爆弾低気圧の通過に伴う天候悪化の影響が心配されたYC&ACセブンズだったが、突風混じりの強風に悩まされた程度で済んだ。快晴のまずまずのコンディションのもと熱戦が繰り広げられ、楽しい1日を過ごすことができた。関東大学のリーグ戦G目線になってしまうが、印象に残ったチームや選手のことを書いて見たい。
実は、この伝統的なセブンズを体験するのはこの日が初めて。今回は、関東の大学チームが中心でそこにホストチーム(YC&AC)とクラブチームの2つ(神奈川タマリバと北海道バーバリアンズ)が加わった形となった。先週の世界レベルの大会(東京セブンズ)と比べるのは酷とはいうものの、関東の主要学生チームの状況を垣間見ることができ、実りが多かった1日だった。
【1回戦8試合】
○拓殖大学 22-14 ●日本体育大学
●成蹊大学 12-44 ○東海大学
●北海道バーバリアンズ 17-28 ○日本大学
●関東学院大学 0-52 ○YC&AC
○帝京大学 48-14 ●慶應義塾大学
○早稲田大学 40-19 ●神奈川タマリバクラブ
○流通経済大学 27-0 ●青山学院大学
●中央大学 0-61 ○筑波大学
※敗者8校はコンソレーショントーナメントへ
第1試合は9時30分から開始。さすがに選手達の身体も目覚めていないようで、拓大もタックルがなかなか決まらない。というか、拓大らしからぬ高いタックルに終始していた感があり、能力の高いランナー達を揃えた日体大に再三突破を許す場面も見られた。ウヴェのパワフルなランとパトリック・ステイリンのゲームメイクにより何とか勝てた感が強い。ただ、前途に不安を抱かせる勝利ではあったものの、昨シーズンに比べて全般的に小粒な各選手の胸板が厚くなっていることが実感された。オフシーズンの間もしっかり身体を作っていた様子がうかがわれた。
第2試合を戦った東海大も拓大同様にタックルが高いのが気になった。東海大の選手達は身体ができている分、相手を倒すよりも捕まえてボールを奪い取ってしまう意識が強いのかも知れない。ただし、セブンズの基本は低いタックルで相手をしっかり倒すことにあると思う。そう考えると、東海大の場合は15人制の意識がなかなか抜け切れていないのかも知れない。試合はリーグ戦G屈指のエースの1人である小原、昨シーズンにルーキーながらも強力なライバル達を抑えてWTBの定位置をつかみ取った石井らの活躍により圧勝だった。
拓大と東海が不安を感じさせた状況の中で、次に登場した日大はしっかりチームができているという印象を受けた。マイケル・バー・トロケが看板選手として残っているものの、SH小川の抜けた影響が心配されたが、個々のプレーヤーの判断力とチームワークで戦えるチームへと成長を遂げたようだ。そもそも、小川が特別のSHだったと考えればよいわけだから。再三力強い突破を見せたFWの大窪の成長が明るい材料で、高橋慶も地味ながらもリンクプレーヤーとして随所で光るプレーを見せる。曲者が揃った北海道バーバリアンズ(但し、看板選手のトゥキリは出場せず)を振り切って緒戦突破を果たした。
関東学院は今年もサイズで苦しみそうだ。緒戦の相手が優勝候補筆頭のYC&ACだからということもあるが、大人と子供くらいの体格差があり、相当苦しい戦いとなることが予想された。さらに、YC&ACにはつい先週、東京セブンズで日本代表の一員として大活躍したジェイミー・ヘンリーがサプライズメンバーとして加入。体格差と実力差はいかんともしがたく、関東学院はいいところなく完敗となった。ただし、ジェイミーの余裕たっぷりのプレーぶりを目の当たりにすると、ジャパンにとって「ニュースター」の登場は明るい材料だ。
