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第59回 YC&ACセブンズ(2018.4.1)の感想(その1)

2018-04-06 02:35:05 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


スーパーラグビーに参戦したサンウルブズのおかげで充実した気持ちで春が迎えられるここ3シーズン。しかし、ずっと7人制ラグビーの開花宣言のような位置づけになっている「YC&ACセブンズ」は重要なイベントで、毎年楽しませてもらっている。ひとつ残念なことは、この時期は天候不順のことが多く、花冷えのような環境での観戦を強いられること。

しかしながら、今年は例年になく暖かい陽気の中での開催となった。会場に着くと、もうひとつ嬉しいことがあった。YC&ACセブンズの醍醐味は、何と言ってもピッチサイドで観戦出来るところにある。ただ、難点は座席数が少なく立ち見が基本なこと。また、仮に座席に座ったとしても目線が選手より下がってしまう。このため、せっかくの近接観戦の醍醐味が失われる。今年も立ったままの観戦になることを覚悟して出かけたのだが、会場に着いてみるとメインと反対側に仮設のスタンドが設けられていた。また、いつもは出場チームのテントが立ち並ぶメイン側も、大会関係者のもの以外のテントの設営はなくすっきりしている。早くもキックオフ前から熱戦への期待がより高まる状態になっていた。



■今年も多彩な出場チーム

今シーズンも出場チームは以下のとおり、社会人/クラブ8チームと大学8チームの計16チーム。大学チームは関東の対抗戦Gとリーグ戦Gからそれぞれ4校ずつで、顔ぶれもほぼ決まっている。社会人も常連チームが主体のため、どこかフレンドリーな雰囲気が漂っている。

[社会人] 日野自動車レッドドルフィンズ、日本IBMビッグブルー、神奈川県選抜
[クラブ] サムライセブン、北海道バーバリアンズ、湘南ベルマーレ、神奈川タマリバクラブ、
YC&AC横浜カントリー&アスレチッククラブ
[大学(関東・対抗戦G)] 筑波大学、早稲田大学、青山学院大学、慶應義塾大学
[大学(関東・リーグ戦G)] 流通経済大学、東海大学、中央大学、日本大学

ここ数年はパワーと運動量に勝る大学生が優位の状況が続き、社会人/クラブチームは苦戦を強いられている。優勝候補は東海大と流通経済大の2校で、有力選手を揃える早稲田大学や筑波大学も虎視眈々と優勝を狙う。また、社会人/クラブチームでも大型選手と俊足ランナーをバランス良く揃えた北海道バーバリアンズやベテランを揃えて気合いと老獪な戦術を駆使して毎年熱い戦いを魅せる神奈川タマリバクラブの実力も侮りがたい。また、トップリーグ昇格を決めた日野自動車はひと味違う戦いを見せたいところ。さらに、今年のサプライズの選手は誰なのかなど、キックオフ前から興味は尽きない。

■1回戦8試合

1回戦は社会人(クラブ)同士、大学生同士と言った具合に、同じカテゴリー同士の対戦。勝敗もさることながら、16チームが次々と現れてまさに百花繚乱の賑わいを見せた。

[マッチNo.1]  ○北海道バーバリアンズ 33-5 ●湘南ベルマーレ(前半19-0)



北海道バーバリアンズは、ワールドシリーズのコアチーム復帰を賭けて香港で戦うことになったハイタワーのジョセ・セル不在が残念だが、スピードスターの平川の他にも大学ラグビーで活躍した選手を多く含む強力な陣容。ルーキーで専修大学出身の黒川ラフィがいきなり韋駄天ぶりを発揮してトライを奪うなど、北海道バーバリアンズが貫禄を見せての圧勝。平川は安定したゴールキックでも魅せた。後半に何とか一矢報いたベルマーレは、昨年よりパワーアップした感がある。ただ、力の差は如何ともし難かった。



[マッチNo.2]  ○東海大学 19-5 ●慶應義塾大学(前半7-7)



公式戦はベストメンバーで臨むことを基本とする東海大。看板選手のテビタ・タタフとアタアタ・モエアキオラを欠くものの、相変わらず大きくて強い選手達を揃えている。もちろん、小さな選手も居るのだが、が選手全員が組織的にバランス良く鍛えられている印象。ジュニアジャパンでの活躍が印象に残る眞野の他にも、筒井エディ、山菅、モリキ・リードらが顔を並べる豪華メンバー。しかし、今日もゲームへの入りが悪く、慶應に先制を許す。序盤戦は運動量に勝る慶應のペースで試合が進む。だが、東海大は前半に追い付くと後半も2トライを挙げて逆転勝利を収めた。



[マッチNo.3]  ○神奈川タマリバクラブ 33-12 ●サムライセブン(前半14-5)



