2015年9月に国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。これは2015年に終了した「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継ですが、MDGsが途上国の開発を主な目的としていたことに対して、SDGsは、気候変動やエネルギー、健康や雇用といった先進国でも深刻化している課題なども取り上げており、先進国も含めてすべての国を対象としていることが特徴です。政府のみならず、産業界や市民社会など、地球上のすべての人を対象とした共通目標という位置づけなのです。
今日はSDGs思想を取り入れる海外の会社と日本の会社の実態を比較しようと思います。
(1)SDGsの具体的な内容
SDGsの17の大きな目標の中身を少し見てみましょう。
1、貧困をなくす ... 「いかなるところでも全ての形態の貧困を終わらせる」
2、飢餓をゼロに ... 「飢餓を終わらせ, 食料安全保障と栄養改善を達成し, 持続可能な農業を推進する」
3、人々に保健と福祉を ... 「健康な生活を保証し, 全ての年齢層の全ての人々の良い暮らしを推進する」
4、質の高い教育をみんなに ... 「全ての人々に, 包括的で公平な, 良質な教育を保証し, 生涯にわたる教育機会を促進する」
5、ジェンダーの平等 ...
6、安全な水とトイレを世界中に
7、エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
8、働きがいも経済成長も
9、産業と技術革新の基盤をつくろう
10、人や国の不平等をなくそう
11、住み続けられるまちづくりを
12、つくる責任つかう責任
13、気候変動に具体的な対策を
14、海の豊かさを守ろう
15、陸の豊かさも守ろう
16、平和と公正をすべての人に
17、パートナーシップで目標を達成しよう
(2)SDGsを何故会社は取り入れなければならないか?
会社にとってSDGsを取り組むことは義務ではありません。
しかしSDGsを取り入れないとその会社の評価が下がり国際競争力が下がるのです。
従って国際的に活躍している日本の大会社は真剣にSDGsを導入しています。
149カ国の達成状況は世界銀行や国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)などで評価されているのです。
(3)日本では大手企業を中心にSDGsが急速に浸透しています。https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/knowledge/opinion/er/2019/2019-1-2.html
2016年1月に始まり2030年まですべての国・地域に適用されます。
日本政府は、2019年9月に国連本部で開催されるSDGs首脳級会合で、取り組み状況を報告する予定です。
SDGsに取り組む日本企業は急増しています。
東洋経済新報社「CSR企業総覧2019【ESG編】」(2018)によると、掲載企業1,501社のうち、SDGsを参考にしている企業が472社、検討中の企業が164社であり、合わせると全体の42%の企業がSDGsを参考あるいは検討中でした
一昨年の調査(対象企業1,408社)では、SDGsを参考・検討中の企業数が317社(全体の23%)であったことから、2年間でSDGsを参考・検討中の企業数が倍増(全体の比率で19ポイント増加)したことになります。
大手企業の取り組みに注目すると、SDGsはさらに浸透しています。
1番目の写真の図1は、国内大手企業の取り組み状況を示しています。
今やSDGsについて言及する企業が大多数を占めるほどでになっています。
SDGsの取り組みが遅れていたランク下位の中小企業や非製造業においても、SDGsが浸透し始めています。
前回(2017年末)調査では、SDGsに言及した企業の比率が製造業75%に対して非製造業37%でしたが、今回(2018年末)調査では、製造業86%に対して非製造業76%というように差が大きく縮まっています。同様に、前回調査ではランク上位(1000位以内)企業のSDGs言及比率76%に対してランク下位(1001位~2000位)企業が37%でしたが、今回調査ではランク上位企業91%に対してランク下位企業71%というように差が縮小しているのです。
2番目の写真の図2は2000の日本企業のランク別・業種別のSDGsへの言及の割合を示しています。
(4)企業のSDGsの取り組みも具体的な内容
企業のSDGsの取り組みも具体的になってきました。
3番目の写真の図3は、SDGsへの言及内容を分類し、過去の調査結果と比較したものです。
今回(2018年末)調査では、企業トップのメッセージの中でSDGsについて言及している企業が133社と最も多く、SDGs言及企業の7割を超えていました。
続いて、CSR方針や考え方などにSDGsを反映する企業(116社)やSDGsと自社事業を総合的に関連付ける企業(110社)もSDGs言及企業の6割を超えています。
前々回(2016年末)調査では、両者に該当する企業が10社程度だったことを考えると、企業の取り組みがより総合的かつ具体的になっていると言えます。
企業トップのメッセージを見ても、前々回調査では、SDGsを認識していることや自社がSDGsに貢献する意思を表明するものがほとんどでしたが、今回調査では、SDGsに関する社内の検討内容やビジョン・方針を語る企業が増えており、より具体的になっているのです。
(5)日本企業と海外企業のSDGsへの取り組みの違いは?
