スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

世界最北のIKEA開店

2006-11-16 06:06:49 | コラム
世界を舞台に拡大を続けるIKEAだが、今日、スウェーデン国内で新たな店舗が開店した。この新店舗、「世界で最北に位置するIKEAの店舗」なのだ。場所はHaparanda(ハパランダ)市。スウェーデンの最北部で、東にはすぐフィンランド国境が迫っている。人口は5000人弱。周囲の市もかなり小さい。Luleå(56000人)、Piteå(22000人)といったすこし大きい市が比較的近くにあり、300km以上離れたところにやっとKiruna(19000人)がある。現在、日は非常に短く、早くも氷で凍てつく暗黒の世界だ。こんなところに大きな店舗を作ったIKEA。拡張の勢いに、気でも狂ったのか?

スウェーデン北東端のHaparanda(北極圏まであとわずか)


いやいや、いくら過疎の辺鄙な町といえども、実は国際的な町でもある。Torneåという川を東に越えればすぐフィンランド、北西に向かってヨーロッパ国道E10を走ればノルウェーのナルヴィーク、北に向かってE8を走ればこれまたノルウェーのトロムソー。フィンランド北部を跨げば、ロシアにも行ける。

Haparanda(ハパランダ)なんて、耳慣れない名前。もちろんスウェーデン語ではなく、フィンランド語の地名が起源だ。アジア系(ウラル・アルタイ)であるフィン人とゲルマン語系であるバイキングが以前から交じり合ってきた場所。今でもここに住むスウェーデン人の中には、家ではフィンランド語(の方言)を話し、学校でスウェーデン語を学ぶという人もたくさんいるようだ。

第1次世界大戦では、ヨーロッパ本土が戦場となった。Haparandaはヨーロッパの西と東を結ぶ唯一の架け橋となり、スパイや密売人の楽園となったという。捕虜となったトルコ兵、ドイツ兵、ロシア兵の交換もここで行われたらしい。

かつては、そんな国際舞台だったHaparanda。この新しいIKEAにも周辺のスウェーデン人だけでなく、隣国のフィンランド人、ノルウェー人、そして、ロシア人までもが訪ねてくれると見込まれているのだ。IKEAのブランドはこれらの人々にももちろん魅力がある。特に、スウェーデンよりも物価が3割は高いといわれるノルウェーの人々が挙ってやって来てくれるのではないかと期待している。 だから、IKEAの周囲にはSystembolaget(スウェーデン国営酒店)を始めとするショッピングセンターも立ち並ぶ予定だ。

ニュースからの映像(IKEA創設者Ingvar Kampradも登場)

Haparandaの地元経済にもとても重要な意味を持つ。70年代以降は過疎化が深刻となり、若者はこぞって南下して行った。このIKEAの進出によって、少なくとも1500人の職が生まれると言う。小さな町だけに、インパクトは大きい。このアイデアを持ちかけたのはHaparanda市長(相当)。彼がIKEAの創設者Ingvar Kampradを説得したという。

さて、成功するのか・・・?

IKEAスウェーデンのホームページから

世界でもっとも国際的なIKEAへようこそ!


ようこそ!
(上から、スウェーデン語・フィンランド語・ロシア語・サーメ語?・ノルウェー語)



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (SHOKO)
2006-11-17 01:45:29
国境を越えて、自国でも買える物を買って、帰ってくるというのは、日本じゃ考えられないことですね。国境を足でまたげるというのは、大陸ならではですね!でも、地図を見ると、ロシアやノルウェーの人には遠そうな気がするんだけど・・・。
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Unknown (Yoshi)
2006-11-20 08:42:45
ちょっと遠くまでドライブ、という感覚で行く人も多いでしょうね。Haparandaは、ホテルの新設もあいつでいるとか。
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Unknown (Shoko)
2006-11-24 23:57:10
IKEAを軸とした都市開発ってところかしら?ちなみに、IKEAが今度店舗をOpenするわが町・神戸も雇用の創出、夜は教習所代わりになる、かの人工島を盛り上げよう(同じくショッピングセンターができる)!ってところで、IKEAが、土地の売却相手にきまったようです。IKEAとしても、世界的ブランドとしての価値をよりあげて、街づくりの核となる企業になるっていう戦略なのかしら?暗黒の街がどう変わるか、今後が興味深いでしょうね。
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