その他、レギュラークラスで固めた帝京は個々のパワーで慶應を圧倒し、早稲田もタマリバをスピードに乗った攻撃で翻弄してそれぞれ難なく緒戦突破。筑波は福岡や竹中と言ったスピードスター不在だったものの、同じくエース羽野(日本代表)の不在でもたつきを見せる中央に対して予想外の圧勝を収めた。筑波には次代のスター候補もいてなかなか楽しみではある。なお、タマリバには早稲田出身の福田恒輝や関東学院出身の竹山将史といった(大学ラグビーファンには懐かしい)選手達が居てチームをけん引し存在感を見せていた。
順序が逆になったが、流通経済大もなかなかのスター軍団。東京セブンズにフィジー代表として招集されたリリダム・ジョセファは別格としても、トリッキーなランで注目を集める合谷、スピードランナーの屋宜ショーンロバート、パワーとスピードを兼ね備えた高森と並べただけでも相手にとっては脅威のはず。ここに、昨シーズンは出場機会のなかった巨漢のジョージ・リサレが加わったから、リーグ戦G関係者にとっては頭痛のタネが増えた感じ。矢次が控えに回る何とも贅沢なメンバー構成だが、この日の最大の発見は再三鋭い突破を見せた廣大河。対する青山学院はよく27失点にとどめることができたと言えそうだ。
【コンソレーション・準々決勝】
○日本体育大学 40-12 ●成城大学
●北海道バーバリアンズ 10-35 ○関東学院大学
○神奈川タマリバクラブ 19-14 ●慶應義塾大学
○中央大学 41-14 ●青山学院大学
1回戦でYC&AC、筑波大にそれぞれ大敗して意気消沈かと思われた関東学院と中央大だったが、気持ちを切り替えて試合に臨めたようだ。関東学院は序盤こそ北海道バーバリアンズのパワーに苦しめられたものの、相手がだんだんバテてきたこともあり、速い展開で翻弄して圧勝。セブンズとは言え、関東学院の勝利(しかも快勝)を観たのは本当に久しぶりだ。中央大も水上、藤原、山下といった能力の高い選手を揃えているチームなので、勢いに乗れば結果が出せることが証明された形。とくに目を引いたのはルーキーながら抜群のスピードで魅せてくれた住吉藍好(光泉高校出身)で、同じピッチ上にいた正SHの高崎もうかうかしてはいられないと感じたはず。
日体大は伝統のランニングラグビーを思い出したかのような溌溂としたプレーぶりで成蹊大を圧倒。成蹊も内容では日体大を上回っていた部分があったと思うが、運動能力の差が出たという印象。1回戦では早稲田に苦杯を喫したタマリバだったが、ベテラン勢の活躍により粘り勝ちを収めた。
【コンソレーション・準決勝】
○日本体育大学 31-12 ●関東学院大学
○神奈川タマリバクラブ 19-17 ●中央大学
北海道バーバリアンズを相手に圧勝した関東学院だったが、ランニング能力の高い選手を揃えた日体大は厳しい相手だったようだ。中央大は本当に惜しかった。あと少し粘れば17-12で勝利を収めて決勝進出というところだったが、土壇場でタマリバの粘り遭ってまさかの逆転負け。どこか15人制(惜敗の中央)での戦いぶりを連想させるような負け方だったが、この教訓を糧に頑張って欲しいところ。チーム一丸となった応援など、体質の変化も感じられる。
【コンソレーション・決勝】
○神奈川タマリバクラブ 19-17 ●日本体育大学
またしてもタマリバが土壇場での逆転で栄冠を掴んだ。殆ど勝利を掴みかけていた日体大は、まさか自分たちも中央大と同じ目に遭うとは思っていなかったのではないだろうか。タマリバの粘りはお見事というほかないが、中央大戦同様、後半から登場した福田恒輝が確かな存在感を示した試合でもあった。タマリバは体力的には厳しい面があったと思うが、執念の勝利に拍手を贈りたい。
【準々決勝】
●拓殖大学 19-24 ○東海大学
