乗用車メーカー・サーブ(SAAB)は、GMが廃業を決定したものの、先行きはまだ定かではない。GMがオランダのスポーツカー・メーカーであるスパイカー・カーズとの売却交渉を打ち切り、廃業決定に踏み切った理由は、スパイカー・カーズの資金力や長期的な経営力を疑問視していたからだと言われる。しかし、廃業決定のあともスパイカー・カーズがGM側により有利な新しい条件を提示したため、現在も売却協議が再び続けられている(特に、GM側が技術流出を恐れていたロシア新興財閥をグループから外した)。
しかし、他方では廃業決定にもとづく清算手続きも始められている。そして、さらに興味深いことにサーブ車の新車生産も再開されている。クリスマスから年末にかけて休暇に入り、生産活動がストップしていたものが再び始められたのだ。だから、下請けの部品企業からは部品が続々と運び込まれるようになっている。つまり、廃業にするといってもすぐに生産活動を停止するわけではないようなのだ。精算人が停止を命ずるまで、あと1ヶ月ほどは続けられるのだという。実際に廃業となった場合、生産された車はどうなり、部品メーカーに対する代金の支払いはどうなるのだろうか?
――――――――――
さて、サーブの本拠地があるトロルヘッタン(Trollhättan)だが、サーブがなくなればその工場で働く従業員3500人と部品メーカーで働く4500人の職がなくなると言われている。大した数ではないかもしれないが、これらの仕事の多くがトロルヘッタンやその周辺地域にあることを考えれば、人口が46000人ほどのトロルヘッタンにとっては大きな痛手であることに変わりはない。
しかし、トロルヘッタンにあるのは暗いニュースだけではない。実は、この町にはボルボ・グループの航空エンジン部門の工場がある。ボルボ・グループとは、乗用車部門(フォードが所有)を除く、トラック・バス部門、航空エンジン部門、船舶エンジン部門などからなっている。
そして、この航空エンジン部門は景気が良いのだ。
その理由の一つは、ボーイング社の最新鋭機ドリームライナー(ボーイング787)だ。現行のモデルより燃費を向上させたこの最新モデルの開発には、当初の予定よりも2年の年月がかかったものの、最初の飛行実験が昨年末から開始されており、2010年の秋ごろには製品の第一号が、最初の発注者である全日空(ANA)に引き渡される見込みだという。
そして、この最新鋭機のエンジンの部品を作っているのが、トロルヘッタンにあるボルボ航空エンジン部門なのだ。
いや、正確に言えば、ドリームライナーにはGE社製のGEnxというエンジンか、ロールスロイス社製のTrent 1000というエンジンを搭載することが出来るのだが、発注者がいずれのエンジンを選ぶにしろ、両方のエンジンに欠かせない部品を生産し、納入しているのがボルボなのだ。
このドリームライナーには、既に56カ国から合計840機の注文が入っており、第一号機に続いて、生産が順次行われていく。エンジン部品を生産するボルボは、交換のための部品の生産も含めて、今後30年から40年にわたって400億から500億クローナの売り上げが期待できると見ている。
ちなみに、航空機市場ではボーイング社のドリームライナーだけでなく、エアバス社の超ジャンボ機であるA380も注目されており、両社が熾烈な争いが繰り広げているが、実はこのエアバス機のエンジンGP7000(GE社やPratt&Whitney社などからなるEngine Alliance製)やTrent 900(ロールスロイス社製)の部品を生産しているのもボルボであるため、競争の勝敗がどのような展開になっても、ボルボとしては安心していられるようなのだ。
また、このエアバス機のエンジンでは、軽量化のための技術開発がボルボにおいて着々と進めれられており、今後もこの業界では競争力を維持していくものと見られている。
しかし、他方では廃業決定にもとづく清算手続きも始められている。そして、さらに興味深いことにサーブ車の新車生産も再開されている。クリスマスから年末にかけて休暇に入り、生産活動がストップしていたものが再び始められたのだ。だから、下請けの部品企業からは部品が続々と運び込まれるようになっている。つまり、廃業にするといってもすぐに生産活動を停止するわけではないようなのだ。精算人が停止を命ずるまで、あと1ヶ月ほどは続けられるのだという。実際に廃業となった場合、生産された車はどうなり、部品メーカーに対する代金の支払いはどうなるのだろうか?
