そして、夕方、二組の夫婦は、奈良観光を終えて帰ってきた。
扉をあけると、花束を持った、四人組がいた。
そう、フランスでは、食事に招待されると、花束、もしくはワインを手にやってくることが多いのだ。
知ってはいても、花束を持っての訪問はもちろん初めてで、とても感激した。
この日はしゃぶしゃぶにした。
四人も一度に来客とあって、テーブルも一杯だ。
赤ワインも用意していたが、正直言うと、フランスワインとは言え、フランス人に出すには気が引けるようなテーブルワインだった。
それでも彼らは本当に喜んでくれた。
「まあ!!赤ワイン♪フランスを思い出させるわ!!」と、嬉しそうに空けた。
しゃぶしゃぶのたれは、ごまだれとポン酢だ。
「食べ方を教えて」と言うので、「好きなたれでいいのだけど、お肉はごまだれ、野菜はポン酢が合う」と説明する。
ごまだれは手作りのせいか、「美味しいソースだ。ベースは何?」と聞く。
特に太っちょのムッシュ、この人も実はクリスチャンと言う。
このクリスチャン、「おいしい!!おいしい!!」と、食べる!!食べる!!
こちらが少し控えないといけないかと心配になるくらいパクパク食べ、ご飯も御代わりだ。
私がお肉や野菜を次々足しているのを見て、精神科医のムッシュ・ジルが「あなたはいつ食べるの?」と気遣ってくれた。
フランスではもうきちんと出来上がったものをテーブルに出すものが多いせいか、このように食べながら炊いたり焼いたりと言うのは珍しいようだ。
私のお腹にも入り、皆満足そうになった時、またジルが「この料理はいつ終わるの?」と笑いながら尋ねた。
「皆が満腹になったらおしまい」と答えたのは言うまでもない。
当たり前と思っていることでも、彼らにとっては、素朴な疑問なのである。
観光同行しない代わりと言うわけではないけれど、もっと楽しんでもらいたいのだ。