○YC&AC 36-10 ●日本大学
●帝京大学 14-26 ○早稲田大学
○流通経済大学 21-7 ●筑波大学
緒戦ではやや精彩を欠いた拓大と東海だったが、しっかりと目覚めたようで両チームのエースがそろい踏みとなる熱戦となった。先制トライは東海の又川で拓大も山谷が1本返して前半は同点。後半は開始早々にウヴェがトライを奪って拓大がリードするが、東海も石井が2連続トライで逆転に成功する。このまま東海が逃げ切るかと思われたがウヴェが土壇場でトライを決め、サドンデス方式の延長戦へ。キックオフは東海で拓大がボールキープに成功すれば勝利というところだったが、東海がターンオーバーに成功し、最後はエースの小原が決めた。なかなか見応えがある戦いだった。
YC&ACと日大の戦いは最終的に地力に勝るYC&ACの圧勝となったが、前半は日大も組織力で食い下がりを見せて頑張っていた。しかしながら、ここでもジェイミーの存在が大きく、終盤は一方的な展開となってしまった。早稲田と帝京の戦いも対抗戦Gの前哨戦といった感じで白熱した試合となった。当初は帝京のパワーが早稲田を圧倒するかと思われたが、早稲田が持ち味の展開ラグビーでペースを掴み、帝京を翻弄する形となって勝利を収めた。
流経大と筑波の「茨城ダービー」も激戦となった。リリダム、高森のトライで流経大がリードを奪ったが、筑波も1トライを返す。流経大はリザレとリリダムが相次いでイエローカードをもらい、一時はフィールドプレーヤーが5人となる苦境に立たされたものの、高森と廣がトライを奪って逃げ切り準決勝にコマを進めた。筑波はスピードスター達(竹中と福岡)の欠場が響いた格好だが、今シーズンも強力なチームができあがりそうだ。
【準決勝】
○東海大学 14-7 ●YC&AC
●早稲田大学 12-26 ○流通経済大学
ジャパンのエースの参加もあって東海の苦戦が予想された準決勝の1試合目だったが、YC&ACに疲れが見えてやや精彩を欠く状況。東海が2トライを挙げて優位に試合を進めるなか、YC&ACは1トライを返すに留まり連覇も消滅となった。流経大と早稲田の戦いは、スターを揃えた流経大のアタックを早稲田が止めることができず、流経大の圧勝となった。ちょっと気が早いが、大学選手権の晴れ舞台でもこんな流経大が観たい!というのはリーグ戦G応援団の勝手な妄想。
【決勝】
●東海大学 17-51 ○流通経済大学
優勝を賭けた戦いであると同時に、目下のリーグ戦G2強による意地と意地のぶつかり合い。拮抗した好ゲームとなることが期待されたが、意外なほどの大差が付いてしまった。流経大がトライを重ねる中で、東海大がすっかり大人しくなってしまったことが気になる。準決勝まで大活躍だった小原と石井を欠く陣容ではあったが、彼らに代わって頑張らなければならないエース候補に元気がないように見えたのが残念。リベンジのチャンスはあと2回あるので、東海はこのままで終われないはずだし、終わって欲しくない。メンバー的には当然の結果とも言えるが、実力をいかんなく発揮した流経大に拍手を贈りたい。
◆今シーズンのリーグ戦Gの行方を占う
もちろん、早すぎることは承知の上で率直な感想を書く。まず、第一に言えることは流経大が非常に楽しみだということ。リーグ戦屈指のスター軍団は東海や帝京と比べても遜色のないマッチョ軍団でもある。FW、BKを問わず選手個々の胸板の厚さが目を引いた。合谷も一回り大きくなった印象で今シーズンはさらなる飛躍が期待される。東海もスター軍団のはずだが、昨シーズン猛威を奮った100キロ超級FLトリオの卒業によりどんな形にモデルチェンジしていくのかがこの日の戦いぶりからは見えてこなかった。小原、石井に続くべき選手達のパワーアップに期待したいところだ。
