2021年4月29日、洋書の森「おしゃべりサロン」主催の読書会をオンラインで開催しました。課題図書は『存在しない女たち――男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』(キャロライン・クリアド=ペレス著、神崎朗子訳、河出書房新社)。訳者の神崎朗子さんをゲストにお招きして、総勢20人で感想を語りあいました。おしゃべりサロン主催の読書会でノンフィクションを課題書としてとりあげるのは、今回がはじめて。この本だから参加したという人も少なからずいて、フェミニズムやジェンダーの問題に対する関心の高さがうかがえました。
まず話題にのぼったのは、なんといっても圧倒的なデータの量。多岐にわたる分野の膨大なデータに、これまであたりまえだと思っていたことがあたりまえではないのだと気づかされた、という感想が多く出ました。この本を読んで、身のまわりのことに対する見方が以前とは変わったという意見もありました。
新しい気づきがあるいっぽうで、この本で提示されている事実の多くは、おそらく女性なら日々の暮らしのなかでなんとなく感じたり経験したりしてきたことだという指摘もありました。その形のないもやもやを浮き彫りにするデータの力と、それを明確に言語化する書物の力。それが、この本の大きな魅力なのだと感じました。できるだけたくさんの人に届いてほしい、という声が多かったのも頷けます(日本のデータを集めた日本版がほしい、との声も多数。出版社さん、どうですか?)。
印象的だったのは、参加者のみなさんがいろいろな視点から深く読みこんで、それぞれの経験を踏まえて内容を消化し、それを率直な言葉で語っていたこと。みなさんの感想を聞いているうちに、自分のなかで漠然としていたものがどんどんクリアになっていくような気がしました。自分ひとりで読んでいるよりも、はるかに深い理解と洞察を得られる。そんな読書会の魅力を、あらためて実感しました。ほんとうはお酒でも飲みながらもっとじっくり語りあいたいところですが、2時間という限られた時間のなかでも、得られたものはとても大きかったと思います(参加者のみなさんも同じように思っていてくださるといいのですが)。
会の最後には、神崎さんからジェンダー関連のおすすめの絵本として、『女の子だから、男の子だからをなくす本』(ユン・ウンジュ著、イ・へジョン絵、ソ・ハンソル監修、すんみ訳、エトセトラブックス)を紹介していただきました。こうした本をきっかけに身近なところから議論が広がり、社会が少しでもよい方向に変わっていけばいいなと思いました。
ご参加いただいたみなさま、ゲストの神崎さん、ありがとうございました! また楽しい時間を共有できますように。