カルナックに行った翌日朝早く、ジャクリーヌとフィリップが迎えに来た。
レンヌのムッシュは、「ゆっくり寝ているので、朝ごはんを適当に食べて」と、言ってくれた。
だからアパルトマンに泊まっているかのように、冷蔵庫から色々出して、自分で朝食を用意するのもまた楽しいことだった。
午前中は、ジャクリーヌとフィリップがレンヌ市の市場に連れて行ってくれた。
フランスではこういう市場がどの町にも必ずある。パリにももちろんある。
各個人の店がテント張りなどで週の特定の日にずらりと出るのである。
スーパーでの買い物と違ってそこには売り方と客との楽しい会話が成立する。また毎週行くから店の人と客も顔なじみ同士である。売っているものは食料品が中心で、魚や野菜、果物など皆新鮮なものばかりで価格も手頃らしい。
フランス人は市場が好きだ。とにかく沢山の人が買い物に寄って来る。
この日そこで面白いものを見た。
有る若いカップルが、友人達に囲まれていた。その男性の方がまるでチンドン屋かピエロかと言うような奇妙な格好をしていて、人の大勢いる市場をこれまた海賊などに扮装した友人達に囲まれている。
女性の方はそんなに変な格好ではなく、少し飾り立てた服装で、女性の友人達に囲まれているだけだった。
やがて男性を囲んでいる友人達は笛やラッパや太鼓で、ドンチキチン、プップップと演奏しながら練り歩き始めた。
面白いので見ていると、ジャクリーヌにその尻尾をつけたような格好をしいている若い男性が何やら話をしている。すると突然すごく背の高いその男性とジャクリーヌがその場でダンスを始めたのである。
このミスマッチの二人のダンスはユーモラスで、もう可笑しくて可笑しくてたまらなかった。
後で聞くとそのカップルは明日結婚するのだそうで、こういう儀式を行う習慣になっているようだ。
マダムと踊ったのは、そうすると男性が幸せな新婚さんになれると言う言い伝えがあるかららしい。
ジャクリーヌ曰く「あなたのために私は、特別に踊ったのよ。普通ならしないわよ」とのことだった。イヤー珍しい光景を見せてもらった。それにしてもマダムの如才なさは賞賛に値した。