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法政大学 vs 大東文化大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.9.21)の感想

2014-10-03 02:03:42 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


「かつては」の話になってしまうが、関東リーグ戦Gの看板カードと言えば、秩父宮でのリーグ最終戦になることが多かった関東学院と法政の対戦と言って間違いないだろう。しかし、もっとも面白いカードとなると話は少し違ってくる。スタイルは違うものの、パスを主体とした攻撃的なランニングラグビーの応酬になる法政と大東大の対戦と個人的には思っている。遠い昔の話になりつつあるが、テレビ観戦だったが「三ツ沢の奇跡」(大東大の大逆転勝利)の興奮が未だに忘れられない。

仮にノーガードの撃ち合いのような状況になったとしても、「大味なゲーム」と言うよりも「血湧き肉躍る」と表現した方が正解と言えそうな楽しさがあるのがこの2チームの対戦。しかしながら、ここ数年の両校の対戦は、お互いにチーム状態が低迷気味ということもあり、今ひとつ盛り上がりに欠ける展開となっていた。両チームの攻撃力の低下が如実に反映された、野球に例えれば「貧打戦」となってファンを失望させることが多かったように思う。

だが、そんな状況も昨年の大東大の復活で変わりつつある。1対1の局面では果敢に勝負を挑み、相手を抜くことに楽しみを見いだしているような選手達が揃ったラグビーはやっぱり楽しい。となれば、もうひとつのチーム(法政)にも「復活」してもらわなければならない。大東大がどちらかと言えばクセ玉で勝負なのに対し、法政はストレート系の直球勝負。法政にとってはリーグ緒戦となるこのゲームで「復活」の兆しを見せてくれるだろうか。

ちなみに、私がリーグ戦Gの観戦を始めた頃の両チームの特長は、「15分までの(破壊的な攻撃力を持っていた)法政」と「(スロースターターだった)15分からの大東大」。果たしてこの試合はどうだっただろうか。



◆キックオフ前の雑感

大東大は緒戦と殆どメンバーが変わらないベストの布陣。ベテラン主体のFWとフレッシュな若手が中心のBK陣がかみ合った強力メンバーだ。中でも注目は日本人になったクルーガー・ラトゥ。青柳監督に「ロム-みたい」と言わせたサウマキが1人居るだけでもやっかいなのに、父親のラグビーセンスを受け継ぐ強力な選手が新たに加わったのだから、対戦相手にとっては厄介に違いない。クルーガーがチームに馴染んでいけば、CTBとしても面白いWTBサウマキと頻繁にポジションチェンジして相手を攪乱するのも面白いだろうなと夢は大きく膨らむ。

対する法政は西内主将など主力に故障者を抱えたやや不安なスターティングラインナップとなった。期待の牧野内も体調が万全ではないためかベンチスタート。この日SOを務めるのは4年生の北島だが、過去に観た記憶がない選手。少し古い話になるが、4年生で出場機会を掴んだ選手としてはFBの城戸が思い浮かぶ。最終学年で突然表舞台に出てくる選手が居るのは法政ならではと言ったところだろうか。リザーブ陣にもレギュラークラスが並んでいることといい、このメンバーならもっとやれるはずだと誰もが思うはず。春シーズンともメンバーが替わった法政がどんなラグビーを見せてくれるだろうか。



◆前半の戦い/大東大の先制パンチにひるむことなく強力なアタックで魅せた法政

法政のキックオフで試合開始。ノット10mかと思われたキックがうまくバウンドして10mラインを越えたところでタッチを割る。ここから、大東大の先制攻撃が始まった。FWの効果的なライン参加を交えながらパスを繋いでいき前進を図る大東大スタイルのアタックが満開となる。CTBクルーガーにWTBサウマキと並ぶラインはやはり強力。また、もう1人のWTB戸室も成長が著しく、去年のような迷いがなくプレーに参加している。

この試合の最初の得点は、そんな大東大によって記録された。法政がHWL付近で犯した反則に対し、大東大は法政ゴール前でのラインアウトから先制点を狙う。ここで強力にボールを前に運ぶのはNo.8テビタ、FL長谷川、LO鈴木といったFWの選手達、と書きたいところだが、勝負所?ではFWになってラックでファイトする11番の選手だった。サウマキは今や大東大にとって頼りになる9人目のFWとして機能している。3分、大東大はゴール前のラックからSH小山がパスアウトと見せかけて相手DFをかいくぐりながらゴールラインを突破。FB大道のGKも成功して、大東大が幸先よく7点を先制した。

しかしリスタートのキックオフで法政も反撃。マイボールの確保に成功して連続攻撃で前進を図るがゴール目前でオフサイドの反則を犯す。命拾いをした大東大は、HWL付近のラインアウトからオープンにボールを展開し、ライン参加したFBが得意のステップを活かしながら法政のディフェンダーをかわしてゴールラインまで到達。GKも成功して14-0と大東大がキックオフから8分で一方的に試合を進める展開となる。SH小山とFB大道は昨年度の大東大躍進の立役者と言っていい恐るべきルーキー達だったが、強気のアタックが持ち味。多少強引に思えても果敢に勝負を挑んで相手DFをぶち破ってしまうところは観ていて楽しい。(法政は6分にBKの要でもあるCTB金が負傷退場し春にはSOでスタメンだった井上と交代する。法政に不安を感じさせた選手交代だったが、井上も果敢な突破で見せ場を作る。)

