のお金の話や、出版に関わる契約の話。

ご本人の経験をもとにしたミニ・レクチャーです。

どうぞお楽しみに。


<第12回 翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座>

小鷹信光が語る「翻訳という仕事」PARTⅢ

日時/平成26年10月11日(土)講座・午後3時~午後5時、受講生交流会・午後5時頃
~<希望者のみ>

講師/小鷹信光氏(作家・翻訳家)

講義内容/
 Ⅰ.翻訳の心得
 Ⅱ.名訳?それとも誤訳?
 Ⅲ.翻訳よもやま話―小鷹信光氏が出会った人々

※各項目の内容詳細は添付のpdfまたは日本出版クラブHP(下記URL参照・間もなく
UP予定)をご覧下さい。

会場/日本出版クラブ会館(新宿区袋町6番地)

会費/講座・2,100円、受講生交流会・3,200円<希望者のみ> 

定員/80名(申込み順、定員になり次第締切。「洋書の森」未会員の方も大歓迎!)

※講座終了後、午後5時頃より会館1F・ローズレストランにて受講生の交流会を行い
ます。参加ご希望の方は併せてお申込下さい。

※申込方法/下記「洋書の森」宛にお名前、洋書の森会員番号(会員の方)、連絡先
電話番号、メールアドレスを明記して“10/11(講座のみ or 講座・交流会とも)参
加希望”とメールして下さい。お申し込みいただいた方には折り返し“受け付けまし
た”と返信いたします。数日経っても返信のない場合はお手数ですが、お電話等でお
問い合わせ下さい。(金曜夕方~日曜・祝日にお申込みの方には返信が休日明けとな
りますのでご了承下さい。)

また、お申込み後ご都合の悪くなられた方は、前日(10/10)正午までにお知らせ
下さいますようお願いいたします。 

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一般財団法人日本出版クラブ
「洋書の森」事務局
(土、日、祝日を除く9時~19時)

〒162-0828
東京都新宿区袋町6番地
TEL   03-3260-5271
FAX   03-3267-6095
Mail  yousho@shuppan-club.jp
URL   http://www.shuppan-club.jp/
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洋書の森から出版契約第24号が刊行されました!

2014年09月05日 17時08分16秒 | 魔女のメリー

久しぶりに洋書の森からうれしいお知らせが届きました。

あたらしい本のご案内です。

『僕と彼と彼女と』
ジャン・フィリップ・メニャン著、茶谷佳子訳
近代文藝社 2014年8月10日発売

まず印象に残ったのが、水彩画のような美しいイラストの装丁です。アマゾンでは、「『僕』の前に突然現れた謎の女カミーユ・D。奇妙に絡み合う愛憎の三角関係を描いた、2012年刊行のフランス小説」と紹介されています。表紙の透きとおった淡いブルーは、どろどろとした人間模様とは縁遠いもののように感じられました。いったいどんな物語がはじまるのだろう、と想像が膨らみます。

「何かが彼女の瞳を通り過ぎた。感動でもなく、感情でもない、なにか――。わかっていた。しまいにはそうしてしまうだろうと。わかっていた。いつか不意に、気配も感じないまま、しまいには、禁を破ってしまうことを。」

洋書の森でもごらんになれますので、ご興味のある方はぜひ。

アマゾンはこちらから
http://goo.gl/dYsRWd


9月の書架整理レポート

2014年09月04日 10時37分55秒 | 魔女のドミニク

 9月3日(水)は月例の書架の入れ替えでした。日本出版クラブ近くの文具店〈相馬屋〉で、文豪たちの使った原稿用紙を見て、万年筆で原稿用紙に文章をつづったらどんな感じだろうと想像してみました。キーボードで入力するのとは違う文章をつづれそうな気がしませんか? 

