彼らと一緒に来ていたホテルで泊まったもうひと組のカップルはと言うと、これがまたそのホテルを気に入ってくれたのだった。
チェックインの際、前払いと言うことを説明し、枕も選べることと、奥さんは女性だけの特典のアメニティであるいくつか化粧品のサンプルのようなものを選べることに満足そうだった。
私は正直その時は利用したことがないホテルで不安だったが、ロフトベッドがついた部屋が面白かったらしい。そして朝食はパンと飲み物だけの簡単なものがついているだけなのだが、フランス人にはこれで十分なのであった。
彼らはふとっちょのカップルである。 いかにも人の良さそうな夫婦だった。
駅からホテルまで、前述の夫婦と四人で歩いた時に、「どこに住んでいるの?」と聞いたら、ムッシュが「パリ」と答えた。
さらに私は「パリの何区?」と聞いた。
彼は「19区」と言ったので、フランスから帰ってきたばかりで、その時パリの19区に住む友人のところで泊めてもらっていたことを話した。
「どのあたり?」と彼が尋ねてきたので、「ビュット・ショーモン公園の向かい」と言ったら、「えっー!!僕たちも向かいに住んでいたんだよ。住所は?」
私が番地を言うと、何と!!ついこの間まで、隣のマンションの住人だったそうだ!!
「何と言う奇遇なんだ!!」とムッシュの顔もほころぶ。「どこかですれ違っていたかもしれないね」
ほんとにこんな偶然があるのだなあとびっくりした。
先の夫婦の奥さんがパリに住んでいた時、子供が同じ学校に通っていて、それ以来の友人と言うことだ。
夫婦ぐるみで仲良しになって、パリとアヴィニョンと離れているが、別荘は隣同士で買ったとか。
この奥さんたち、仲良くなった時は、それぞれ別のご主人だったはずだ。
今、どちらも再婚カップルなのである。
もちろん翌日の夕食にこちらの夫妻も一緒に招待することにした。