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フィクション作品の「レジュメを書こう、レジュメを読もう!」レポート(2023年4月24日)

2023年05月01日 08時07分04秒 | ボランティアスタッフ 鈴木豊雄

 洋書の森「おしゃべりサロン」が主催するレジュメ勉強会が2023年4月23日(日)にオンラインで開催された。3回目となる今回、初めてフィクション作品にしぼって募集した。
 参加者全員の自己紹介のあと、まずはレジュメ提出者にレジュメの一部を読み上げてもらい、続いて各自が画面に映し出されたレジュメを5分間ほど黙読。そのあとで意見や感想を自由に述べてもらう手順で進めた。以下におおまかな発言の流れを追う。
 提出されたレジュメのうちの1点は縦書きだった。縦書きのレジュメはあまり一般的ではないという参加者の所見あり。対して、翻訳書が縦書きになるなら理にかなっているのでは? いや、やはり翻訳書のレジュメにはアルファベット(原文)を書き込むことが多いので、横書きにしたほうが合理的かも……といったやり取りで進行。
 今回提出された3点のうち、1点には試訳が添えられていた。レジュメは試訳をつけると、たしかに効果的なこともある。その場合は原書のどの部分を試訳したらよいか? 本というのは冒頭から読むものだから、やはり序章とか第1章とかが読みたいとある編集者から言われたことがある、と参加者の一人が発言すると、その一方で、私なら作品中の最も訴えかけている部分を選んで訳すという意見もあった。
 著者略歴が書かれていないレジュメが1点あった。著者について知りたいと思うのは、どの編集者も同じであり、レジュメには欠かせない項目だと考えるのが一般的ではないないだろうか、というのが大方の見解だった。ほかにどんな作品を書いているか、出生地、学歴、受賞歴などを含めてある程度の背景を説明したほうがよいだろう。
 あらすじは書いたほうがよいことはわかった。ではどのくらいの長さにすべきか。それは本の内容、提出先(出版社または編集者)などによるのではないかとの応え。さらに言えば、梗概のほかに惹句もつけ加えたほうが効果的だとする意見も。内容については、包括的なものがよいのか、あるいは作品の中からテーマを見つけて、それに沿ったものにしたほうがよいのか。テーマがあったほうがインパクトがあって編集者に訴えやすいのではないかという意見が多数だったようだ。
 ミステリなどのレジュメの場合、あらすじで結末までを書いてしまったら“ネタバレ”になってしまうと懸念するが、皆さんはどう思うか?という質問があり、これを受けて次のような主旨の応答があった。レジュメを読んでもらう相手は読者(訳書を読んで楽しんでもらう人)ではないこと。相手は編集者(訳書を出版するかどうかを判断す人)なのだから、洗いざらいを書くべきだろう。読者に楽しんでもらうための技量を発揮するのは、レジュメ作者ではなく、翻訳者の選定も含めて編集者がやる仕事なのだから。
 という感じで、丁々発止、とまではいかなかったが、活発な質疑応答、意見交換が続いた。心配していた“魔の沈黙”シーンに遭遇することもなく、滞りなく終了した。この調子を保ったまま、次回以降も引き続き年に3、4回のペースでレジュメ会を開催していきたいと考えている。