先日のスウェーデンツアー報告会(三軒茶屋)でも、レーナ・リンダルさんの講演会(スウェーデン大使館)でも話に出た、ストックホルムの「ニレの木を守る運動」。
これは1971年5月のこと。ストックホルムの中心部にある王立公園に地下鉄駅への出入り口をつくるため、13本のニレの木を切り倒すことが決まった。これに対して、数千人の住民が反発し、1週間にわたって木の周辺を占領した。
これに対し、市側はある晩、警察を用いて強制退去を行い、実力行使で木を切り倒そうとし、警察と活動家双方にケガ人が出る事態となった。その後、市の側は計画を撤回し、地下鉄の出口の位置をずらすことで問題は解決した。市民が市や政府の強硬的なやり方に反対し勝利したという象徴的な出来事であると同時に、行政側も都市計画や公共事業の実施において市民との対話を重視する必要性を認識する契機となった。
実は今、新たな反対運動がストックホルムで起きている。立派な住宅街が立ち並ぶオステルマルム地区の片隅に公共テレビSVTの本部あるが、その前の通りにオーク(セイヨウナラ)の巨木が立っている。樹齢は500年とも1000年とも言われ、ストックホルムの町よりも古いのではないかと考えられる老木だ。テレビ局の前にあることから「テレビ・オーク」もしくは「テレビ局前のオーク」(TV-eken)という愛称で親しまれてきた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/4d/3f8f2fa2d08dd63b173b228fce1d5d3d.jpg)
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150年前に描かれたこの巨木。当時、周りには何もなかった。
10月12日、ストックホルム市交通課はこの大きな老木の切り倒しを決定した。理由は、菌や腐敗による根の侵食が激しく、健康状態が良くないこと、そして、いつか倒れることになれば通行人に危害を与える危険があるため、としている。早くも10月24日に切り倒す予定だと発表した。
市は老木にもそのことを伝える告知文を掲げた。この巨木のもとを訪れる市民は日増しに多くなり、名残惜しみながら最後の別れを告げていた。一方、市の決定に異議を唱える人々も増えていった。彼らはこの決定が政治決定ではなく、あくまで市の役人レベルで決定されたものであることをまず批判した。また、木の状態が悪いにしろ、適切な対策を施すことによって、その大部分を残すことは可能だと指摘。さらに、本当は現在進められているストックホルム市の路面電車の延伸の邪魔になるからではないか、と伐採の理由そのものに異議を投げかけ始めた。
ある市民は「千年近くもこの場所に立ち続けた木の切り倒しを、たった2週間の間に発表から実行に移すなんておかしな話だ」と新聞記者に述べている。また、市が巨木に掲げた告知文には誰かが「くだらん話だ。本当は路面電車が目的だろ?」とか「(王立公園の)ニレの木だって(健康状態が悪いから)伐採しなければならないと言ったくせに、40年経った今でもちゃんと立っているじゃないか」と落書きをしている。さらに「確かに老木だが、私たちが敬意を持って適切な処置を施せば、あと数百年は花を咲かせ続けるだろうに」と述べる市民をいる。
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先週末の日曜日には大勢の市民がこの木の周りに集まってデモ集会を行った。中には、1971年のニレの木をめぐる運動に関わった「ベテラン」もいた。伐採当日に警察がやって来て、木の周りから人々を追い払い、伐採を実行するかもしれないと危惧して、「ハンモックなどを持って木の上に陣取ろう」と提案したりした。そして、人々の一部は伐採が予定された月曜日まで居座った。市が予告した朝8時30分がやって来たが、市の作業員は現れず、実施の延期を発表した。
ストックホルム市は現在、ノルウェーからも樹木の専門家を呼んで、この老木の健康状態を判断してもらうことを予定している(セカンド・オピニオンということだろうか?)。また、伐採に反対する人々はこの地区を管轄する市議会の地区委員会に働きかけて、政治問題化させ、政治的な決定によって老木を保存することを狙っている。地区委員会を構成する市議会議員のうち、社会民主党や環境党の市議会議員は老木の保存に積極的だが、ストックホルム市議会の連立与党を構成する保守系政党は「これは市の交通局が決定すべき問題であり、彼らに再度調査を行うように指示した」として、現在のところ政治的に取り上げることは考えていないようだ。
現在、伐採に反対する人々は木の保存と交通の安全確保を両立する道を模索するとともに、計画が正式に撤回されるまでは24時間体制で監視を続けている。
