EUの欧州議会で今日(水曜日)行われたある議決で、当初の予想を覆す結果となった。ユーロ危機に関する議決ではない。モロッコ沿岸での漁業権に関する二国間協定についての議決だ。
EUはモロッコと漁業協定を結び、EUの漁船がモロッコの排他的経済水域内で操業できるようにしてきた。現在の協定は2006年に締結されている。しかし、その海域には西サハラの沿岸部も含まれていることが問題になってきた。西サハラは1976年にモロッコが軍事力で制圧し、それ以来、占領してきた。国連をはじめ様々な機関が、国際法に反した占領だと批判してきた。国連はモロッコに対し、西サハラの主権を尊重し、国の将来を彼らが自分たちで決められるように国民投票を実施すべきだと、国連決議を通じて要求してきたものの、何の改善も行われてこなかった。
占領下にある西サハラの沿岸海域は、モロッコ本国ほど漁船監視が行われていないため、EUからやってくる漁船(主にスペインとポルトガル)は西サハラ沿岸で無制限に操業を行っているようだ。モロッコにしてみれば、占領下の海域の漁業権をEUに売っているのと同然であり、また、そうすることで自分たちの占領行為をEUに黙認させようとする意図があるようだ。乱獲を指摘をする声も強い。EUとモロッコの漁業協定には「西サハラの人々の利益になるように配慮すること」という条項が盛り込まれているが、ほとんど守られてこなかった。このことはEUも認めている。
さて、このモロッコとの漁業協定は来年2月で期限切れとなるため、その延長が今年の春からEUで議論されてきた。EUの立法機関のひとつである理事会(閣僚理事会)では、スウェーデンをはじめイギリスやデンマークが延長に反対したものの、賛成する加盟国が多数で勝つことになった。(ちなみに、スウェーデンはEUが2006年にモロッコと漁業協定を結んだ際に、唯一反対した国だった)
EUは立法機関を二つ持つため、欧州議会でも可決される必要がある。その議決が今日(水曜日)あったのである。その準備として行われてきた関連委員会での審議では、予算委員会と開発委員会が延長に反対するよう欧州議会に要請したのに対し、漁業委員会は賛成の立場を表明した。
今日の議決に先駆けては、スペインやポルトガルの水産業界や在ブリュッセル大使館などがロビー活動を盛んに行ったようで、議決では延長賛成派が勝つものと見られていた。スウェーデンのメディアも、今日の午前中はそのように伝えていた。
『沈黙の海』の著者であり、現在は欧州議会議員(スウェーデン選出・環境党)であるイサベラ・ロヴィーン氏は午前中にFacebookでこう書いていた。
しかし、昼過ぎに行われた欧州議会での議決は、賛成296、反対326、棄権58と、意外にも反対派が勝ったのである。環境・緑グループや、左派グループ、リベラル派グループが反対に回り、保守系やキリスト教民主系に勝ることになった。
ただし、賛否はむしろ北と南でより明確に分かれたようだ。イギリスや北欧などの北ヨーロッパ選出の議員が反対し、イタリアやスペイン、ポルトガル、フランスなどの南ヨーロッパ選出議員が賛成に回るという、北vs南の構図が色濃く現れた議決になったという。まさに現在のユーロ危機と同じだ。
反対派を率いてきたロヴィーン議員のコメントが印象的だ。
ちなみに、彼女によるとこの協定はEUにとってもマイナスらしい。EUはこの協定を通して毎年3600万ユーロをモロッコに支払って漁業権を買ってきたが、その海域での漁業によってEUが受ける経済的恩恵はその65%でしかないという。スペインやポルトガルの漁師に対する補助金と化しているわけだが、それがEUにとって非常に高くつくものになっているのである。
現在の漁業協定は来年の2月に期限切れになる。今日の議決結果を受けて、これから協定内容の再検討がなされ、新しい案が再び欧州議会に提出されることになるという。
モロッコは今日の議決結果にすばやく反応し、自国の沿岸で操業するEU漁船は木曜日午前0時までに退去するように勧告した。
12月12日に欧州議会で発言するイサベラ・ロヴィーン議員(英語)
EUはモロッコと漁業協定を結び、EUの漁船がモロッコの排他的経済水域内で操業できるようにしてきた。現在の協定は2006年に締結されている。しかし、その海域には西サハラの沿岸部も含まれていることが問題になってきた。西サハラは1976年にモロッコが軍事力で制圧し、それ以来、占領してきた。国連をはじめ様々な機関が、国際法に反した占領だと批判してきた。国連はモロッコに対し、西サハラの主権を尊重し、国の将来を彼らが自分たちで決められるように国民投票を実施すべきだと、国連決議を通じて要求してきたものの、何の改善も行われてこなかった。
