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わたしたちの洋書の森

「洋書の森」のとっておきの話をご紹介

春の読書会『赤い魚の夫婦』レポート

2022年05月11日 12時03分36秒 | 魔女のソフィー

4月24日(日)、洋書の森「おしゃべりサロン」主催〈春の読書会〉をオンラインで開催しました。課題図書は、現代メキシコを代表する女性作家による短編集『赤い魚の夫婦』(グアダルーペ・ネッテル 著、宇野和美 訳、現代書館)。第八回日本翻訳大賞の最終選考対象作品にも選ばれた話題作です。訳者の宇野和美さんをゲストにお招きして、わたしたちボランティアスタッフも含め総勢21名で賑やかに語り合いました。

スペイン語圏の文学を取り上げるのは初めてだったこともあってか、参加者は、翻訳者をはじめ、スペイン語学習者、スペイン語圏在住の方、海外文学ファンとさまざまで、当読書会に参加するのは初めてという方も多くいらっしゃいました。

いつものようにまず自己紹介していただいてから、2つのグループに分かれて語り合い、最後にはまた全体に戻り、各グループでどんな感想が出たか、特に人気のあった短編はどれか、シェアしました。感じ方や解釈はこれこそ読書会の醍醐味だと感じるほど読み手によって違った一方で、誰かと語り合いたくなる魅力的な一冊だという感想は共通していましたので、やはりこの作品を課題図書にしてよかったなとあらためて思いました。

ゲストの宇野さんも参加者の輪に加わって、質問が投げかけられた際には大変丁寧に答えてくださったり、貴重なお話をたくさん披露してくださったりして、おかげさまで充実した読書会となりました。宇野さん、お忙しいところありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

そして、ご参加いただいたみなさまもほんとうにありがとうございました。これからも読書会のような楽しく学べるイベントを定期的に開催していきたいと思っていますので、ご期待ください。


クリスマス読書会『クイーンズ・ギャンビット』レポート

2021年12月25日 11時39分25秒 | 魔女のソフィー

12月18日(土)、洋書の森「おしゃべりサロン」主催の「クリスマス読書会」をオンラインで開催しました。課題図書は『クイーンズ・ギャンビット』(ウォルター・テヴィス 著、小澤身和子 訳、新潮社)。Netflixで大ヒットしているドラマの原作です。訳者の小澤身和子さんをゲストにお招きして、わたしたちボランティアスタッフも含め総勢20名で和気あいあいと語り合いました。

参加者は、ドラマのファン、原書も読んだ方、チェス愛好家とさまざまで、多方面の視点から活発に感想が飛び交いました。小澤さんもその輪に加わり、時には、参加者からの質問に対して丁寧に答えてくださったり、翻訳作業中のエピソードを披露してくださったりしました。みなさんからの感想の中で特に多かったのは、主人公ベス・ハーモンと養母ウィートリー夫人との独特の親子関係がよかったというものです。ほかにも、「登場人物、特に女性たちの心理描写が丁寧に描かれている」「ルールがわからなくてもチェスのシーンがおもしろかった」「1960年代当時のアメリカ社会を知ることができて勉強になった」「ベスの成長物語としても楽しめた」「この本を読んだらチェスがしたくなった」などいろいろな感想が出ました。それだけ魅力にあふれた小説だということでしょう。

ご参加いただいたみなさま、ゲストの小澤さん、ありがとうございました。お忙しい時期にお時間を作ってくださり、心より感謝申し上げます。

今年は、「おしゃべりサロン」主催の読書会として、4月29日(昭和の日)には「春の読書会」(課題図書:『存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』)を、8月28日(土)には「納涼読書会」(課題図書:『春の宵』)を開くことができました。いずれもオンラインでの開催となりましたが、訳者さんと多くの方々にご参加いただき、楽しくも充実したひとときを過ごしました。来年も同じくらいのペースで読書会を開けたらいいなと思っていますので、その際にはぜひご参加いただけるとうれしいです。