東海大にサドンデスの延長戦で敗れて涙を呑んだ拓大は、今シーズンさらなる飛躍を果たしたいところ。ウヴェを除けば相変わらず小粒な選手達ではあるが、昨シーズンに比べると身体の厚みが増した感じで、今シーズンはBKの攻撃力が増すことだろう。ウヴェとパトリックの2枚看板がしっかりしているだけに優勝争いに加わって欲しい。
チームのまとまりがいいと感じられたのは日大。小川の卒業による攻撃力ダウンの心配は杞憂に終わりそうだし、そうあって欲しい。組織的に戦うことを意識しつつ、個々の判断力が活きるラグビーが完成しつつあると見る。緒戦に筑波に思わぬ大敗を喫して心配された中央だが、元来は好素材が揃ったチーム。コンソレーションで立て直しができたことは明るい材料だと思う。今シーズンから加わった酒井コーチの手腕にも期待したいところ。
といったように1部リーグのチームは概ね上がり目で心配はなさそう。大東、法政、立正は今度のリーグ戦セブンズでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ。残念ながら2部降格となった関東学院は今シーズンもサイズ面で苦しみそうだ。ただ、ひとつ快勝することができたことは精神面でプラス材料だと思う。
◆全般を振り返って
1週間前の東京セブンズに比べると、残念ながら、セブンズというよりは15人制のミニチュア版といった感じの大会だった。東日本大学セブンズが終われば、次の週からは春季大会が始まるため、各チームともセブンズに時間をかけられない状況にあるのだから仕方がないと思う。ただ、そんな状況にあるからこそ、各チームの普段の練習に対する取り組み姿勢が垣間見られる部分があり、個人的には面白かった。
大学生のセブンズを4月限定の春の風物詩に終わらせてしまうのはもったいないし、全国展開にも期待したいところ。そう思うと、こと大学ラグビーに関しては、セブンズに真剣に取り組むのが難しい状況になってきているのが残念に思われる。
実は、この伝統的なセブンズを体験するのはこの日が初めて。今回は、関東の大学チームが中心でそこにホストチーム(YC&AC)とクラブチームの2つ(神奈川タマリバと北海道バーバリアンズ)が加わった形となった。先週の世界レベルの大会(東京セブンズ)と比べるのは酷とはいうものの、関東の主要学生チームの状況を垣間見ることができ、実りが多かった1日だった。
【1回戦8試合】
○拓殖大学 22-14 ●日本体育大学
●成蹊大学 12-44 ○東海大学
●北海道バーバリアンズ 17-28 ○日本大学
●関東学院大学 0-52 ○YC&AC
○帝京大学 48-14 ●慶應義塾大学
○早稲田大学 40-19 ●神奈川タマリバクラブ
○流通経済大学 27-0 ●青山学院大学
●中央大学 0-61 ○筑波大学
※敗者8校はコンソレーショントーナメントへ
第1試合は9時30分から開始。さすがに選手達の身体も目覚めていないようで、拓大もタックルがなかなか決まらない。というか、拓大らしからぬ高いタックルに終始していた感があり、能力の高いランナー達を揃えた日体大に再三突破を許す場面も見られた。ウヴェのパワフルなランとパトリック・ステイリンのゲームメイクにより何とか勝てた感が強い。ただ、前途に不安を抱かせる勝利ではあったものの、昨シーズンに比べて全般的に小粒な各選手の胸板が厚くなっていることが実感された。オフシーズンの間もしっかり身体を作っていた様子がうかがわれた。