先制パンチ2発で大東大が一気に試合を決めてしまうかと思わせるような勢いだったが、攻撃ラグビーを標榜する法政も黙っていない。強力なFWのタテ攻撃を起点として、素早くテンポよくシンプルに順目でアタックを試み強力にボールを前に運ぶ。早い段階でリードを奪った大東大に安心感が出てしまったのかも知れないが、ここからゲームの流れが大きく法政に傾くからラグビーはわからない。12分、法政は大東大陣10m/22mの位置でのセンタースクラムのチャンスから連続攻撃でWTB藤崎がトライを返す。GKは失敗したが、5-14と法政は反撃の狼煙を上げる。大東大はここで大道が負傷のため岡と交替する。岡はWTBに入り、サウマキがFBに回った。

得点を挙げると法政のチャンスは一気に拡がる。なぜなら、法政には「キックオフリターン」を得意とするアタッカーがFWに揃っているから。HO小池は当然マークすべき選手だが、LO川地は西内や牧野内の不在を全く感じさせない強力にボールを前に運ぶことができる選手。そこにルーキーのNo.8増田も加わり元気いっぱいのアタックを見せる。FWがタテに大きくゲインできればあとはHB団がテンポよくBKにボールを供給すればよい。あくまでも順目、順目でボールを動かしていく法政に対し、大東大のディフェンスが遅れ気味となる。最初のトライの余韻が覚めやらぬ僅か1分後に、川地の強力なタテ突破を起点として法政にノーホイッスルトライが記録される。今度はGKも成功し12-14と大東大のリードは僅か2点に縮まってしまった。

先制パンチ2発に対し、クロスカウンター2発を返されたことで序盤の大東大優位のムードはどこかに行ってしまう。形勢を一気に逆転できたことで法政のアタックに火が付き、大東大は防戦一方の展開となる。ときおり、大東大はBDでボールを奪い返して逆襲に転じるものの後が続かない。法政のスピードとテンポがかみ合ったアタックにディフェンスが遅れ気味となり、何とか失点を防ぐ展開。大東大の選手達の表情に「こんなはずではなかったのに」といったような焦りの色が見える。34分、遂に大東大の自陣ゴールを背にしたディフェンスに穴が開き、法政に逆転トライが生まれた。GK成功で19-14となる。

法政は攻撃の手を緩めない。39分には大東大陣G前で反則を誘い、FB犬飼が右中間22mのPGを慎重に決めて22-14とリードをさらに拡げた。大東大にとって、1T1Gでも追いつけない8点差は重い。大東大は殆ど反撃できないまま前半が終了した。それにしても、誰がこんな展開、そして法政の自身が忘れかけていた目の覚めるようなアタックを予測できただろうか。この試合に限っては、冒頭で書いた「15分までの法政」と「15分からの大東大」がまったく逆になってしまった。



◆後半の戦い/大東大が火の出るようなディフェンスで劣勢挽回に成功し圧勝

幸先よく先制したものの、法政の速い展開について行けなかった大東大。果たして後半はどのような形で立て直してくるかに注目が集まった。昨シーズンも、巧みなベンチワークで劣勢挽回に成功した試合があり、大東大ファンは青柳監督の手腕に一縷の望みをかける。一方の法政はこのまま大東大を振り切ってしまいたいところ。前半の勢いが続くなら、大東大の反撃のチャンスは少なくなるはずと、法政ファンの期待が膨らむ形で後半が始まった。

果たして、後半も法政の勢いは止まらない。前半同様にスピーディーな展開でせめ続ける。しかし、大東大には救世主が居た。もっとも期待を集めたルーキーのクルーガー・ラトゥがその人。3分、大東大は自陣10m/22mの位置でのスクラムから右オープンに展開してSH小山がWTB14の戸室に絶妙の飛ばしパス。戸室がしっかりボールを前に運んだあとこれも絶妙のタイミングでパスをフォローしたCTBクルーガーに渡す。走力に自信を持つクルーガーにとってこれがラストパスとなり、小山がGKを決めて21-22と大東大のビハインドは僅か1点に縮まった。結果論になってしまうが、大東大にとって後半の早い段階で1トライ返せたことは大きかった。このプレーに限らず、戸室は昨シーズンに比べると著しい成長を遂げた選手と言える。同期の小山、川向、大道らに先を越された感があったが、戸室も背番号14を確実にゲットしたと言ってよさそう。

期待の新人による起死回生のトライで大東大に落ち着きが出る。法政の怒涛のアタックに対し、SH小山を筆頭に、BKが全員で強力に前に出て法政BKにプレッシャーをかけるディフェンスを敢行する。アンブレラとかスライドといった(きれいな)言葉では言い表せないかなり強引とも言えるディフェンスだが、この策が功を奏し、法政のアタックからキレが徐々に失われていく。ハーフタイムにベンチが授けた指示は落ち着くことと、ディフェンスではどんどん前にプレッシャーをかけることだったのではないだろうか。11分にはサウマキも爆発して28-22(GK成功)と遂に大東大が逆転に成功する。