みなさま、良いお年をお迎えください。来年もまた「洋書の森」のイベントでお目にかかれますように。


第38回「翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座(オンライン)」レポート

2020年10月05日 14時06分04秒 | 魔女のソフィー

新年度もみなさまに喜んでいただけるような講座をお届けしよう! そんな思いを胸に、私たちボランティアスタッフは、年初から事務局と共に企画を練っていたのですが、新型コロナウイルスの流行に阻まれ、仕方なく4月に予定していた講座を中止し、以降も開催を見合わせていました。いつになったらまた講座ができるのだろうと気になっていた今夏、ついに事務局から「オンラインで講座を再開しよう!」とのうれしい連絡があり、意気込んで準備を始めました。初めての試みとあって、開催にこぎつけるまでには、事務局の方々は大変苦労したようですが、私たちも微力ながらお手伝いし、当日は、自宅にて共同ホストとしてバックアップすることになりました。

9月19日、開始時刻15分前、無事に進行するかどきどきしつつ、参加者のみなさまが続々と入室していらっしゃるのをお迎えしました。今回、申し込んでくださったのはなんと141名! しかもそのうち80名が初参加で、海外から参加してくださる方も多くいました。そんな「洋書の森」の歴史を塗り替えるようなすごいイベントが始まるのだと興奮しながら、画面を見守っていると、講師の酒寄進一さんとゲストの吉川美奈子さんが登場し、事務局から開会の挨拶があり、いよいよ講座がスタートしました。

今回の講座のタイトルは『文芸翻訳♡字幕翻訳~ふたつの顔をもつ物語をめぐって』。初めは、ドイツ語の文芸翻訳をされている酒寄先生の講演です。文芸翻訳家になるまでの過程や、翻訳家になってからどんなことを心がけているかについてお話ししていただきました。文芸翻訳家になるにあたっては、大学の卒論のテーマがグリム童話だったことが役立ったそうで、「そうした引き出しがあったからこそ文芸翻訳の仕事をもらえた。みなさんも、本をたくさん読んだり言葉をいっぱい学んだりして、いろいろな引き出しを作っておこう」というアドバイスをいただきました。実際に翻訳家になってからのお話で特に興味深かったのは「持ち込み」についてです。大変ありがたいことに、後半の対談でも話題となる『キオスク』のレジュメの一部を披露してくださいましたし、「企画を持ち込んで断られても、出版社やラインアップと合わなかっただけかもしれないからあきらめずに温めておくように」とのお言葉には、筆者自身、とても励まされました。

次に、ドイツ語の字幕翻訳をされている吉川先生の講演です。まずは、「字幕翻訳とは」といったテーマで、どんな作業をするか、どんなルールがあるかについてわかりやすく説明してくださいました。字幕翻訳をするにあたっては黒子に徹するのが大事で、常に「透明な訳文」を心がけていらっしゃるそうです。仕事を得るには、出版と違って持ち込みはないので、やりたい作品があれば、「来い、来い」とひたすら念じるのが効果的なのだとか。これならすぐにでも実践できそうですね。そして、「これまでの翻訳稼業をふりかえる」というテーマで、字幕翻訳家になるに至った経緯についてもお話ししてくださいました。字幕翻訳の仕事をするうえで何よりも心がけているのは、「締め切り厳守・誠実であること」だそうです。簡単なようで難しいことかもしれません。

後半は、酒寄先生と吉川先生の対談です。フェルディナント・フォン・シーラッハの『コリーニ事件』、ローベルト・ゼーターラーの『キオスク』(映画の邦題は『17歳のウィーン フロイト教授 人生のレッスン』)という二つの作品を、「原作の翻訳」と「映画の字幕翻訳」という異なる形で手がけたお二方に、どんな思いでこの作品に向き合い、どんな工夫をされたのか、じっくり語り合っていただきました。そして、翻訳者にとって永遠のテーマともいえる「役割語」「時制」などについても触れていただきました。お二方のお話は尽きそうもなく、いつまでもうかがっていたいと思うほど楽しい時間が続きましたが、残念ながら終了時刻が迫り、最後は受講している方々に向けて、お二方から「作品に愛ある訳を。作品を好きになって訳せば、その作品にとっても自分にとっても幸せだから」というすてきなメッセージをいただきました。そんな作品を見つけたいものです。