第2試合を戦った東海大も拓大同様にタックルが高いのが気になった。東海大の選手達は身体ができている分、相手を倒すよりも捕まえてボールを奪い取ってしまう意識が強いのかも知れない。ただし、セブンズの基本は低いタックルで相手をしっかり倒すことにあると思う。そう考えると、東海大の場合は15人制の意識がなかなか抜け切れていないのかも知れない。試合はリーグ戦G屈指のエースの1人である小原、昨シーズンにルーキーながらも強力なライバル達を抑えてWTBの定位置をつかみ取った石井らの活躍により圧勝だった。
拓大と東海が不安を感じさせた状況の中で、次に登場した日大はしっかりチームができているという印象を受けた。マイケル・バー・トロケが看板選手として残っているものの、SH小川の抜けた影響が心配されたが、個々のプレーヤーの判断力とチームワークで戦えるチームへと成長を遂げたようだ。そもそも、小川が特別のSHだったと考えればよいわけだから。再三力強い突破を見せたFWの大窪の成長が明るい材料で、高橋慶も地味ながらもリンクプレーヤーとして随所で光るプレーを見せる。曲者が揃った北海道バーバリアンズ(但し、看板選手のトゥキリは出場せず)を振り切って緒戦突破を果たした。
関東学院は今年もサイズで苦しみそうだ。緒戦の相手が優勝候補筆頭のYC&ACだからということもあるが、大人と子供くらいの体格差があり、相当苦しい戦いとなることが予想された。さらに、YC&ACにはつい先週、東京セブンズで日本代表の一員として大活躍したジェイミー・ヘンリーがサプライズメンバーとして加入。体格差と実力差はいかんともしがたく、関東学院はいいところなく完敗となった。ただし、ジェイミーの余裕たっぷりのプレーぶりを目の当たりにすると、ジャパンにとって「ニュースター」の登場は明るい材料だ。
その他、レギュラークラスで固めた帝京は個々のパワーで慶應を圧倒し、早稲田もタマリバをスピードに乗った攻撃で翻弄してそれぞれ難なく緒戦突破。筑波は福岡や竹中と言ったスピードスター不在だったものの、同じくエース羽野(日本代表)の不在でもたつきを見せる中央に対して予想外の圧勝を収めた。筑波には次代のスター候補もいてなかなか楽しみではある。なお、タマリバには早稲田出身の福田恒輝や関東学院出身の竹山将史といった(大学ラグビーファンには懐かしい)選手達が居てチームをけん引し存在感を見せていた。
順序が逆になったが、流通経済大もなかなかのスター軍団。東京セブンズにフィジー代表として招集されたリリダム・ジョセファは別格としても、トリッキーなランで注目を集める合谷、スピードランナーの屋宜ショーンロバート、パワーとスピードを兼ね備えた高森と並べただけでも相手にとっては脅威のはず。ここに、昨シーズンは出場機会のなかった巨漢のジョージ・リサレが加わったから、リーグ戦G関係者にとっては頭痛のタネが増えた感じ。矢次が控えに回る何とも贅沢なメンバー構成だが、この日の最大の発見は再三鋭い突破を見せた廣大河。対する青山学院はよく27失点にとどめることができたと言えそうだ。
【コンソレーション・準々決勝】
○日本体育大学 40-12 ●成城大学
●北海道バーバリアンズ 10-35 ○関東学院大学
○神奈川タマリバクラブ 19-14 ●慶應義塾大学
○中央大学 41-14 ●青山学院大学
1回戦でYC&AC、筑波大にそれぞれ大敗して意気消沈かと思われた関東学院と中央大だったが、気持ちを切り替えて試合に臨めたようだ。関東学院は序盤こそ北海道バーバリアンズのパワーに苦しめられたものの、相手がだんだんバテてきたこともあり、速い展開で翻弄して圧勝。セブンズとは言え、関東学院の勝利(しかも快勝)を観たのは本当に久しぶりだ。中央大も水上、藤原、山下といった能力の高い選手を揃えているチームなので、勢いに乗れば結果が出せることが証明された形。とくに目を引いたのはルーキーながら抜群のスピードで魅せてくれた住吉藍好(光泉高校出身)で、同じピッチ上にいた正SHの高崎もうかうかしてはいられないと感じたはず。
