さて、またヴァンサン滞在中に京都まで出かけた話である。この月は二月で、梅花祭でもあり、上七軒の舞妓さんや芸妓さんも来られ、華やかだ。
パトリックは都ホテルから直接来たので、先に着いてもう目ぼしいものを何点か買っていた。私はそれをチェックするだけだ。
ガラクタのようなものでも、彼の目に留まれば、「ビューティ・フル」と訛った英語で言う。
彼は私に「日本語で『高すぎる』」という言葉を教えてくれと言った。たしかに交渉の際に不可欠な言葉だ。
近くで食事をした後、梅花祭の茶席にも参加することにした。
間近で舞妓さんを見られるとあって、彼らはとても喜んだ。そして気のせいか舞妓さんも彼らにお茶を運んでくるとき嬉しそうだった。
この時の写真もなくなってしまい、残念な限りだ。
写真を撮るのが大好きな奥さんだが、息子のアルチュール(英語ではアーサーと読むので、綴りが同じでも発音はずいぶん違うなといつも思う。)は、奥さん譲りのカメラ好きのようだ。彼は一杯撮っていた。
パトリックはこの後、何と日本企業に転職を決めてしまうのである。
アルザスのヴォージュと言うところの山育ちで、子供のような心を持ち続け、誰からも好かれる彼は、地元のレストランで食事をしていた時、日本人の駐在員と話が弾み、トントンと話が進んだようだ。
彼にとっては仕事という大義名分ができて、奥さんの了解のもとに堂々と日本に来れるのは願ってもないことだ。
ともあれ、ヴァンサンの十日間の滞在の間に、このパトリック親子に二日、もう一組のピエールとミッシェルに一日と大忙しだったはずなのだが、今思えばどうやって切り抜けたのか、思い出せないくらいである。
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