酒寄先生、吉川先生、こうした状況にもかかわらずすばらしい講義をしていただき、ほんとうにありがとうございました。そして受講してくださったみなさまにも改めてお礼申し上げます。お見苦しいところもあったかと思いますが、この反省点を生かし、次回の開催に向けて準備を進めてまいりますので、またご参加いただけるとうれしいです。

次回は、今年4月に登壇していただくことになっていた夏目大先生をお招きする予定です。開催日時は11月28日(土)15時より。引き続きオンライン開催となります。詳細が決まり次第ご案内いたしますので、ご予定を空けてお待ちください。

今後もみなさまに楽しく学んでいただけるようなイベントを企画していくつもりですので、再始動した「洋書の森」をどうぞよろしくお願いいたします。


【第35回「翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座」レポート】

2019年10月03日 17時12分39秒 | 魔女のソフィー

9月28日、第35回「翻訳者のためのウィークエンドスキルアップ講座」が開催されました。こけら落としの第3弾となる今回の講座は、題して「芹澤恵の翻訳玉手箱 第一話――翻訳は深い読書――」。芹澤恵さんを講師として「洋書の森」にお招きするのは初めてで、どんな講義を受けられるのだろうと私たちスタッフも期待に胸をふくらませ、当日を迎えました。

課題は、アメリカの新人作家Josh Denslowの初短編集、Not Everyone Is Specialに収められた一編Consumptionです。この短編はなんとたった1ページ! それでもきちんと「落ち」があるショートショートともいうべき作品です。事前に提出された20名の方の訳文が受講生に配られ、それをもとに講師が解説していくといったスタイルの講座でしたが、芹澤先生は立ったままお話を始められたかと思うと、笑顔を浮かべながら自ら受講生の方々にマイクを向けて質問して回られました。皆さんはいきなり当てられて戸惑いつつもしっかり答えてくださって、意見や感想が活発に飛び交うライブ感あふれる講座となりました。

芹澤先生のお話はどれも、「玉手箱」に大切にしまっておき、時々開けては実践したくなるような貴重なものばかりでしたが、中でも心に残ったのは、「短編の場合は、訳者と同じ絵を読者に描いてもらえるように、なるべく早い段階で細かく情報を与えるほうがいい」といった言葉です。また、登場人物がどんなキャラクターか自分なりにイメージしたうえで訳すことの大切さを説かれていたのも印象的でした。

タイトル Consumptionをどう訳せばいいか考えるのも、短編をまるまる訳すといった今回の課題ならではの面白い試みでした。本文にもこの言葉は出てくるため、皆さん、工夫されたようで、先生が、訳を提出されていない方にも「どう訳した?」と尋ねられると、いろいろな邦題案が返ってきました。

今回は休憩なしのノンストップでしたが、受講生の方々はいつ芹澤先生に指されるか緊張を保ちながらも、先生の優しいお人柄もあって、和やかな雰囲気の中、講義は進んでいき、あっという間の2時間でした。ある受講生の方から「今日の講義は読書会みたいだった」との感想を個人的にうかがったのですが、まさに今回の講座のサブタイトル「翻訳は深い読書」どおりの内容となったのではないかと思います。

講座の後には、出版クラブビル近くのお店で交流会が開かれました。「皆さんと気軽に話せるようにできれば立食形式にしてほしい」との先生のご希望をかなえるべく、ビュッフェスタイルでおこなってみたところ、参加された方々は和気あいあいと楽しく過ごされていたようです。

芹澤先生、ほんとうにありがとうございました。早くも「翻訳玉手箱 第二話」を開催してほしいとの声が多く上がっていますので、どうぞよろしくお願いいたします。参加してくださった皆さまにも改めてお礼申し上げます。

次回の「ウィークエンドスキルアップ講座」は、12月7日(土)15時より開催いたします。講師にお迎えするのは、たびたびご登壇いただいている原田勝先生です。講座の後には交流会を兼ねたクリスマス会を開けたらと考えておりますので、皆さん、ご予定を空けてお待ちくださいね。


