わたしたちの洋書の森

「洋書の森」のとっておきの話をご紹介

昨年の活動報告

2021年01月14日 17時17分21秒 | 魔女のメリー

「洋書の森」を運営する日本出版クラブでは、会報『出版クラブだより』を隔月で発行しています。

このたび、新年号で「洋書の森」の活動が紹介されました。第一面の記事「巣ごもり生活は本と向き合うチャンス」で日本出版クラブの活動報告として、野間省伸会長が洋書の森のオンラインセミナーに触れています。関連する部分を抜粋して引用します。

外出も、人と会う事も憚られるなか、日本出版クラブの活動も大幅な変更を余儀なくされております。そんな重苦しい雰囲気のなか、一筋の光明が射したのは、オンラインセミナーが高い評価を受けたことでした。

 昨年919日に「洋書の森セミナー 文芸翻訳・(原文ママ)字幕翻訳~ふたつの顔をもつ物語をめぐって」というタイトルで文芸翻訳家と字幕翻訳家を講師に迎えてオンライン対談を開催しました。

 パネラーのひとりは、酒寄進一さん。ドイツの人気作家・フェルディナント・フォン・シーラッハ著のミステリー小説「コリーニ事件」(東京創元社)の翻訳家です。もうひとりは同作の映画化に当たり、字幕翻訳を担当された吉川美奈子さんです。原作の文芸翻訳家と字幕翻訳家の「翻訳対決」は意外と実施されたことがない好企画。緊張感にあふれ、見どころ満載のイベントとなり、日本国内の参加はもとより、ドイツ・イタリア・フランス・アメリカ・アルゼンチンなど海外からのアクセスもあり140名を超える参加者で大盛況となりました。

 コロナがなければ今回のようなオンライン企画は生まれなかったかもしれません。何事も前向きに取り組むことが大切だと改めて感じています。

(中略)

1128日には夏目大氏を講師に迎え、オンラインセミナーの第2弾「洋書の森ウィークエンドスキルアップ講座 一人の訳者ができるまで」を開講しました。海外から10名の参加者も含めて135名の方々にご参加いただきました。参加者たちからは「遠隔地からでも気軽に参加できる」、「パソコンのモニター画面が、とても見やすかった」「講師が身近に感じられた」など、概ね好意的な評価をいただきました。

出典:出版クラブ会報 No.603 『出版クラブだより』(2021年1月1日発行)

「洋書の森」は2021年1月10日で創設15年目を迎えました。この場を借りて、日頃から「森」の活動をご理解・ご支援してくださっているみなさまにあらためて感謝いたします。これからも、「洋書の森」は現状を受け入れながら、無理のない範囲で「翻訳や出版に関心のある人たちのためのコミュニティサロン」としての活動を続けていきます。


クリスマス読書会『夜ふけに読みたい 神秘なアイルランドのおとぎ話』レポート

2021年01月01日 17時46分32秒 | 魔女のメリー

洋書の森「おしゃべりサロン」主催のクリスマス読書会が12月19日に開催されました。課題本は『夜ふけに読みたい 神秘なアイルランドのおとぎ話』(平凡社)です。吉澤康子さん(翻訳)、和爾桃子さん(翻訳)、長島真以於さん(監修)、下中順平さん(担当編集)をゲストにお迎えして、参加者とスタッフを含めて約20名あまりでの開催となりました。

「おしゃべりサロン」の読書会では課題本の訳者、ときには担当編集者もお迎えして、本の感想や翻訳について語り合います。今回は参加者の方々の感想を聴き、質問を投げかけていただきながら、訳者、監修者、編集者という異なる視点から一冊の本について話していただいたので、物語の世界が一層身近に感じられるようになりました。
参加者からは「現実世界と妖精の世界がとても近く、単純ではない深い世界観を感じる」、「敵でもあり味方でもあるフィンとゴルの関係がおもしろい」、「戦車に乗って現れた女性に一目惚れするとは! その価値観が興味深い」、「翻訳がとても読みやすかった。1巻もぜひ読みたい」など、さまざまな感想が挙がりました。こんな読み方もあったのかと気づかされ、共感することができたのは読書会ならではです。
翻訳にあたってはアイルランドの固有名詞の読み方が難しかったこともあり、専門家である長島さんの助言が必須だったそうです。そのため、しっかり確認していただいたので、資料としても価値のある本になった、とも。これは原書(James Stephens, Irish Fairy Tales)と訳を比較してみなくては、と好奇心をかきたてられます。長島さんは物語の背景となるアイルランドの歴史や神話、言葉などを解説してくださったほか、文化というものをどう考えていけばよいかも教えてくださいました。また、惜しみなく資料を提供してくださったことには感激しました。編集者の下中さんは本書を子どもたちにも読んでほしいと思っていたところ、児童文学評論家の赤木かん子さんが自身のHPで本書を詳しく紹介してくれていて、とても嬉しかったというお話をしてくださいました。(児童文学評論家【赤木かん子】Official Siteよりhttp://www.akagikanko.net/rensai/16392/)
物語について語り合い、ゲストの方々のお話を聴いて、改めてアイルランド文化の魅力に気づかされました。また、アイルランドの文学や神話の世界をもっと深く知りたくなりました。読書会を終えて、参加者の方々より感想が寄せられていますが、どのメッセージからも充実した楽しいひとときを過ごしていただけたことがうかがえます。

参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。吉澤さん、和爾さん、長島さん、下中さんには、このような贅沢な時間を過ごすことができたことに心より感謝申し上げます。

※同シリーズは本書のほかに『夜ふけに読みたい 不思議なイギリスのおとぎ話』、『夜ふけに読みたい 奇妙なイギリスのおとぎ話』、『夜ふけに読みたい 数奇なアイルランドのおとぎ話』があります。2021年1月に発売予定の『夜ふけに読みたい 動物たちのグリム童話』も合わせてお楽しみください。

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2020年、洋書の森では宮脇孝雄さん(2月)、酒寄進一さんと吉川美奈子さん(9月)、夏目大さん(11月)をお迎えして講座を開くことができました。毎月一度のおしゃべりサロン、クリスマス読書会も開催できました。一方で、感染拡大により企画を延期することもありました。2月の講座と1月、2月のおしゃべりサロン以外は、すべてオンラインによる開催となりました。
コロナ禍による制限はありますが、その中で洋書の森では皆様に喜んでいただけるような講座やイベントを企画していこうと考えています。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

昨年は洋書の森を訪れてくださって、ありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
この一年が穏やかな良いお年になりますようにお祈り申し上げます。