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後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

ついでに島崎藤村の初恋と椰子の実をお送りいたします

2015年05月10日 | 日記・エッセイ・コラム
ついでに島崎藤村の初恋と椰子の実をお送りいたします。

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初恋     島崎藤村

まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
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椰子の實      島 崎 藤 村
http://www.geocities.jp/sybrma/289shi.yashinomi.html より。

名も知らぬ遠き島より
流れ寄る椰子の實一つ

故郷(ふるさと)の岸を離れて
汝(なれ)はそも波に幾月

舊(もと)の樹は生ひや茂れる
枝はなほ影をやなせる

われもまた渚を枕
孤身(ひとりみ)の浮寢の旅ぞ

實をとりて胸にあつれば
新(あらた)なり流離の憂(うれひ)

海の日の沈むを見れば
激(たぎ)り落つ異郷の涙

思ひやる八重の汐々(しほじほ)
いづれの日にか國に歸らむ
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なお椰子の実はカール・ボエルマンの作を「思郷」の影響を受けたという面白い話を、http://www.geocities.jp/sybrma/289shi.yashinomi.html から下に転載します。
・・・・前略・・・・カール・ボエルマンの作の「思郷」と題して意訳した漢詩の訓読文を、関良一氏の『近代文学注釈大系 近代詩』(有精堂・昭和38年9月10日発行、昭和39年12月20日再版発行)から転写しておきます。 
   離郷遠寓椰樹国  郷を離れて遠く椰樹(やじゅ)の国に寓(やど)る。
   独有潮声似窮北   独り潮声の窮北に似たる有り。
   思郷念或熾      思郷の念或ひは熾(おこ)り、
   即走海之浜      即ち海の浜に走る。
   聴此熟耳響      此の耳に熟(な)れし響を聴き、
   欝懐得少伸      欝懐少しく伸ぶることを得たり。  
  ただし、吉田氏の文中には「離レ郷遠寓椰樹国」とありますので、吉田氏は「郷を離れて遠く寓る椰樹の国」と読まれたものと思われます。・・・・
以下省略。