「ボジョレーの夕べ」レポート

2017年12月08日 13時03分08秒 | 魔女のソフィー

ボジョレーヌーボーが解禁された翌々日、洋書の森にとって初めての試みとなる〈ボジョレーの夕べ〉が開催されました。河野万里子先生から、ご訳書『星の王子さま』と『青い麦』をベースにした、フランスの“愛”についてのお話を伺うことができるうえ、おつまみ付きでボジョレーを味わえる。こんな魅力的なイベントのお手伝いができるとあって、数日前から、酒好きの、もとい、お酒をたしなむ私ソフィーは、心躍らせながら『星の王子さま』と『青い麦』をしっかり再読して備え、当日は魔女たちの誰よりも早く会場に着きました。会場となる出版クラブの「パピロス」というすてきな部屋には、すでに白いテーブルクロスの敷かれた円卓が用意され、その上にはワイングラスとフォークが並べられていました。そんないつものセミナーとは違った雰囲気の中、河野先生のお話は始まりました。

   

幼いころから海外の絵本や児童文学がお好きだった河野先生は、高校生の後半になってからは、自立した女性が描かれたサガンの小説を始めとしたフランス文学に惹かれるようになり、大学時代に『星の王子さま』の原書と出会ったそうです。「『星の王子さま』には、心のなかの宝箱に入れたいすてきな言葉がたくさん詰まっているんです」と目をきらきらさせて語られるお姿が印象的でした。王子さまは作者サン=テグジュペリの分身だと考えられていて、キツネやバラの花にもモデルとなる女性が存在したとか、サン=テグジュペリは美男子ではないものの、笑顔がチャーミングで女性にもてたといったお話も興味深かったです。

また、そもそもどうしてフランスは恋愛大国と呼ばれるようになったかについて、わかりやすく説明してくださいました。17世紀になって、「太陽王」ことルイ14世の治世下、平和な時代を迎えたフランスでは、貴族は宮廷で優美な暮らしを送り、ギャラントリー(貴婦人への優雅な応接法、ひいては趣味的恋愛)を謳歌するようになったこと。第一次世界大戦のころまでは、結婚は家と家との財産の移動であると考えられ、そうした財産のある階級では恋愛結婚はまず存在しなかったが、結婚して跡継ぎさえできれば別の相手と自由に恋愛してかまわないという独特の結婚制度がまかり通っていたこと。19世紀後半、「ベル・エポック」と呼ばれる時代を迎え、高級娼婦がもてはやされ、華やかな生活を送るようになると、上流階級の男性はこうした高級娼婦とつきあうことが一種のステータスのようになったこと。この三点が、フランスが恋愛大国と呼ばれるようになったおもな背景だそうです。

こんな独特の恋愛事情を抱えていたフランスでは、意外にも、コレットが1923年に『青い麦』を発表するまでは、若い男女の恋が語られる小説というものはなかったそうです。このコレットという作家は、恋多き女で、波瀾万丈の人生を送り、その経験をもとに、後になって元高級娼婦と青年の恋物語『シェリ』を描いたそうですが、河野先生は、現在、『シェリ』の新訳に取り組んでいらっしゃる最中で、この作品についても少し触れてくださいました。

一時間以上ものあいだ、笑顔を絶やさずにこうしたお話をよどみなく語られた河野先生に、参加者の皆さんも私たちスタッフも、すっかり魅了され、時を忘れました。その後はボジョレーで乾杯し、歓談の時間となりました。ボジョレーに続いて、「やまふじぶどう園」のワイン3種類も振る舞われました。魔女のひとりの知人で、翻訳をしながらご家族でワイナリーを経営していらっしゃる方からの差し入れです。今年の新種を含めたワインはそれぞれに果実味豊かでおいしく、ワイン通の方にも満足していただけたのではないでしょうか。おつまみはワンプレートに美しく盛られたオードブルで、ワインの味をいっそう引き立ててくれました。フランス文学に、ワインに、楽しいおしゃべり。いつまでも続いてほしいようなぜいたくなひとときでした。

