キュウリが曲がっているのはそもそも当たり前のことなのだけど、EUは改めて「曲がっていてもOK!」という決定を下そうとしている。何の話かって?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/aa/ef062b389d8c90fad56bbfe58852eb07.jpg)
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2004年3月から8月までの半年間、私はOSCE(ヨーロッパ安全保障協力機構)という国際機関(日本は非加盟だがオブザーバー参加)のクロアチア支部でインターンシップをしていたことがある。
ちょうどその時、正確にいえば2004年5月1日にある歴史的なことが東欧では起こった。ポーランドやチェコなど東欧諸国を始めとする10カ国が新たにEUの加盟国となったのである。
クロアチアはというと、将来のEU加盟の可能性を協議する交渉を当時開始したばかりで、その10カ国には含まれていなかった。一方、クロアチアと同じ旧ユーゴスラヴィア諸国の中では一番西側にあるスロヴェニアがこの時、早くもEU加盟を果たした。そのため、クロアチアも早くEU加盟を達成すべきという機運が国内で感じられていた。
一方で、EU加盟に対する反発もかなり強くあった。一番大きな理由は、EU側がクロアチアが加盟するための条件として要求していた、クロアチア軍の元将校の引渡しだった。(この将校は、90年代前半のユーゴ紛争中にクロアチア軍の司令官を務めていたが、国内のセルビア系住民の殺害などの戦争犯罪に責任を持つとされ、オランダ・ハーグにある旧ユーゴ国際戦犯法廷(ICTY)が起訴状を出していた。しかし、国内では彼を英雄視する傾向が強かった。ちなみに彼は2005年にスペインで逮捕されている。)
そんな議論の傍らで、こんな理由によるEU反対の声も上がっていた。
「EUに加盟してしまうと、曲がったキュウリは生産できなくなる。毎年、美味しいキュウリを私たちに提供しているクロアチアの農村地帯は大打撃を受ける!」
そんな馬鹿な話があるのか、と最初は思ったけれど、EUは本当に「EU内で販売するためには、キュウリはまっすぐでなければならない」という規定を設けていたのだ。様々な形のキュウリが市場に出回ると、商品の規格がまちまちになってしまい、EU内での自由な競争を阻み、統一市場の形成を阻害するから、というのが、理由だった。
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よく考えてみると、スウェーデンの店先に並ぶキュウリは、すべてまっすぐだ。しかし、そんな規定があるなんて、クロアチアでそんな議論を聞いた時に初めて知ったのだった。
このほかに、トマトの形だとか、バナナの曲がり方とか、ニンジンは真っ直ぐでなければならない、とか、玉ねぎは左右対称でなければならない、などなど、34の果物・野菜に対して、細かい分類規定があった。そして最良クラスに分類されたものだけが優先的にEU市場で取引されていた。規格を満たしていない生産農家は、EU市場に売ることが難しいし、EUからの農業補助金も得にくかった。
EU委員会は、34品目に与えられた分類規定を10品目にまで減らすという。規定が今後も残るのは、リンゴ、洋ナシ、かんきつ類、桃、トマトなどらしい。(なるほど、丸いものだけね!)
無事決定がなされれば、2009年7月1日から実施されるという。
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私は、EUもヨーロッパの発展のためによい側面をたくさん持っていると思うのだけど、その一方で、とかく官僚主義、というか必要以上に細かい規定をブリュッセルでたくさん作って、加盟国に従わせる傾向があるのが大きな問題だと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/ef/b00ca2ab1ccabda0b8328c14efe42ecb.jpg)
規格通りの野菜がきれいに並んで機械にかけられている光景を見ると、
これはもはや自然の産物ではなく工業製品だという気もしてくる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/aa/ef062b389d8c90fad56bbfe58852eb07.jpg)
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2004年3月から8月までの半年間、私はOSCE(ヨーロッパ安全保障協力機構)という国際機関(日本は非加盟だがオブザーバー参加)のクロアチア支部でインターンシップをしていたことがある。
ちょうどその時、正確にいえば2004年5月1日にある歴史的なことが東欧では起こった。ポーランドやチェコなど東欧諸国を始めとする10カ国が新たにEUの加盟国となったのである。
クロアチアはというと、将来のEU加盟の可能性を協議する交渉を当時開始したばかりで、その10カ国には含まれていなかった。一方、クロアチアと同じ旧ユーゴスラヴィア諸国の中では一番西側にあるスロヴェニアがこの時、早くもEU加盟を果たした。そのため、クロアチアも早くEU加盟を達成すべきという機運が国内で感じられていた。
一方で、EU加盟に対する反発もかなり強くあった。一番大きな理由は、EU側がクロアチアが加盟するための条件として要求していた、クロアチア軍の元将校の引渡しだった。(この将校は、90年代前半のユーゴ紛争中にクロアチア軍の司令官を務めていたが、国内のセルビア系住民の殺害などの戦争犯罪に責任を持つとされ、オランダ・ハーグにある旧ユーゴ国際戦犯法廷(ICTY)が起訴状を出していた。しかし、国内では彼を英雄視する傾向が強かった。ちなみに彼は2005年にスペインで逮捕されている。)
そんな議論の傍らで、こんな理由によるEU反対の声も上がっていた。
「EUに加盟してしまうと、曲がったキュウリは生産できなくなる。毎年、美味しいキュウリを私たちに提供しているクロアチアの農村地帯は大打撃を受ける!」
そんな馬鹿な話があるのか、と最初は思ったけれど、EUは本当に「EU内で販売するためには、キュウリはまっすぐでなければならない」という規定を設けていたのだ。様々な形のキュウリが市場に出回ると、商品の規格がまちまちになってしまい、EU内での自由な競争を阻み、統一市場の形成を阻害するから、というのが、理由だった。
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よく考えてみると、スウェーデンの店先に並ぶキュウリは、すべてまっすぐだ。しかし、そんな規定があるなんて、クロアチアでそんな議論を聞いた時に初めて知ったのだった。
このほかに、トマトの形だとか、バナナの曲がり方とか、ニンジンは真っ直ぐでなければならない、とか、玉ねぎは左右対称でなければならない、などなど、34の果物・野菜に対して、細かい分類規定があった。そして最良クラスに分類されたものだけが優先的にEU市場で取引されていた。規格を満たしていない生産農家は、EU市場に売ることが難しいし、EUからの農業補助金も得にくかった。
EU委員会は、34品目に与えられた分類規定を10品目にまで減らすという。規定が今後も残るのは、リンゴ、洋ナシ、かんきつ類、桃、トマトなどらしい。(なるほど、丸いものだけね!)