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さて、サーブの本拠地があるトロルヘッタン(Trollhättan)だが、サーブがなくなればその工場で働く従業員3500人と部品メーカーで働く4500人の職がなくなると言われている。大した数ではないかもしれないが、これらの仕事の多くがトロルヘッタンやその周辺地域にあることを考えれば、人口が46000人ほどのトロルヘッタンにとっては大きな痛手であることに変わりはない。
しかし、トロルヘッタンにあるのは暗いニュースだけではない。実は、この町にはボルボ・グループの航空エンジン部門の工場がある。ボルボ・グループとは、乗用車部門(フォードが所有)を除く、トラック・バス部門、航空エンジン部門、船舶エンジン部門などからなっている。
そして、この航空エンジン部門は景気が良いのだ。
その理由の一つは、ボーイング社の最新鋭機ドリームライナー(ボーイング787)だ。現行のモデルより燃費を向上させたこの最新モデルの開発には、当初の予定よりも2年の年月がかかったものの、最初の飛行実験が昨年末から開始されており、2010年の秋ごろには製品の第一号が、最初の発注者である全日空(ANA)に引き渡される見込みだという。
そして、この最新鋭機のエンジンの部品を作っているのが、トロルヘッタンにあるボルボ航空エンジン部門なのだ。
いや、正確に言えば、ドリームライナーにはGE社製のGEnxというエンジンか、ロールスロイス社製のTrent 1000というエンジンを搭載することが出来るのだが、発注者がいずれのエンジンを選ぶにしろ、両方のエンジンに欠かせない部品を生産し、納入しているのがボルボなのだ。
このドリームライナーには、既に56カ国から合計840機の注文が入っており、第一号機に続いて、生産が順次行われていく。エンジン部品を生産するボルボは、交換のための部品の生産も含めて、今後30年から40年にわたって400億から500億クローナの売り上げが期待できると見ている。
ちなみに、航空機市場ではボーイング社のドリームライナーだけでなく、エアバス社の超ジャンボ機であるA380も注目されており、両社が熾烈な争いが繰り広げているが、実はこのエアバス機のエンジンGP7000(GE社やPratt&Whitney社などからなるEngine Alliance製)やTrent 900(ロールスロイス社製)の部品を生産しているのもボルボであるため、競争の勝敗がどのような展開になっても、ボルボとしては安心していられるようなのだ。
また、このエアバス機のエンジンでは、軽量化のための技術開発がボルボにおいて着々と進めれられており、今後もこの業界では競争力を維持していくものと見られている。
真綿で首を絞められているような従業員がとっても可愛そうです。
ボルボは、いろいろな経過をえながらも、車種を増加して高級者のイメージを保つ一方、若い家族向けの購入しやすい車種と価格を提供してきました。
知人でサーブの技術者がいますが、彼は会社の幹部は頑固なほど昔からのサーブのイメージ保護に務め、時代の流れに併せて、もっと若者に受ける自動車の開発を提案して来ても受け入れられず、赤字の車種に固守してきた結果が、今こうなってきたのだと言っていましたが、ある程度当たっているのではないかと思います。
韓国や他の国から安い価格の、いろいろなデザイの自動車が販売され過酷な競争社会に生きていくための対策が遅れていたような気がします。
私個人的には、ここ数年サーブを見てきて倒産しても当然なことだと思います。
職を失う多くの社員の方達、特に結婚して家を購入した人たちの将来を思うと、とても気の毒ですが多くの社員が語るように、ある程度覚悟していたのではないかと思います。だんだんとスウェーデンの会社が生産費の安い外国に移動し、この国を支えてきた工業が消えていくのはとても寂しい限りです。
例えば、サーブはアメリカ市場向けに小型車を「開発」し9-2Xと名付けて販売したことがあったのですが、これは実はサーブ独自の技術ではなく、日本のスバルのインプレッサをそのまま使い、「サーブ」という名前とロゴを付けただけのもので、しかも生産は日本の富士重工の工場という、何ともサーブとは名ばかりのもので、結局大失敗でした。
同様に9-7Xという大型車も、GMが既に開発していたモデルを「塗り替え」ただけの代物で、サーブとは名ばかり。
一方、サーブの本拠地トロルヘッタンでは独自の技術開発が着々と行われており、四駆型の独自のモデルがほぼ完成していたのですが、GMが商品化しないことに決定。その次のモデル9-5の開発でも、やっと商品化のめどがついたと思った矢先に、GMはその技術をオペルの新モデルに導入し、そのモデルをサーブより先に発売してしまいました。せっかくのサーブの技術がオペルの名前で発売され、サーブ自身のブランド名の向上につながらなかったということになります。
GMの世界戦略の中では、上記のように「サーブ」車を日本の工場に作らせたり、逆に別ブランドの車をサーブの工場で作らせたりと、系列グループ全体としての経営が優先されていたようで、そのような戦略の中ではサーブ独自のよさを生かしたり、その技術開発を奨励するような重点投資が行われず、結局、「ごく一部の変わり者が『サーブ』という響きにつられて買うモデルを、なるべく安く作って、あるいは、既にあるモデルを他所から持ってきて『サーブ』として売ればよい」という感じで脇役にされてしまったのです。
GMがサーブを部分的に買収した1990年当時、サーブは2つのモデルを持っており、あわせて93000台生産していたのですが、それから20年近くが経った2008年も、サーブのモデルは2つだけで、生産台数もほとんど変わっていませんでした。サーブの経営の失敗は、所有者であるGMの意欲の問題でもあると思います。
ただ、たとえサーブが廃業になっても、エンジニアがたくさんいますので、彼らが新しい事業を起こしたり、別の企業が誘致されてその企業に貢献したりと新しい雇用が必ず生まれてくるでしょう。
現に、スウェーデン西部には失業したサーブのエンジニアを欲しがるような産業が存在しています。今回紹介したボルボの航空エンジンもその一例だと思います。
70年代の造船危機でも、90年代初めの経済危機でも、おそらく経済界全体が「この世の終わりだ」と絶望感に苛まれていたと思いますが、そえから10年、20年、30年と時間が経っていくうちに経済がどのように変化していったかを今から振り返れば、どうにかなるんだ、と楽観的になれるでしょう。