 今月の新着本は、英語が4点、フランス語が25点です。イラスト入りで大人も子どももいっしょに楽しめそうな内容のものが何点かありましたよ。ぜひお手にとってご覧ください。

 今回は、遠方からご参加の方も含め、初めての方がお2人いらしてくださいました。続くおしゃべりサロンでは、文芸翻訳に関する疑問やお悩み、あるいは夢など、幅広い話題が出ました。自分だけの悩みかと思っていても、話してみると意外にほかの方にも共通の悩みだとわかって、秋空のように気持ちが晴れたりするものですね。

 次回の書架整理は、10月1日(水)14:00-、おしゃべりサロンは15:00-です。予約も参加費も不要です。お気軽にご参加ください。レジュメ相談にも応じていますので、ご活用ください。


第11回翻訳者のためのウィークエンド・スキルアップ講座

2014年09月03日 11時10分26秒 | 魔女のポーシャ

金子靖翻訳教室 神楽坂校舎
「出版できる翻訳文の作り方 ~まずは英語を正確に読む」 
    講師/金子 靖氏(研究社編集者)
    日時/平成26年8月30日(土)15:00~17:00

これまで翻訳家による翻訳実践講座(課題提出、添削、解説)は何度か開催されましたが、編集者による翻訳実践講座は今回が初めてです。これまでと大きく違うのは、訳文を読みながら解説が進むこと。そして気になる表現が出てきたときに原文をチェックすること。翻訳家による講座では、原文を読みながら訳を考えていきましたが、そうやってできあがった訳文をそのまま読んでいくという、視点の違うスタイルでした。

翻訳に必要なのは、英語力8割、日本語力2割、と金子さんはおっしゃいます。正しく読めなければ、原著者の意図は理解できず、それを伝えることもできません。では、どのように原文と向きあえばいいのでしょうか。2時間ほどの講義の間に示されたヒントの数々、その一部を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

課題に用いられた作品はBrian Evensonの短編集”Windeye”より”Anskan House”です。 http://www.amazon.co.jp/Windeye-Stories-Brian-Evenson/dp/1566892988/ref=sr_1_4?ie=UTF8&qid=1409447095&sr=8-4&keywords=Brian+Evenson

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■大前提は:
原文をきちんと読んで正しく理解すること。そのためには辞書や文法書を活用して、確認を怠らないようにします。

■小説のトーン(語調):
作品を読んで、訳文の語調を決めます。課題の小説は、現実的とは思えない世界を表しているので、淡々とした乾いた語調にするといいでしょう。また登場人物の性格を読み取ることも大事です。主人公は「いい子(人)」のようですが、副詞や描出話法(後述)から変化を感じて、別の面が見えてくることに気づきましょう。

■辞書で確認する:
*He could feel it…: これ以外にも、助動詞を用いた文はたくさん出てきました。助動詞の意味と用法を確認して、文のニュアンスを正しくとらえなければなりません。辞書には意味だけでなく用法も載っているので、丁寧に読むことを心がけましょう。

*It was hard to get around…: getやgo、makeなどの易しい単語を使った句動詞を正しく理解します。get aroundはここでは「歩き回る」という意味。思い込みで訳さず丁寧に辞書に当たって、その空気を表現しましょう。

*slip on a shoe: 「靴を履く」で済ませるのではなく、slipの感じを生かして「さっと履く」「すっと履く」とすると、それらしくなります。

*he … slowly coaxed it up from the depths of his mind: coaxedが他動詞であることに注意。自動詞的な「心の底からそれが湧いてきた」ではなく、「主語がそれを引っ張り上げる」という、主語の意識が生きる表現にします。

■代名詞の扱い: 
よく言われることですが、省略できる「彼」「彼女」等の代名詞は、なるべく省略します。文のつなぎ方を工夫すれば、代名詞を使わなくても意味はわかるからです。

■小説で多く用いられる描出話法: 
作中人物の心の中の声が地の文になっている話法。間接話法の一種です。What was a leg next to a whole family?/Had it really happened?など、この作品でも多用されていますが、過去完了形を過去時制で、過去形を現在時制で訳すなど、「時制・人称・副詞的要素は一般の間接話法と同様に」(『アルファ英文法』(研究社)抜粋プリントより)処理すると、心の声らしくなります。