日体大は伝統のランニングラグビーを思い出したかのような溌溂としたプレーぶりで成蹊大を圧倒。成蹊も内容では日体大を上回っていた部分があったと思うが、運動能力の差が出たという印象。1回戦では早稲田に苦杯を喫したタマリバだったが、ベテラン勢の活躍により粘り勝ちを収めた。
【コンソレーション・準決勝】
○日本体育大学 31-12 ●関東学院大学
○神奈川タマリバクラブ 19-17 ●中央大学
北海道バーバリアンズを相手に圧勝した関東学院だったが、ランニング能力の高い選手を揃えた日体大は厳しい相手だったようだ。中央大は本当に惜しかった。あと少し粘れば17-12で勝利を収めて決勝進出というところだったが、土壇場でタマリバの粘り遭ってまさかの逆転負け。どこか15人制(惜敗の中央)での戦いぶりを連想させるような負け方だったが、この教訓を糧に頑張って欲しいところ。チーム一丸となった応援など、体質の変化も感じられる。
【コンソレーション・決勝】
○神奈川タマリバクラブ 19-17 ●日本体育大学
またしてもタマリバが土壇場での逆転で栄冠を掴んだ。殆ど勝利を掴みかけていた日体大は、まさか自分たちも中央大と同じ目に遭うとは思っていなかったのではないだろうか。タマリバの粘りはお見事というほかないが、中央大戦同様、後半から登場した福田恒輝が確かな存在感を示した試合でもあった。タマリバは体力的には厳しい面があったと思うが、執念の勝利に拍手を贈りたい。
【準々決勝】
●拓殖大学 19-24 ○東海大学
○YC&AC 36-10 ●日本大学
●帝京大学 14-26 ○早稲田大学
○流通経済大学 21-7 ●筑波大学
緒戦ではやや精彩を欠いた拓大と東海だったが、しっかりと目覚めたようで両チームのエースがそろい踏みとなる熱戦となった。先制トライは東海の又川で拓大も山谷が1本返して前半は同点。後半は開始早々にウヴェがトライを奪って拓大がリードするが、東海も石井が2連続トライで逆転に成功する。このまま東海が逃げ切るかと思われたがウヴェが土壇場でトライを決め、サドンデス方式の延長戦へ。キックオフは東海で拓大がボールキープに成功すれば勝利というところだったが、東海がターンオーバーに成功し、最後はエースの小原が決めた。なかなか見応えがある戦いだった。
YC&ACと日大の戦いは最終的に地力に勝るYC&ACの圧勝となったが、前半は日大も組織力で食い下がりを見せて頑張っていた。しかしながら、ここでもジェイミーの存在が大きく、終盤は一方的な展開となってしまった。早稲田と帝京の戦いも対抗戦Gの前哨戦といった感じで白熱した試合となった。当初は帝京のパワーが早稲田を圧倒するかと思われたが、早稲田が持ち味の展開ラグビーでペースを掴み、帝京を翻弄する形となって勝利を収めた。
流経大と筑波の「茨城ダービー」も激戦となった。リリダム、高森のトライで流経大がリードを奪ったが、筑波も1トライを返す。流経大はリザレとリリダムが相次いでイエローカードをもらい、一時はフィールドプレーヤーが5人となる苦境に立たされたものの、高森と廣がトライを奪って逃げ切り準決勝にコマを進めた。筑波はスピードスター達(竹中と福岡)の欠場が響いた格好だが、今シーズンも強力なチームができあがりそうだ。
【準決勝】
○東海大学 14-7 ●YC&AC
●早稲田大学 12-26 ○流通経済大学