無事決定がなされれば、2009年7月1日から実施されるという。
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私は、EUもヨーロッパの発展のためによい側面をたくさん持っていると思うのだけど、その一方で、とかく官僚主義、というか必要以上に細かい規定をブリュッセルでたくさん作って、加盟国に従わせる傾向があるのが大きな問題だと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/ef/b00ca2ab1ccabda0b8328c14efe42ecb.jpg)
規格通りの野菜がきれいに並んで機械にかけられている光景を見ると、
これはもはや自然の産物ではなく工業製品だという気もしてくる。
それ以前には結構曲がったキューリも店頭に並んでいましたが、ピッタリとなくなった。味は同じなのに。あれは皆捨ててしまうのでしょうかね。ブタの餌にでもなるのかしら。
そういえば、EUでは鱈漁に出た船はタラしか水揚げしちゃいけないそうです。一本釣りするわけじゃあるまいし、みんな地引網で捕ってくるんでしょ。タラ意外はその場で全部捨てちゃうんだそうですよ。タラより何倍も捕れるのに。ノルウェーは全部港に持って行ってもいいんですって。だからノルウェーはEUに入りたくないのかなあ。
曲がったキュウリ、大いに食べましょう!
>そういえば、EUでは鱈漁に出た船はタラしか水揚げしちゃいけないそうです。一本釣りするわけじゃあるまいし、みんな地引網で捕ってくるんでしょ。タラ意外はその場で全部捨てちゃうんだそうですよ。タラより何倍も捕れるのに。
これは、スウェーデンを始めとするEU諸国は「漁獲枠」による漁獲規制をしているからです。タラ以外の「混獲魚」も、もしその魚のその年の漁獲枠が余っていれば港に水揚げすることができるのですが、最近は、水産資源の枯渇が懸念されるために、漁獲枠がかなり低く設定されており、すぐに枠が一杯になってしまうんです。タラもそうなんですが、漁師側の強い反発でかなり寛大な漁獲枠が設定されています(獲りきるほどタラがいないのに)。
なので、おっしゃるとおり、水揚げできない魚はすべて「海上投棄(dumpning)」することになるんですね。
ちなみにタラは底曳き(トロール)漁で獲ります。最近は幼魚や他の混獲魚が網に入らないような仕掛けが付けられるようになってはいますが、基本的にすべてを根こそぎ持っていく、かなり荒い漁法であるようです。
>ノルウェーは全部港に持って行ってもいいんですって。
そうです。ノルウェーは「漁に出る日数(Havsdagar)」による漁獲規制をしているために、その日に獲れたものはすべて水揚げできるんです。現在EUが採用している漁獲枠による規制よりはいいと言われていますね。(問題もありますが)
今朝、クローナがとうとう1.00SEK=11.22まで下がってしまいました。夏に学費を送金した頃には予想もつかない為替の変動です。
急激な円高に、日本の先行きが心配になります。
そちらの様子はいかがでしょうか?
訂正している間に、ますます円高になっていますね・・・。
EUもやっと重い腰を上げて、日数による漁獲規制に移すとか言ってました。魚屋さんの店頭にもっと雑魚が出てくるといいですね。この国は海に囲まれているのに、魚の種類が少なすぎる。
もちろんスウェーデンでも販売しているのですが、クロアチアの農村部で農家の人が手作りで作った自家製の酢漬けは最高でした。
そうですね。おそらく、雑魚の多くが食用にされず、魚粉にされて飼料になっているのだと思いますよ。わざわざ養殖サケの餌にして、そのサケを食べるよりは、雑魚をそのままもっと食べてもいいような気がしますね。
一昨日スト大にクロアチアの首相Ivo SanaderとFredrikがきましたよ.来年スウェーデンが議長国なので戦略を練りにきたとか.なかなか面白い議論が展開されてました.IvoはEU加盟賛成派で2期目らしいですね.
行く前にこの日記を見ていたら,曲がったきゅうりと絡めてCAP関連の質問ができたかもしれません.残念です!
隣国セルビアの大統領Tadicがヨーテボリに来たときに聞きに行ったことがありますが、彼も同じような厳しい状況にいるようでした。