■擬音語、擬態語: 
He could feel it aching and tinglingを「脚が痛み、疼く」と訳すのもいいのですが、achingとtinglingが-ingで韻をふんでいることに注意します。「ヒリヒリチクチク」のように音で表現するとリズムが生まれます。これも訳文の選択肢にしましょう。ただし、使いすぎると幼稚な文になるので注意。

■繰り返される表現: 
He did not thinkやprobablyが繰り返し出てきます。繰り返しには、著者が意識している場合と、癖で使われてしまう場合があるようです。同じ訳語を当てて繰り返しを生かしてもいいのですが、前後の言葉との関係において、それが不自然になることもあるので、気をつけましょう。文脈によっては間引いてもかまいません。(忠実に繰り返した結果、読者が「訳が下手だ」と思うかもしれない、という心配も…)

■「足」か「脚」か: 
一般的には、footが「足」でlegが「脚」。他にも「さまよう」/「彷徨う」のように、ひらがな表記と漢字表記のどちらにするか、迷うケースがあります。漢字は意味を意識させるので、特別な意味を含まない限り、基本的にはニュートラルな表記(ひらがなか、一般的な漢字か)がいいでしょう(「彷徨う」をルビなしで読んでもらえるかどうかも気になるところ)。

■最初から丁寧に読んでおかないと…: 
knock on a door and whisper through a slotのslotをそのまま訳すと、「何の穴?」という疑問がわきます。これは、先行する部分にあったthe letterbox slotを念頭においた単語。ほかにも、I take his troubles upon me.を踏まえたto take on his grandson’s troubles、a part of him now was saying…からのa part of him was thinkingなど、前出の表現を意識した訳を求められる箇所がありました。

■最後に: 
オチははずさない。オチをはずしたら、その作品はだいなしになってしまいます。

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編集者は、訳文を読んで気になったときに原文にあたり、訳者宛てに提案のメモをつけることがよくあるそうです。配布された「出版できる翻訳文の作り方」のプリントには、編集者・校正者は「訳文を読んで疑問を感じ」たら「建設的な修正案を暗示」するのが仕事で、「それを受けて、原文をもう一度見直し、正しい訳を捻出するのは、…出版翻訳者の仕事だ」とあります。改めて、翻訳者としての覚悟を意識させられました。

もうひとつ…、今回の講座には、プロの翻訳者がおおぜい参加していました。課題訳を提出したプロの翻訳者も多く、その見事な訳文が随所で紹介されたのですが、同じような訳文に落ち着くのには驚きました。翻訳に正解はない、と言われますが、「ほぼ正解」はあるようです。英語力8割――翻訳者には無視できません。

(洋書の森会員・斎藤静代)


♪金子靖翻訳教室がやってきた♪

2014年09月01日 13時08分36秒 | 魔女のポーシャ

――8月というのに秋めいてしまったここ数日の東京。でも集まった受講生は熱かった!――

30日、研究社の編集者、金子靖さんの翻訳教室が開かれました。青山ブックセンター
で開かれる翻訳教室の生徒さんやプロの翻訳者も含めて60数名、注意すべき翻訳のポ
イントを学びました。作品は今一番ノッている作家Brian Evensonの”Windeye”よ
り”Anskan House”。課題の訳文を提出した人の中にはプロの翻訳家もいて、そのプ
ロたちの見事な訳文も紹介されました。あんなふうに訳せるといいなあ、と紹介され
るたびにため息。わたしには最後のオチの解釈が難解でした。う~ん、一晩たって
も、まだ理解できていません、困ったもんだ…。

講座の詳細については、のちほど改めてレポートを出します。少々お待ちくださいませ。

講義のあとは恒例の懇親会。英語の話で盛り上がったり、思わぬ出会いに食事そっち
のけで話に夢中になったり。そういえばワインは何本開いたのかしら? 余計な心配
ですね。ごちそうさまでした。