東京都市大学環境学部環境マネジメント学科 枝廣淳子研究室、 横山聖弥
http://www.comm.tcu.ac.jp/edahiro-web/category/pdf/soturon/yokoyama.pdf
4番目の写真の図は調査結果の概要を示した図です。
グラフを見ると、日本企業は海外の先進企業に比べると、「言及のみ」「重要項目としての認識」が多く、事業との関連性や具体的な取り組み、成果や目標といったところへの踏み込みが少ない傾向がわかります。
結論を言う海外の欧米の企業五ではSDGsを具体的に取り入れているが日本企業は遅れているのです。
日本の企業の国際競争力の将来にとっては憂慮される状態です。
(6)先進的な取り組みの日本の会社の例
○味の素(食品)
http://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/pdf/2016/ajinomoto_csr16.pdf
この会社は以下の問題の解決に努力します。
1、栄養情報不足による栄養バランスの崩れがもたらす「不足栄養・過剰栄養」
2、都市への一極集中や急速に進む高齢化などライフスタイルの変化による多忙化、孤食化がもたらす「こ ころの健康問題」
3、「食資源の枯渇とフードロス」の食資源課題
4、製品ライフサイクル全体での地球との共生(カーボンニュートラル、フードロスの半減、持続可能な調達、 持続的な水資源保全、廃棄物のゼロエミッションの実現)
このように従来の利潤追求だけの活動にいろいろなSDGsの運動を組み込んでいるのです。
少し長くなったので終りとします。
今日は日本の会社がSDGsをどのように取り入れているかを簡略に説明しました。
そして欧米の企業がSDGsを具体的に取り入れているが日本企業は遅れていることを指摘しました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)
今日はSDGs思想を取り入れる海外の会社と日本の会社の実態を比較しようと思います。
(1)SDGsの具体的な内容
SDGsの17の大きな目標の中身を少し見てみましょう。
1、貧困をなくす ... 「いかなるところでも全ての形態の貧困を終わらせる」
2、飢餓をゼロに ... 「飢餓を終わらせ, 食料安全保障と栄養改善を達成し, 持続可能な農業を推進する」
3、人々に保健と福祉を ... 「健康な生活を保証し, 全ての年齢層の全ての人々の良い暮らしを推進する」
4、質の高い教育をみんなに ... 「全ての人々に, 包括的で公平な, 良質な教育を保証し, 生涯にわたる教育機会を促進する」
5、ジェンダーの平等 ...
6、安全な水とトイレを世界中に
7、エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
8、働きがいも経済成長も
9、産業と技術革新の基盤をつくろう
10、人や国の不平等をなくそう
11、住み続けられるまちづくりを
12、つくる責任つかう責任
13、気候変動に具体的な対策を
14、海の豊かさを守ろう
15、陸の豊かさも守ろう
16、平和と公正をすべての人に
17、パートナーシップで目標を達成しよう
(2)SDGsを何故会社は取り入れなければならないか?