占領下にある西サハラの沿岸海域は、モロッコ本国ほど漁船監視が行われていないため、EUからやってくる漁船(主にスペインとポルトガル)は西サハラ沿岸で無制限に操業を行っているようだ。モロッコにしてみれば、占領下の海域の漁業権をEUに売っているのと同然であり、また、そうすることで自分たちの占領行為をEUに黙認させようとする意図があるようだ。乱獲を指摘をする声も強い。EUとモロッコの漁業協定には「西サハラの人々の利益になるように配慮すること」という条項が盛り込まれているが、ほとんど守られてこなかった。このことはEUも認めている。
さて、このモロッコとの漁業協定は来年2月で期限切れとなるため、その延長が今年の春からEUで議論されてきた。EUの立法機関のひとつである理事会(閣僚理事会)では、スウェーデンをはじめイギリスやデンマークが延長に反対したものの、賛成する加盟国が多数で勝つことになった。(ちなみに、スウェーデンはEUが2006年にモロッコと漁業協定を結んだ際に、唯一反対した国だった)
EUは立法機関を二つ持つため、欧州議会でも可決される必要がある。その議決が今日(水曜日)あったのである。その準備として行われてきた関連委員会での審議では、予算委員会と開発委員会が延長に反対するよう欧州議会に要請したのに対し、漁業委員会は賛成の立場を表明した。
今日の議決に先駆けては、スペインやポルトガルの水産業界や在ブリュッセル大使館などがロビー活動を盛んに行ったようで、議決では延長賛成派が勝つものと見られていた。スウェーデンのメディアも、今日の午前中はそのように伝えていた。
『沈黙の海』の著者であり、現在は欧州議会議員(スウェーデン選出・環境党)であるイサベラ・ロヴィーン氏は午前中にFacebookでこう書いていた。
「あと2時間ほどで決着がつく。賛成派がプロパガンダ攻勢を盛んに仕掛けており、メールボックス一杯に溢れている。私たちも反撃している。」彼女は個人のページでは普段はあまり書き込みをしないので、よほど緊張していたのだろう。
しかし、昼過ぎに行われた欧州議会での議決は、賛成296、反対326、棄権58と、意外にも反対派が勝ったのである。環境・緑グループや、左派グループ、リベラル派グループが反対に回り、保守系やキリスト教民主系に勝ることになった。
ただし、賛否はむしろ北と南でより明確に分かれたようだ。イギリスや北欧などの北ヨーロッパ選出の議員が反対し、イタリアやスペイン、ポルトガル、フランスなどの南ヨーロッパ選出議員が賛成に回るという、北vs南の構図が色濃く現れた議決になったという。まさに現在のユーロ危機と同じだ。
反対派を率いてきたロヴィーン議員のコメントが印象的だ。
「アラブの春が起きたことで、EUの中には非民主・独裁政権と仲良くしてきたことを咎められるという苦い経験をした国もある。EUは、非民主国の肩を持つようなことはしてはならない。今日の議決結果は歴史的なものだ。欧州議会は西サハラの主権を擁護していることを世界に発信したことになる」
ちなみに、彼女によるとこの協定はEUにとってもマイナスらしい。EUはこの協定を通して毎年3600万ユーロをモロッコに支払って漁業権を買ってきたが、その海域での漁業によってEUが受ける経済的恩恵はその65%でしかないという。スペインやポルトガルの漁師に対する補助金と化しているわけだが、それがEUにとって非常に高くつくものになっているのである。
現在の漁業協定は来年の2月に期限切れになる。今日の議決結果を受けて、これから協定内容の再検討がなされ、新しい案が再び欧州議会に提出されることになるという。
モロッコは今日の議決結果にすばやく反応し、自国の沿岸で操業するEU漁船は木曜日午前0時までに退去するように勧告した。
12月12日に欧州議会で発言するイサベラ・ロヴィーン議員(英語)
30年以上にわたって経済資源を搾取され、住民投票の機会も与えられない西サハラの人々にとって、果たして民主国家なのでしょうか?
選挙をやっているかどうかetcだけで民主国家かどうかが判断できるとは思えない。自由なメディアの存在、政治的議論が自由にできるかなども非常に重要な点。何をもって「一般的に」か分からないが、私は今のロシアは民主国家と呼べる状態からはほど遠いと思っている。
民主国家かどうかというのは程度の問題。簡単に線引きできるものではない。