月下樹のおと

樹月けい、オタク母のブログ。アニメ・漫画。お絵かき展示等。義母の介護終わり、義父のご飯お手伝い中。

2/25 演劇コース8期生卒業公演 『あいまいな死よ来たれ』 三女と観劇

2021-03-02 07:17:53 | 感想★アート演劇 映画ドラマ アニメ等


2/25
演劇コース8期生卒業公演
『あいまいな死よ来たれ』
三女と観劇。

『マクベス』が原作。
動くはずのない森が動く。
当たり前がひっくり返る…
現実と重なる気分。
卒業公演なのに静かなロビー。
会えなくて残念…と三女。
心を込めて拍手を贈った。
……………………

色々な場で見たことがある
『マクベス』なので、
だいたいの粗筋は知っている。
けれど作品によって
少しずつ違うし、
観る時期、その時の自分も違うから
感じることも少しずつ違う。

何というか…
ごく普通の人が
悪に転がり落ちる感じ。
まっとうに生きてたはずが
何かに引きずられ
こんな非道なことを重ねるなんて。


自分はそうならないのか、
身近な誰かも、そうならないのか、
心にドンと突きつけられた。

もちろん時代背景も
国や立場も、まるっきり違うし
剣を振るうこともないのだけれど。

疑心暗鬼や不安は
時に、本来の姿をねじ曲げて見せ
どんどん増殖する憎悪に
飲み込まれてしまう。

でも、そういうことは
意外と近くに潜んでる。

そんなふうに感じているので
他人事には思えない。
悪いヤツを悪として憎んで
スッキリした気分にもなれない。

勿論、殺されたヤツは
本当に気の毒である。
でもそちら側のヤツらは敵を憎み
正義の名のもとに報復する。

どこまでも続く負の連鎖。

そういうものを強く感じた。
粗筋を知っているのに
観ていると
じわじわ泣けてきた。

………


もうひとつ
心に引っかかったのは、
” 当たり前 “ が、
ひっくり返るということ。


魔女の予言にもあった、

女から生まれたものは
マクベスを倒せないとか、
バーナムの森が動いてこなければ…

というようなこと。

普通ならそんなことは
有り得ない。起こり得ない。

けれどそうじゃなかった。

絶対的なものは無いということか。

現実に目を向ければ、
こんなコロナ禍が続くとは
想像もしていなかった。
当たり前が
当たり前じゃなくなった。


先が見えないのは不安なことだ。

できるかもしれない、
できないかもしれない、
同じくらいの希望と不安を
ずっと抱えて続けるのは苦しい。

本当の死は嫌だけど、
あいまいな死も
苦しいことに変わりはない。

それでも、来たれと言うか…
どうだろう。自分は
あいまいな死の淵に身を置き
何を思うだろう。

決着のつかないまま
どこまでギリギリの場所に
立ち続けられるだろう。

何とも重い気持ちになった。


けれど歴史を振り返れば、
世界的な感染症や未曾有の危機は
いくつもあった。

そもそも、
普通はないということか。
自分が普通と思っているだけで
特異なものは少数だとしても
無数にある。


きっと、今
見えているものがすべてではない。

だからといって
すべてを見ることは不可能だろう。

だからこそ
見えてないどこかに
解決の糸口や
救いのようなものが
あるかもしれない。

無いという絶対は ないはずだ。

そんなふうにも思った。

舞台上、
次々と この世から
消えていった人を見送りながら
手渡されたバトンを
ぎゅっと握りしめるような
気持ちだった。

…………

公演のチラシの表に
仏像の手のようなデザイン。

気になって調べてみた。

違うかもしれないが
弥勒菩薩の〈思惟手(しゆいしゅ)〉
ではないかと。

菩薩は、
悟りを求めて修行中の人らしい。

救いを求める人々を
助けようとする慈愛の表情。


悲惨な結末に震えるのではなく
一縷の望みの存在に
心奮い立つようなラストだった。

……………………

卒業公演は
これまで何回か観てきた。
観劇後のロビーで
皆さんと最後の交流の場、
感謝の言葉を交わす場でもあった。

普段とまた違った雰囲気で
笑顔や涙も見られる場だった。

それを知っているだけに
できない寂しさが大きかった。


私は以前、この大学の
アートマネジメントの講座で
一部の学生さんと
活動を共にすることがあった。

三女もそれに同行することがあり、
そこから、
大学の子ども向けの活動にも参加、
そこで出会った学生さんに
親しみを持つようになった。


単なる一観客、というだけでなく
いつか一緒に活動した
仲間のような感覚。
それが劇場に足が向くきっかけに
なっていたのかもしれない。

色々なことを引っくるめて
ありがとうを伝えたい。

お互い違う環境だけど
これからの皆さんに
エールを送る!!
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