<写真がいくつか・1>
<写真がいくつか・2>
<地区委員会での協議>
これは1971年5月のこと。ストックホルムの中心部にある王立公園に地下鉄駅への出入り口をつくるため、13本のニレの木を切り倒すことが決まった。これに対して、数千人の住民が反発し、1週間にわたって木の周辺を占領した。
これに対し、市側はある晩、警察を用いて強制退去を行い、実力行使で木を切り倒そうとし、警察と活動家双方にケガ人が出る事態となった。その後、市の側は計画を撤回し、地下鉄の出口の位置をずらすことで問題は解決した。市民が市や政府の強硬的なやり方に反対し勝利したという象徴的な出来事であると同時に、行政側も都市計画や公共事業の実施において市民との対話を重視する必要性を認識する契機となった。
実は今、新たな反対運動がストックホルムで起きている。立派な住宅街が立ち並ぶオステルマルム地区の片隅に公共テレビSVTの本部あるが、その前の通りにオーク(セイヨウナラ)の巨木が立っている。樹齢は500年とも1000年とも言われ、ストックホルムの町よりも古いのではないかと考えられる老木だ。テレビ局の前にあることから「テレビ・オーク」もしくは「テレビ局前のオーク」(TV-eken)という愛称で親しまれてきた。
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150年前に描かれたこの巨木。当時、周りには何もなかった。
10月12日、ストックホルム市交通課はこの大きな老木の切り倒しを決定した。理由は、菌や腐敗による根の侵食が激しく、健康状態が良くないこと、そして、いつか倒れることになれば通行人に危害を与える危険があるため、としている。早くも10月24日に切り倒す予定だと発表した。
市は老木にもそのことを伝える告知文を掲げた。この巨木のもとを訪れる市民は日増しに多くなり、名残惜しみながら最後の別れを告げていた。一方、市の決定に異議を唱える人々も増えていった。彼らはこの決定が政治決定ではなく、あくまで市の役人レベルで決定されたものであることをまず批判した。また、木の状態が悪いにしろ、適切な対策を施すことによって、その大部分を残すことは可能だと指摘。さらに、本当は現在進められているストックホルム市の路面電車の延伸の邪魔になるからではないか、と伐採の理由そのものに異議を投げかけ始めた。
ある市民は「千年近くもこの場所に立ち続けた木の切り倒しを、たった2週間の間に発表から実行に移すなんておかしな話だ」と新聞記者に述べている。また、市が巨木に掲げた告知文には誰かが「くだらん話だ。本当は路面電車が目的だろ?」とか「(王立公園の)ニレの木だって(健康状態が悪いから)伐採しなければならないと言ったくせに、40年経った今でもちゃんと立っているじゃないか」と落書きをしている。さらに「確かに老木だが、私たちが敬意を持って適切な処置を施せば、あと数百年は花を咲かせ続けるだろうに」と述べる市民をいる。
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先週末の日曜日には大勢の市民がこの木の周りに集まってデモ集会を行った。中には、1971年のニレの木をめぐる運動に関わった「ベテラン」もいた。伐採当日に警察がやって来て、木の周りから人々を追い払い、伐採を実行するかもしれないと危惧して、「ハンモックなどを持って木の上に陣取ろう」と提案したりした。そして、人々の一部は伐採が予定された月曜日まで居座った。市が予告した朝8時30分がやって来たが、市の作業員は現れず、実施の延期を発表した。
ストックホルム市は現在、ノルウェーからも樹木の専門家を呼んで、この老木の健康状態を判断してもらうことを予定している(セカンド・オピニオンということだろうか?)。また、伐採に反対する人々はこの地区を管轄する市議会の地区委員会に働きかけて、政治問題化させ、政治的な決定によって老木を保存することを狙っている。地区委員会を構成する市議会議員のうち、社会民主党や環境党の市議会議員は老木の保存に積極的だが、ストックホルム市議会の連立与党を構成する保守系政党は「これは市の交通局が決定すべき問題であり、彼らに再度調査を行うように指示した」として、現在のところ政治的に取り上げることは考えていないようだ。
現在、伐採に反対する人々は木の保存と交通の安全確保を両立する道を模索するとともに、計画が正式に撤回されるまでは24時間体制で監視を続けている。
<写真がいくつか・1>
<写真がいくつか・2>
<地区委員会での協議>
スウェーデンでは、この種のもめごとから住民投票が行われる、というケースが結構あります。