大東大のプレッシャーと逆襲の前に今度は法政に焦りが見られるようになる。13分のリスタートのキックオフはノット10m、15分のラインアウトはノットストレート、さらに危険なタックルと法政はミスを連発する。18分には法政ゴール前のラインアウトからオープンに展開してクルーガーからサウマキにラストパスが渡り33-22(GKはポスト直撃で失敗)と大東大が法政を突き放す。24分にはHWL付近でのラインアウトからSO川向がウラに抜けてWTB岡にパス。岡は快足を飛ばしてゴールラインを越え、派手にダイビングしてトライ。ノックオンしたら笑いの種どころか大目玉を喰らうプレーだがよっぽど嬉しかったのだろう。40-22と大東大のリードは18点となった。

大東大のこの強さを活かした逆襲の前に組織がなくなりスクランブルのような状態になった法政だが、攻撃にかける気持ちは負けていない。33分、法政は大東大のパスミスを拾う形ではあったが、半井が快足を飛ばして一矢報いる。残り時間が少なくなっているとは言え、2T2Gで逆転可能な13点のビハインドは大東にとっても安心できる点差ではない。法政の死力を尽くした攻勢が続く。このままノーサイドかと思われた40分、大東大のFL長谷川がラックからこぼれ出たボールを拾って60mを走りきりゴールポスト直下に達する。法政の選手に長谷川を追いかける力は残っていなかった。GKは難なく成功して47-27となり、ここで両チームによりアタックの応酬にピリオドが打たれた。



◆久々に魅せてくれた法政の超攻撃的ラグビー

この試合で一番印象に残っているのは、法政が久々に見せてくれたテンポよくボールをオープンに展開する高速アタック。ここ数年でも記憶がないくらいに素晴らしく、そして対戦相手にとっては脅威を感じさせるアタックだった。法政は前半飛ばしすぎだったという声も聞かれる。確かにそうだったかも知れない。でも、逆に言えば、たとえ40分間だけでも、スピードとテンポで相手を振り切ってしまうだけのアタックができると言うことを示した意味は大きいと思う。体力的にきつかったとしても限界を知ったことで次のステップに行けるはずだから。惜しむらくは法政に「組織」が欲しいところ。「戦術」はチームを組織的に雁字搦めにするのではなく、いい意味での省エネによりゲームを優位に進める手段になり得る。また、相手の戦術に対応するためにも「理解」は必要だと思う。「法政恐るべし」であることは間違いないが、「法政もったいない」と感じたことも付記しておく。

◆結果的に快勝だった大東大だが一抹の不安も

難敵と見られた法政を打ち破り、悲願の覇権奪還に向けて大きく前進した大東大。だが、嬉しい勝利の中にも一抹の不安を感じさせた戦いだった。それは、前半に法政のアタックに対応仕切れなかったディフェンスではなく、頭をもたげ始めたもっとも強力かつ克服が困難な「内なる敵」との戦いが始まったように見えたこと。顕著だったのはアタックの局面で、得点を取りたい気持ちが強かったこともあるが、個々で強引に突破を図る形が多かったように感じられた。個の力が強いチームが陥りやすい問題とも言える。春の慶應戦で見せたようなFWとBKでユニットを組み、SH小山がパスの選択肢を常に複数持つような形が殆ど見られなかったのは戦術変更のためではないと思いたい。理想は帝京のようにどのような相手でも組織を崩さずに個人が無理をしないでトライを取れるラグビーだと思う。また、その方が消耗もケガも少なくなるはず。スクランブル気味に感じられたディフェンスにしてもこの試合限定と思いたい。そうでないとリーグ終盤ではレギュラーが何人残っているかという状況になる可能性があり、それは大東大自身が一番畏れていることのはずだ。迫力満点のとても面白い試合だったが、それだけで終わらせて欲しくないと思った。

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2 コメント

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確かに法政は速いですね (セブンスゴールド)
2014-10-03 19:32:28
リポートを楽しく拝見しました。
この試合の両チームの攻撃力は、みていていても楽しいですね。

法政のスタンドオフ北島選手は、初めて見ましたが、状況をよく見てプレーしていましたね。
文字選手以来の久しぶりに(法政には失礼!)、クレバーで、ひたむきなスタンドオフだとおもいました。

これからの法政には、注目していきます。
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Unknown (tk)
2014-10-03 09:45:36
大東は破壊力ありますね。今後どこまでいくか楽しみです。法政はまだまだ色々と課題はあるでしょうけど、過去のものとなっていた感のある高速ラグビーが復活し、面白い存在になりましたね。北島は、怪我や他の選手との兼ね合いでこれまでチャンスが巡ってきませんでしたが、コツコツと真面目にやってきたからこそつかんだ今回のレギュラーだと思います。プレースタイルも好感が持てるのでがんばって欲しいです。
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