スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

総選挙の争点<3> 泥沼化するアフガンへの関与(その1)

2010-08-29 05:33:30 | 2010年9月総選挙
国際社会が頭を抱えてきたのは、イラク情勢に続き、アフガニスタンの情勢だ。9・11の後に米英軍が侵攻してタリバーン政権を倒し、その後は国連のマンデートのもとでNATO主導による国際部隊ISAF:International Security Assistance Force)が平和維持・復興活動にあたってきた。NATOに加盟しないスウェーデンも、国連マンデートがあることを理由に、2001年末から小規模ながら派兵を行ってきたが、2006年から北部の4州の治安活動の責任を負うことになり、現在は500人規模の軍隊が駐留を行っている。治安活動のほか、アフガニスタンの兵士や治安部隊・警察の養成も担当している。

しかし、NATO軍の当初の期待とは裏腹に、治安情勢は悪化の一途をたどり、タリバーン勢力が再び勢いを盛り返し、国土の大部分を制圧する状況となっている。アフガニスタンの治安を回復し、復興を支援するために、NATO軍はタリバーン勢力に攻勢を加えているが、その度に民間人の犠牲が絶えず、NATO軍に対する信頼は失墜し、タリバーン勢力に加担するアフガニスタン人が逆に増えているともいう。まるで、Moment 23の泥沼状態だ。また、タリバーン勢力を政権から追いやったアメリカが樹立させたカルザイ(傀儡)政権も汚職が相次ぎ、政権としてのレジティマシー(正統性)は高まるどころか、ますます凋落する一方だ。先日も、同国のGDPの4分の1に相当する額のお金が政治家や政府高官などによって主にアラブ首長国連邦に持ち出され、彼らの豪遊に使われているということが明るみになった。

では、軍事オペレーションが難しいなら、民生的な草の根の支援で新しい社会を築いていけばよいかというと、これもまた難しい。タリバーン勢力は国際機関やNGOで働く人々を標的にした活動を行っているというからだ。アフガニスタンの安定化は、達成不可能な泥沼ミッションとなってきた。

スウェーデン兵士も既に4人が命を落としている。
<過去の記事>
2010-02-10:泥沼化するアフガニスタンの「平和ミッション」

先日も、現地に派遣されたスウェーデン軍のある中佐が、現地の深刻な状況をメディアにリークして話題になった。彼によると、数ヶ月前にスウェーデン兵20人とアフガン兵100人からなる部隊が、移動中にタリバーン勢力の攻撃に遭遇し、丘陵地帯に潜む目に見えない敵から発射されるロケット砲や機関銃に6日間、応戦することになったと語った。状況は「この世の地獄」だったと表現した。しかし、この出来事に関するスウェーデン国防省からの当時の記者発表は「タリバーン勢力との小競り合い。スウェーデン兵に負傷なし」という非常に小さなものだった。しかし、実際には6日間も続き、アフガンの正規兵の数人が命を落としていたのだった。この日の夜9時のニュースでは、スウェーデン軍の上官がスタジオに招かれ、「事実の意図的な隠蔽か?」などという記者の執拗な質問に晒され、軍としての説明責任を求められることとなった。(続く・・・)

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