 

河野先生、ほんとうにありがとうございました。〈ビールの夕べ〉もぜひ実現させたいと思っていますので、その際はよろしくお願いいたします。参加してくださった皆さまにも心よりお礼申し上げます。今回の新企画、いかがだったでしょうか。これからもこうした楽しく学べるイベントを企画していきますので、どうぞご期待ください。


「夏の翻訳文化祭 2017」レポートPartⅡ

2017年08月29日 16時53分06秒 | 魔女のソフィー

魔女のソフィーです。

8月19日、26日と2週にわたって「夏の翻訳文化祭」が開催されました。洋書の森にとっては初めての試みでしたが、参加してくださった皆さんがとても楽しそうにしている姿を見て、スタッフ一同ほっと胸をなで下ろしました。でも誰よりも楽しんでいたのはこの私だったかもしれません。講師の方々は皆さん魅力にあふれ、あれから2週間ほどたった今も、なんて幸せなひとときだったのだろうと思い出すくらい充実した2日間でした。私からは、26日に行われた翻訳家のお二方の講演についてご報告します。

まずは夏目大さんの講演について。

これまで数多くのノンフィクションを訳されてきた夏目さんが、初めて手がけられたフィクション『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』について話してくださいました。この本を訳すにあたった経緯や、訳すうえで工夫した点などを語ってくださったのですが、意外だったのは、「フィクションもノンフィクションもあまり変わりはない。難しいのは何でも一緒なので、苦労は一緒」というお言葉でした。続いてのお話は、出版翻訳者になるまでの道のりについて。英文科出身だから文学の翻訳が向いているのではと思ったけど、コンピューターの会社で勤めていた経験を活かしたほうがいいかと考え、縁もあってプログラミング言語の訳書でデビューを果たしたが、それから20年かかってようやく文学の訳書を出すことができたと感慨深げなご様子でした。夏目さんの絶妙なトークに終始笑いの絶えない講演でしたが、特に面白かったのは、「○○はできますか」と訊かれたら食い気味に「できます」と答える訓練をしたとのお話です。これならすぐにでも実践できそうですね。

そして、今年の2月にもご登壇いただいた金原瑞人さんの講演について。

印刷や本の変遷から始まったかと思うと、図書館の歴史へと話題が移り、図書館には古い歴史があるが、19世紀から20世紀にかけて、児童書が多数出版されるのに合わせて初めて子ども室が設置されるようになり、日本では1990年代になってようやくYA(ヤングアダルト)コーナーができるようになったと語られ、それからはYA文学の変遷にまつわる話をご披露いただきました。そうして淀みなく語られる金原さんのお話に、参加者の皆さんは魔法にかかったかのように聞き入っていらっしゃいました。最後には、とにかく原書をたくさん読むこと、今は売れていないジャンルでも可能性があるからネットや書評雑誌などを通じて本を探すよう努めるといい、自分に合ういい本が必ずあるからと翻訳についてのアドバイスもしてくださいました。それと耳が痛かったのは、「日本語だけ読んで誤訳とわかるような誤訳をしてはいけない」とのお言葉です。肝に銘じておかなくては! お話が終わった後には参加者からの質問も活発に出て、共訳から詩の翻訳までさまざまな質問に快く答えてくださいました。

講演終了後にはお楽しみの交流会が開かれ、講師の皆さんも進んで参加者の輪に加わって、気さくにお話ししてくださいました。宴もたけなわの中、「そろそろ失礼します」とおっしゃる金原さんをスタッフが慌てて全力で引き留め、皆さんそろって恒例の記念撮影を行い、「夏の翻訳文化祭」は無事に幕を閉じました。 講師の皆さん、ご参加いただいた方々、そして事務局の皆さん、ほんとうにありがとうございました。皆さんのおかげでこんな夢のような企画が実現しました。いつか「秋の翻訳文化祭」もできたらいいなあ、と私たち魔女と魔王の夢はまだまだ続きます……。98日改)