ジャパンのエースの参加もあって東海の苦戦が予想された準決勝の1試合目だったが、YC&ACに疲れが見えてやや精彩を欠く状況。東海が2トライを挙げて優位に試合を進めるなか、YC&ACは1トライを返すに留まり連覇も消滅となった。流経大と早稲田の戦いは、スターを揃えた流経大のアタックを早稲田が止めることができず、流経大の圧勝となった。ちょっと気が早いが、大学選手権の晴れ舞台でもこんな流経大が観たい!というのはリーグ戦G応援団の勝手な妄想。
【決勝】
●東海大学 17-51 ○流通経済大学
優勝を賭けた戦いであると同時に、目下のリーグ戦G2強による意地と意地のぶつかり合い。拮抗した好ゲームとなることが期待されたが、意外なほどの大差が付いてしまった。流経大がトライを重ねる中で、東海大がすっかり大人しくなってしまったことが気になる。準決勝まで大活躍だった小原と石井を欠く陣容ではあったが、彼らに代わって頑張らなければならないエース候補に元気がないように見えたのが残念。リベンジのチャンスはあと2回あるので、東海はこのままで終われないはずだし、終わって欲しくない。メンバー的には当然の結果とも言えるが、実力をいかんなく発揮した流経大に拍手を贈りたい。
◆今シーズンのリーグ戦Gの行方を占う
もちろん、早すぎることは承知の上で率直な感想を書く。まず、第一に言えることは流経大が非常に楽しみだということ。リーグ戦屈指のスター軍団は東海や帝京と比べても遜色のないマッチョ軍団でもある。FW、BKを問わず選手個々の胸板の厚さが目を引いた。合谷も一回り大きくなった印象で今シーズンはさらなる飛躍が期待される。東海もスター軍団のはずだが、昨シーズン猛威を奮った100キロ超級FLトリオの卒業によりどんな形にモデルチェンジしていくのかがこの日の戦いぶりからは見えてこなかった。小原、石井に続くべき選手達のパワーアップに期待したいところだ。
東海大にサドンデスの延長戦で敗れて涙を呑んだ拓大は、今シーズンさらなる飛躍を果たしたいところ。ウヴェを除けば相変わらず小粒な選手達ではあるが、昨シーズンに比べると身体の厚みが増した感じで、今シーズンはBKの攻撃力が増すことだろう。ウヴェとパトリックの2枚看板がしっかりしているだけに優勝争いに加わって欲しい。
チームのまとまりがいいと感じられたのは日大。小川の卒業による攻撃力ダウンの心配は杞憂に終わりそうだし、そうあって欲しい。組織的に戦うことを意識しつつ、個々の判断力が活きるラグビーが完成しつつあると見る。緒戦に筑波に思わぬ大敗を喫して心配された中央だが、元来は好素材が揃ったチーム。コンソレーションで立て直しができたことは明るい材料だと思う。今シーズンから加わった酒井コーチの手腕にも期待したいところ。
といったように1部リーグのチームは概ね上がり目で心配はなさそう。大東、法政、立正は今度のリーグ戦セブンズでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ。残念ながら2部降格となった関東学院は今シーズンもサイズ面で苦しみそうだ。ただ、ひとつ快勝することができたことは精神面でプラス材料だと思う。
◆全般を振り返って
1週間前の東京セブンズに比べると、残念ながら、セブンズというよりは15人制のミニチュア版といった感じの大会だった。東日本大学セブンズが終われば、次の週からは春季大会が始まるため、各チームともセブンズに時間をかけられない状況にあるのだから仕方がないと思う。ただ、そんな状況にあるからこそ、各チームの普段の練習に対する取り組み姿勢が垣間見られる部分があり、個人的には面白かった。
大学生のセブンズを4月限定の春の風物詩に終わらせてしまうのはもったいないし、全国展開にも期待したいところ。そう思うと、こと大学ラグビーに関しては、セブンズに真剣に取り組むのが難しい状況になってきているのが残念に思われる。