スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

EUの厳しいヒアリング(1)

2010-01-21 09:19:38 | スウェーデン・その他の政治
EU(欧州連合)の制度というのはかなり複雑だ。複数の国からなる協力機構として最初は始まったものの、次第に超国家的な立法機能や行政・司法機能を持ち備えるようになり、今に至っている。

三権分立の「三権」とは、立法・行政・司法のことだ。まず、EUの司法機関にあたるのが欧州裁判所だ。

では、EUの立法機関はというと、欧州議会(下院に相当)と閣僚理事会(上院に相当)の二つからなっている。この説明は今回は省くことにする。ちなみに、2009年6月に選挙があったのは、この欧州議会の議員を選ぶためだった。

さて、EUの行政機関が欧州委員会である。つまりEUの政府であり内閣なのだ。そして、この欧州委員会には、27加盟国のそれぞれから一人ずつ委員が選出されており、彼らは各政策分野を担当する大臣にあたる。彼らの任期は5年なのだが、これまでの任期が切れるため、新しい委員が選出され、ちょうど今、欧州議会の承認を受けようとしている。


加盟国各国はすでに自国から一人ずつ委員候補を指名しており、また、どの国の委員がどの政策領域を担当するかは、加盟国の首脳の間ですでに協議済みだ。ちなみに、27人の委員のうち一人は委員長を務め、これがEUの首相に相当するわけだが、このポストは前任者でポルトガル政府から指名されたバローゾが継続することは既に決定済みで、欧州議会の承認を受けている。

だから、現在は残る26人の委員候補を欧州議会が承認するかどうかが焦点なのだが、そのためには3時間に及ぶヒアリングという難関が待ち構えている。ヒアリングというと響きはソフトだが、内実は口頭尋問そのものだ。左派や右派の様々な欧州議会議員から厳しい質問を突きつけられ、それに対して自分なりの見解や委員としての職務を全うする意欲を明確にできなければ、欧州議会の承認を得ることは難しい。

今回は既に一人、脱落者が出た。ブルガリア政府から指名を受けて、国際協力・人道援助・危機対応担当委員のポストに就くはずだった女性(本国ではこれまで外相を務める)が、このヒアリングのなかで、個人資産の過去のやり取りをきちんと公表していなかったことを追及されたうえ、担当することになる人道援助に関しての質問にきちんと答えることが出来ず、知識や熱意を欠いていることが明るみになってしまったのだ。さらに、夫が汚職やマフィアとのつながりを持つ疑いがかけられ、さらには未熟な英語力が問題視され、結局、欧州議会の承認を得ることができなかった。そのため、ブルガリア政府は急遽、別の人物を指名してEUに送ることとなった。


ついでだが、ちょうど5年前のヒアリングでも脱落者が出た。イタリア政府から任命され、法務・自由・安全担当委員の候補だった男性が、ヒアリングの席上で女性や同性愛者に対する深刻な差別発言を行ったために、欧州議会が大反発し、イタリア政府は結局、別の人物を立てるという事態に至った。

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では、今回スウェーデン政府が指名した委員の候補とは誰かというと、自由党所属でこれまでスウェーデン政府の中ではEU担当大臣を務めてきたセシリア・マルムストローム(Cecilia Malmström)という41歳の女性だ。彼女は、内務担当委員の候補として今週火曜日にヒアリングを受けたのだが、大成功に終わった。頭の回転が速く、ヨーテボリと関係が深い彼女については、次回に書く予定。


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