最初は ゆっくり
次第に はや足
走ってもいないのに
どきどきして
何度も何度も
息を大きく吸い込んだ。
『きみの友だち』
持ってきた本を 病室で読み終えた。
どきんどきんと脈打つものは
指先まで伝わり、
微かなふるえが
しんとした朝
ページをめくる音を
たててしまいそうな気がした。
松葉杖をつく 愛想のよくない恵美ちゃんと
何をやっても不器用な
体の弱い、穏やかな由香ちゃんと
彼女らにまつわる人たちの物語。
悲しい場面では泣かなかったのに、
最終章の最後の一行で
泣かされた。
まんまと やられた。
でも まあ いいか。
明るい気持ちで 終えられた。
気持ちのいい朝、
昨日までの雨は やんで
空に明るさが戻ってきた。
窓から見える 大きな木の
大きな深い緑の葉が
珍しく わさわさと揺れていた。
私の気持ちに応えてくれたようで、
嬉しくなった。
そこに吹く風を 目で感じ
すうっとしたものが
自分のところまで
届いたような気がした。
………………
のめりこんで読めたのは、
時間にゆとりがあったから
だけでは ないような気がする。
最初は 朝のひととき
まとまった時間だけ
読むつもりが
読み進むうち
だんだんペースが早くなっていた。
たぶん私は
感情をセーブしている。
一日のうち
誰も カーテンを開けて
入ってこない時間帯は
限られている。
だから
ふいに誰かが入ってきてもいいように
出来るだけ
平気な気持ちで読んでいく。
本当は いや。
思い切り 浸りたい。
本を読む 自分だけの世界にいる時くらい
自由に解放してやりたいから。
それでも、
足が勝手に 進もうとする。
その先へ
その先へ
今 読みたい
知りたい
物語の中の あなたを、
あなたも あなたも あなたも
お話に出てくる
たくさんの 人が
何を 感じ どうしていくのか。
一応の 終わりまで。
まだ きっと続いていくだろう
道のりの
私が見られる
最後のところまで見届けたい。
そう思うと 気持ちが はやる。
そんな お話だった。
………………
このお話の中に、
誰でも きっと
自分と 似た人を
見つけられると思う。
似た人、というか
似た部分。
いわゆる デキる子も
デキない子も
しっかり者も
のんびり屋も
何の取柄のない者も
小心者も わがまま者も…
皆それぞれに
気持ちがあって
嬉しいことも 辛いこともある。
それらを
ひとつひとつ 取り上げて語る
その人のまなざしは
すべての人に あたたかい。
決して見下さない。
見放さない。
そんな あたたかさが
胸に じんわり しみてくる。
ちょっと 何だか 神様みたい。
でも、その あたたかいまなざしも
語られる言葉も
一人ひとりには 届かない。
ただ、一生懸命な
その一人ひとりが
自分で つまずき
自分で 気付き
出会い 考え 悩みながら
その子なりの 先へ
踏み出している。
切ないけれど、それがいい。
そういうもの なのかもしれない。
誰も代われない
その人だけの道。
その人だけの物語だから。
主に子どもの お話だけど
自分はどうなのだろうかと
考えずには いられない。
……………
たくさんありすぎて
あらすじは書けないけれど
とにかく 好きな お話だった。
今 何かひとつ
持っていく
本を選べと言われたら、
迷わず これを あげると思う。
それくらい
言葉のところどころに
運命めいたものを
感じるのだけれど…
よくよく考えれば
まだ 読んだことのない
ものの中にも
そんな本が たくさん
あるのではないかと
思ったりもする。
決められないなぁ
一冊 なんて。
私の読んだ本なんて
ほんのわずか。
だから
まだ
決めないでおこうと 思う。
まだ
この先にあると 思いたいから。
次第に はや足
走ってもいないのに
どきどきして
何度も何度も
息を大きく吸い込んだ。
『きみの友だち』
持ってきた本を 病室で読み終えた。
どきんどきんと脈打つものは
指先まで伝わり、
微かなふるえが
しんとした朝
ページをめくる音を
たててしまいそうな気がした。
松葉杖をつく 愛想のよくない恵美ちゃんと
何をやっても不器用な
体の弱い、穏やかな由香ちゃんと
彼女らにまつわる人たちの物語。
悲しい場面では泣かなかったのに、
最終章の最後の一行で
泣かされた。
まんまと やられた。
でも まあ いいか。
明るい気持ちで 終えられた。
気持ちのいい朝、
昨日までの雨は やんで
空に明るさが戻ってきた。
窓から見える 大きな木の
大きな深い緑の葉が
珍しく わさわさと揺れていた。
私の気持ちに応えてくれたようで、
嬉しくなった。
そこに吹く風を 目で感じ
すうっとしたものが
自分のところまで
届いたような気がした。
………………
のめりこんで読めたのは、
時間にゆとりがあったから
だけでは ないような気がする。
最初は 朝のひととき
まとまった時間だけ
読むつもりが
読み進むうち
だんだんペースが早くなっていた。
たぶん私は
感情をセーブしている。
一日のうち
誰も カーテンを開けて
入ってこない時間帯は
限られている。
だから
ふいに誰かが入ってきてもいいように
出来るだけ
平気な気持ちで読んでいく。
本当は いや。
思い切り 浸りたい。
本を読む 自分だけの世界にいる時くらい
自由に解放してやりたいから。
それでも、
足が勝手に 進もうとする。
その先へ
その先へ
今 読みたい
知りたい
物語の中の あなたを、
あなたも あなたも あなたも
お話に出てくる
たくさんの 人が
何を 感じ どうしていくのか。
一応の 終わりまで。
まだ きっと続いていくだろう
道のりの
私が見られる
最後のところまで見届けたい。
そう思うと 気持ちが はやる。
そんな お話だった。
………………
このお話の中に、
誰でも きっと
自分と 似た人を
見つけられると思う。
似た人、というか
似た部分。
いわゆる デキる子も
デキない子も
しっかり者も
のんびり屋も
何の取柄のない者も
小心者も わがまま者も…
皆それぞれに
気持ちがあって
嬉しいことも 辛いこともある。
それらを
ひとつひとつ 取り上げて語る
その人のまなざしは
すべての人に あたたかい。
決して見下さない。
見放さない。
そんな あたたかさが
胸に じんわり しみてくる。
ちょっと 何だか 神様みたい。
でも、その あたたかいまなざしも
語られる言葉も
一人ひとりには 届かない。
ただ、一生懸命な
その一人ひとりが
自分で つまずき
自分で 気付き
出会い 考え 悩みながら
その子なりの 先へ
踏み出している。
切ないけれど、それがいい。
そういうもの なのかもしれない。
誰も代われない
その人だけの道。
その人だけの物語だから。
主に子どもの お話だけど
自分はどうなのだろうかと
考えずには いられない。
……………
たくさんありすぎて
あらすじは書けないけれど
とにかく 好きな お話だった。
今 何かひとつ
持っていく
本を選べと言われたら、
迷わず これを あげると思う。
それくらい
言葉のところどころに
運命めいたものを
感じるのだけれど…
よくよく考えれば
まだ 読んだことのない
ものの中にも
そんな本が たくさん
あるのではないかと
思ったりもする。
決められないなぁ
一冊 なんて。
私の読んだ本なんて
ほんのわずか。
だから
まだ
決めないでおこうと 思う。
まだ
この先にあると 思いたいから。