最初の写真は現在の日本丸の船長の大西典一船長で2番目の写真はこのような帆船で訓練を受け、日本郵船KKの大型船の船長や水先案内人をされた大河原明徳船長です。小生へ詳しくご説明下さった両船長へ深甚の感謝の意を表します。
さて、これから皆様は大西船長になったおつもりで日本丸で太平洋を横断する訓練航海の指揮をとって頂きたいと思います。紙上のバーチャル航海ですから危険はありません。
横浜港を5月1日に出港します。東京湾を池貝鉄工所製、600馬力2基4サイクルジーゼルエンジンで機走する。三浦半島を右手に見て、東京湾を出る。先には帆走準備に邪魔な伊豆諸島がある。これをかわして、広い外洋に出る。そこで帆走の準備をする。
上の写真の左端のように、船長の皆さんは船尾の舵輪の脇に立つ。
4本のマストにはそれぞれ航海士を1人ずつ配置し、訓練生を20人ずつ配置する。
つぎに2枚目の写真で示すように、ジガーマスト天辺の風向・風速計を見上げ風向きと風速を確かめる。
外洋なので大波がうねっているが、風はしっかりと安定した西南の風である。
「全員、マストへ登り、セイルを解け!」、号令が士官から士官、そして訓練生へと伝達される。訓練生が揺れる帆柱へましらのようにのぼりヤードに縛り付けてあった全ての帆を解く。
「全員、マストから降りろ!」、船長の号令で全員甲板へ戻る。(船長の気持ちーヤレヤレ一番危険な仕事が無事終わった!)
「アウター・ジブとスパンカーを上げろ!」、号令が気持ち良く訓練生へ届き、日ごろの訓練通り帆が上がる。あとは船の姿勢を調整しながら順序良くセイルを上げるだけ。上の写真の3、4、枚目の写真がその途中の写真で、5枚目がいよいよ帆走を始めたときの様子。
でもこれはウソ。航路の北太平洋は荒天が続くので、3本のマストの先端のセールである、
ロイヤル・セールは上げないでシェアトルまで帆走するのが普通である。
ヤードの向きを調整し、追い風一杯で、快調に帆走を始める。もう、銚子沖東100km。
うるさいジーゼルエンジンを止め、帆走に入る。大波で船が心地よく上下する。
東北へのぼり、荒天域に入る。これでシェアトルまで40日間の帆走が始まる。
何日かすると訓練生が、「船長殿、質問があります。何故、こう毎日雨なのですか? 晴天域は走らないのですか?」と不満そうに聞く。船長が答える、「低気圧のそばへ船をもって行って、何時も強い追い風を捉えて走るのが大型帆船の正しい走り方なのだ。帰りは南太平洋を渡りハワイへ寄るからそれまで辛抱する。よいか?」「なるほど。分かりました!船長殿」 (続く)