熊谷ラグビー場で12月20日に観戦した第二試合の余韻に浸っている。前ブログに書いたとおり、この日のメインは第一試合(75%)で、第二試合はおまけ(残り25%)のはずだった。しかしながら、第二試合観戦後は両者が完全に逆転し、かつおつりが来るような状態。大東大と慶應の選手達には申し訳ないが、第一試合は10%で第二試合は90%になってしまった。それくらい初見参の関西大学のラグビーが強いインパクトを残したのだった。
今日は録画してあったビデオでじっくり熱戦を振り返ってみた。経験的に言うと、テレビで観た場合は同じ試合でも生観戦とはかなり印象が違って見える。大抵はテレビの方が内容がいいように感じられる。しかし、そんなことを差し引いてもこの試合で見せた関大選手達のパフォーマンスは闘志溢れるものだったことを実感した。帝京の素晴らしいところは、真剣勝負で挑んでくる相手に対しては、真摯に対応して自分達のよい部分をしっかり見せてくれること。そして、立ち向かう相手に対してもよい部分を引き出してくれる。王者の王者たる所以で、残念ながら関東の他のチームでもここまでのラグビーはできない。
しかし、この試合を観て(朝ドラ主役のあさチャンの言葉を借りれば)「なんでだす?」の連発になってしまう。ひとつめは選手権1日目の中央大はこのチームによく勝てたなということ。二つ目はなぜ関西リーグの4位に留まったのかということ。もしコンスタントにこの日の帝京相手に見せたような戦いぶりができれば、関東のリーグ戦Gでも上位に食い込める。流石に東海大と流経大に対しては個の力の差でやられてしまうと思うが、他のチームなら十分に勝てると思う。正直な気持ち、無茶な注文だが関大に関東のリーグ戦Gに入ってもらい活を入れて欲しいと思っているくらい。
そんなことを思うのも、今シーズンの関東リーグ戦Gがよく言えば安定型、悪く言うと無風状態というか例年に比べても活気に欠けると感じられたから。上下間の力の差がはっきりし、7位と8位のチームは入替戦で敗れたのも頷ける内容だった。関東学院が横綱として君臨していた頃も確かに上下間の格差はあったが、下位チームがチャレンジ精神で試合に臨むことで引き締まったラグビーが出来ていたように記憶している。チャンピオンを目指すというよりも、ややもすると最低限が入替戦回避で大学選手権に出られる5位以上になればいいというような雰囲気も漂っているように感じられるのだ。もちろんチームで強くなることが大切だが、それも個々が強くなってのこと。選手ひとりひとりが上手くなりたい、強くなりたいという志を持たないとチームも強くならない。
関大の戦いぶりは、帝京とどう戦えばいいかについてヒントを与えてくれている。アタックではとにかく面で前に出て身体をあてること。帝京は繋ぐ意識が強いチームだからこそ、2回(プラスアルファ)のインターセプトのチャンスが生まれたと言える。逆にアタックではブレイクダウンに時間をかけずどんどんボールを動かしていく。そして、ディフェンスとは逆にギャップを見つけてそこに走り込む、あるいは飛ばしパスでスペースを作る。選手個々の闘魂がうまく1つに纏まったのがこの日の関大ではなかっただろうか。帝京の怖さは、ゴールに近づくにつれてアタックのテンポとスピードが上がっていくことで、この日の殆どのトライがその形から生まれている。
こうして振り返ってみると、関大はいいチームであると同時に面白いラグビーができるチームだと思う。アタックもディフェンスも(スタイルは違うが)前に出るという意識でチームが一体になっていると感じる。ディフェンスは愚直に、そしてアタックは奔放に。大学選手権の晴れ舞台で帝京に思いっきりぶつかっていったことで得るものが多かったのではなかっただろうか。関大はどんどん強くなっていって欲しいし、そうなると思う。
なんのために勝つのか。 (ラグビー日本代表を結束させたリーダーシップ論) | |
廣瀬 俊朗 | |
東洋館出版社 |