会社にとってSDGsを取り組むことは義務ではありません。
しかしSDGsを取り入れないとその会社の評価が下がり国際競争力が下がるのです。
従って国際的に活躍している日本の大会社は真剣にSDGsを導入しています。
149カ国の達成状況は世界銀行や国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)などで評価されているのです。
(3)日本では大手企業を中心にSDGsが急速に浸透しています。https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/knowledge/opinion/er/2019/2019-1-2.html
2016年1月に始まり2030年まですべての国・地域に適用されます。
日本政府は、2019年9月に国連本部で開催されるSDGs首脳級会合で、取り組み状況を報告する予定です。
SDGsに取り組む日本企業は急増しています。
東洋経済新報社「CSR企業総覧2019【ESG編】」(2018)によると、掲載企業1,501社のうち、SDGsを参考にしている企業が472社、検討中の企業が164社であり、合わせると全体の42%の企業がSDGsを参考あるいは検討中でした
一昨年の調査(対象企業1,408社)では、SDGsを参考・検討中の企業数が317社(全体の23%)であったことから、2年間でSDGsを参考・検討中の企業数が倍増(全体の比率で19ポイント増加)したことになります。
大手企業の取り組みに注目すると、SDGsはさらに浸透しています。
1番目の写真の図1は、国内大手企業の取り組み状況を示しています。
今やSDGsについて言及する企業が大多数を占めるほどでになっています。
SDGsの取り組みが遅れていたランク下位の中小企業や非製造業においても、SDGsが浸透し始めています。
前回(2017年末)調査では、SDGsに言及した企業の比率が製造業75%に対して非製造業37%でしたが、今回(2018年末)調査では、製造業86%に対して非製造業76%というように差が大きく縮まっています。同様に、前回調査ではランク上位(1000位以内)企業のSDGs言及比率76%に対してランク下位(1001位~2000位)企業が37%でしたが、今回調査ではランク上位企業91%に対してランク下位企業71%というように差が縮小しているのです。
2番目の写真の図2は2000の日本企業のランク別・業種別のSDGsへの言及の割合を示しています。
(4)企業のSDGsの取り組みも具体的な内容
企業のSDGsの取り組みも具体的になってきました。
3番目の写真の図3は、SDGsへの言及内容を分類し、過去の調査結果と比較したものです。
今回(2018年末)調査では、企業トップのメッセージの中でSDGsについて言及している企業が133社と最も多く、SDGs言及企業の7割を超えていました。
続いて、CSR方針や考え方などにSDGsを反映する企業(116社)やSDGsと自社事業を総合的に関連付ける企業(110社)もSDGs言及企業の6割を超えています。
前々回(2016年末)調査では、両者に該当する企業が10社程度だったことを考えると、企業の取り組みがより総合的かつ具体的になっていると言えます。
企業トップのメッセージを見ても、前々回調査では、SDGsを認識していることや自社がSDGsに貢献する意思を表明するものがほとんどでしたが、今回調査では、SDGsに関する社内の検討内容やビジョン・方針を語る企業が増えており、より具体的になっているのです。
(5)日本企業と海外企業のSDGsへの取り組みの違いは?
東京都市大学環境学部環境マネジメント学科 枝廣淳子研究室、 横山聖弥
http://www.comm.tcu.ac.jp/edahiro-web/category/pdf/soturon/yokoyama.pdf
4番目の写真の図は調査結果の概要を示した図です。
グラフを見ると、日本企業は海外の先進企業に比べると、「言及のみ」「重要項目としての認識」が多く、事業との関連性や具体的な取り組み、成果や目標といったところへの踏み込みが少ない傾向がわかります。
結論を言う海外の欧米の企業五ではSDGsを具体的に取り入れているが日本企業は遅れているのです。
日本の企業の国際競争力の将来にとっては憂慮される状態です。
(6)先進的な取り組みの日本の会社の例
○味の素(食品)
http://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/pdf/2016/ajinomoto_csr16.pdf
この会社は以下の問題の解決に努力します。
1、栄養情報不足による栄養バランスの崩れがもたらす「不足栄養・過剰栄養」
2、都市への一極集中や急速に進む高齢化などライフスタイルの変化による多忙化、孤食化がもたらす「こ ころの健康問題」
3、「食資源の枯渇とフードロス」の食資源課題
4、製品ライフサイクル全体での地球との共生(カーボンニュートラル、フードロスの半減、持続可能な調達、 持続的な水資源保全、廃棄物のゼロエミッションの実現)
このように従来の利潤追求だけの活動にいろいろなSDGsの運動を組み込んでいるのです。
少し長くなったので終りとします。
今日は日本の会社がSDGsをどのように取り入れているかを簡略に説明しました。
そして欧米の企業がSDGsを具体的に取り入れているが日本企業は遅れていることを指摘しました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)