わたしたちの洋書の森

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【第35回「翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座」レポート】

2019年10月03日 17時12分39秒 | 魔女のソフィー

9月28日、第35回「翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座」が開催されました。こけら落としの第3弾となる今回の講座は、題して「芹澤恵の翻訳玉手箱 第一話――翻訳は深い読書――」。芹澤恵さんを講師として「洋書の森」にお招きするのは初めてで、どんな講義を受けられるのだろうと私たちスタッフも期待に胸をふくらませ、当日を迎えました。

課題は、アメリカの新人作家Josh Denslowの初短編集、Not Everyone Is Specialに収められた一編Consumptionです。この短編はなんとたった1ページ! それでもきちんと「落ち」があるショートショートともいうべき作品です。事前に提出された20名の方の訳文が受講生に配られ、それをもとに講師が解説していくといったスタイルの講座でしたが、芹澤先生は立ったままお話を始められたかと思うと、笑顔を浮かべながら自ら受講生の方々にマイクを向けて質問して回られました。皆さんはいきなり当てられて戸惑いつつもしっかり答えてくださって、意見や感想が活発に飛び交うライブ感あふれる講座となりました。

芹澤先生のお話はどれも、「玉手箱」に大切にしまっておき、時々開けては実践したくなるような貴重なものばかりでしたが、中でも心に残ったのは、「短編の場合は、訳者と同じ絵を読者に描いてもらえるように、なるべく早い段階で細かく情報を与えるほうがいい」といった言葉です。また、登場人物がどんなキャラクターか自分なりにイメージしたうえで訳すことの大切さを説かれていたのも印象的でした。

タイトル Consumptionをどう訳せばいいか考えるのも、短編をまるまる訳すといった今回の課題ならではの面白い試みでした。本文にもこの言葉は出てくるため、皆さん、工夫されたようで、先生が、訳を提出されていない方にも「どう訳した?」と尋ねられると、いろいろな邦題案が返ってきました。

今回は休憩なしのノンストップでしたが、受講生の方々はいつ芹澤先生に指されるか緊張を保ちながらも、先生の優しいお人柄もあって、和やかな雰囲気の中、講義は進んでいき、あっという間の2時間でした。ある受講生の方から「今日の講義は読書会みたいだった」との感想を個人的にうかがったのですが、まさに今回の講座のサブタイトル「翻訳は深い読書」どおりの内容となったのではないかと思います。

講座の後には、出版クラブビル近くのお店で交流会が開かれました。「皆さんと気軽に話せるようにできれば立食形式にしてほしい」との先生のご希望をかなえるべく、ビュッフェスタイルでおこなってみたところ、参加された方々は和気あいあいと楽しく過ごされていたようです。

芹澤先生、ほんとうにありがとうございました。早くも「翻訳玉手箱 第二話」を開催してほしいとの声が多く上がっていますので、どうぞよろしくお願いいたします。参加してくださった皆さまにも改めてお礼申し上げます。

次回の「ウィークエンドスキルアップ講座」は、12月7日(土)15時より開催いたします。講師にお迎えするのは、たびたびご登壇いただいている原田勝先生です。講座の後には交流会を兼ねたクリスマス会を開けたらと考えておりますので、皆さん、ご予定を空けてお待ちくださいね。