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後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

「思い出あれこれ(3)オハイオ・ホンダ工場と本田宗一郎さんの思い出」

2022年08月18日 | 日記・エッセイ・コラム

1988年から1990年まで私はオハイオ州立大学金属工学科の客員教授をしていました。

今日はその頃のことを書きたいと思います。読み易くするため個条書きにします。

(1)米国で尊敬されていた本田宗一郎さん

1988年、オハイオ州立大学で働いていたとき、本田宗一郎氏がオハイオ・ホンダ工場を視察に来ました。工場はフル操業しており地元経済は活況を呈していたのです。地方紙が一面トップで本田氏来訪を伝え、翌日の新聞には黒人の労働者と握手している写真が大きく出ます。広大な工場を視察し、多くの労働者と親しく会話し、握手をしたと報じていました。

アメリカの大企業の幹部は工場労働者とは握手をしません。食堂もトイレも社員と労働者は別です。ところがホンダ工場は一緒だったのです。本田さんは「自由と平等」をホンダ工場の中で徹底した英雄と讃えられました。

よく知られているように、本田さんは小さなオートバイ工場を出発点にして、世界中に乗用車製造工場を建設しました。この話はアメリカ人の好むアメリカン・ドリームの物語そのものです。飾らない開放的な人柄も手伝って、多くのアメリカ人に尊敬されていました。

(2)ホンダ工場のおかげで体験したいろいろ

オハイオに住んでいると、日本人という理由で親切にされました。ホンダ工場のおかげです。近所のガソリンスタンドで車を修理してもらったら、「日本人か?」と修理工が聞いたのです。「そうだ」、「ならホンダ工場の日本人に頼んで就職できるよう話をつないでくれない?」。

ホンダ工場とは付き合いがありません。1週間後にホンダの採用窓口の電話番号を調べてガソリンスタンドの修理工に教えたら、「有難う!忘れていなかったのが嬉しい」と感謝された。

客員教授をしてい学科の同僚教授へ呼び掛けてホンダ工場を見学に行きました。緑輝く牧場に囲まれた工場は隅々まで清潔で、労働者は色々な人種が混じっているます。組み立てラインでキビキビと正確に部品を取り付けている。こんなに楽しそうに働くアメリカ人の集団を見たことがない。一緒に行ったアメリカ人教授も皆この集団に圧倒されていた。

1番目の写真は見学に行ったオハイオ・ホンダ工場です。

アメリカの頭痛の種はリンカーン大統領の昔から人種差別の問題です。ホンダ工場では黒人も白人もアジア人も同じ組み立てラインに平等に働いていました。ラインはいつも動いており、チームワークが絶対に必要です。声を掛け合って部品の取り付けが遅れたり不完全になったりしないようにします。

2番目の写真は黒人も白人もアジア人も協力して働いているオハイオ・ホンダ工場の従業員一同です。

「黒人と白人が一緒に楽しく食卓を囲む日が必ずやって来る!」・・・という公民権運動の黒人リーダー、キング牧師の言葉どうりのことがオハイオ・ホンダ工場で実行されていたのです。このホンダの組み立てラインをキング牧師に見てもらいたかったという感慨が湧いてきました。

(3)その後本田さんを訪問しました。

その同じ年の初冬、オハイオの恩師、セント・ピエール教授夫妻と東京駅八重洲口のホンダ会館へ本田さんを訪問しました。目的はオハイオ・ホンダ工場とオハイオ州立大学金属工学科大学との共同研究をお願いすることでした。

本田さんは機嫌がよかった。戦前に芸者さんと軽飛行機に乗った話、初めてオートバイを作ったころの話、マン島レースでの優勝の話などを楽しそうに語ってくれたのです。

民間企業から研究費を貰う交渉に抜群の能力を発揮するセント・ピエール教授が本田さんの話をウットリして聞いています。上気して顔が赤くなり、尊敬の眼差しで本田氏の顔を見上げているのです。帰途「終始黙っていましたね。研究費を貰う話はどうなったのですか?」と私が聞くと、「そんな話は出せなかった。お話を直接聞けたことが人生で二度とない貴重な体験だった」と言うのです。

オハイオ州立大学のアメリカンフットボール競技場に立つ巨大な電光掲示板はオハイオ・ホンダの寄付と聞いてました。

3番目の写真はオハイオ州立大学のアメリカンフットボール場です。ここに本田さんが巨大な電光掲示板を寄付してくれました。

4番目の写真はオハイオ州立大学のアメリカンフットボールの選手たちです。

5番目の写真はアメリカンフットボールの競技中の一場面です。私も見に行きました。

本田宗一郎さんは1906年(明治39年)に生まれ1991年(平成3年)に亡くなりました。享年84歳。

謹んでお冥福をお祈り申し上げます。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)


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