監督兼任の福田恒輝や竹山将史といったベテラン達が引っ張る神奈川タマリバクラブは、大学生を翻弄するような老獪な戦術が持ち味。一方のサムライセブンは他競技で実績を積んだアスリートを加えたメンバー構成でオリンピック出場選手を輩出することを目指しているチーム。神奈川タマリバが1トライを先行するものの、サムライセブンも1トライ返して観客席を沸かせる。しかしながら、その後は神奈川タマリバが自力を発揮してトライを連取し勝負を決めた。



[マッチNo.4]  ○筑波大学 31-21 ●日本大学(前半12-14)



YC&ACセブンズの楽しみのひとつが、大学チームでは入学したての新人がデビューして大活躍すること。有望新人を多く加えた日大にその期待があったのだが、さすがに4月1日の開催には登録が間に合わない。その日大では昨シーズンもルーキーながら活躍したSH濱端が存在感を見せる。筑波が2連続トライで先行したものの、日大も2連続トライで前半は14-12の日大リードで終了。後半も先に日大が1本取って21-12とリードを拡げる。しかし、筑波は日大のミスにもつけ込む形でその後に3連続トライを挙げて再逆転で試合を決めた。



[マッチNo.5]  ○日本IBMビッグブルー 28-14 ●神奈川県選抜(前半7-7)



日本IBMビッグブルーのメンバー表に懐かしい名前が。15番を着けた窪田幸一郎は日本代表でも活躍した選手だが、NECグリーンロケッツ退団時に引退表明をしていた。日大時代に俊足を活かしてトライを奪うシーンを何度も観ていたことを思い出した。一方の神奈川県選抜は国体出場と成績上位を目指しているチームで、鮮やかなブルーのジャージーが一際映える。こちらにも昨シーズンまで拓大で中心選手として活躍した林謙太がいた。また、茂野圭輝も拓大で活躍したSH。前半は7-7の同点で後半に神奈川県選抜が1トライを挙げてリードを奪う。しかしながら、その後はIBMビッグブルーが3連続トライを挙げて試合をひっくり返し勝利。窪田はそのうち2トライを挙げて存在感を示した。



[マッチNo.6  ○流通経済大学 31-14 ●青山学院大学(前半31-0)



流通経済大は東海大とともにジャージーの中に筋肉の鎧も纏っている選手が多い。なかでも、今年3年生になるブランドン・タナカ・ムゼケニエジがひときわ分厚い胸板を持つ選手に変わっていたことが強く印象に残る。前半はそのタナカが猛威を奮う形で流経大が怒涛の5連続トライを挙げて一気に勝負を決めた。後半はうって変わって流通経済大がまさかの沈黙(ノートライ)で青山学院大が2トライを挙げた。流通経済大はイエローカードで選手が一時退場したことも響いた。今シーズンの開幕直前に監督交代が伝えられた青山学院は、素質に恵まれた選手が多い。今シーズンは新規一新で着実にステップアップが期待される。



[マッチNo.7]  ○日野自動車レッドドルフィンズ 46-0 ●YC&AC(前半24-0)



今シーズンよりトップリーグ昇格を果たした日野自動車レッドドルフェンズは流石。他の社会人チームと動きに違いを見せ、前後半に各4トライずつ挙げての圧勝だった。出場メンバーでは背番号15を着けた豊島直哉が韋駄天ぶりを発揮してトライを量産し存在感を示した。いつもは地元の熱い声援を受けて大会を盛り上げるYC&ACも、今回はサプライズメンバーの出場もなく元気がないことが気になった。



[マッチNo.8]  ○早稲田大学 40-7 ●中央大学(前半19-0)



学生ナンバーワンSHの呼び声高い齊藤は出場しないものの、中野、岸岡、桑山らを擁する早稲田はなかなかの豪華メンバー。とくに留学生に対しても見劣りしない中野のサイズは魅力的で、実際にペネトレーターやトライゲッターとして大活躍だった。また、中野に負けじとランで光った桑山の7本中6本を成功させた正確なゴールキックも印象に残る。優勝候補は東海大と流経大と見ていたが、早稲田にも十分に可能性があると感じさせた緒戦の戦い。中央大は後半に1トライ返すのがやっとの完敗だった。



1回戦は大学生と社会人/クラブが交互に試合を行ったが、クラブチームが苦しい戦いを強いられる状況は変わらない。今年はPSIスーパーソニックスの出場もなく、セブンズに特化したチームはより厳しい状況。セブンズの試合そのものが少なく、また、試合開催時期がほぼ春に限定されていることが強化の壁になっているように思われる。北海道バーバリアンズや神奈川タマリバクラブのように15人制のチームを持っていないと選手獲得も難しい。ただ、だからこそ、この大会はクラブチームに出場機会を与える大会で会って欲しいと願う。大会に華を添えているのは元気のいい大学チームだけではなく、クラブチームも一役買っていると思うので。



ラグビーマガジン 2018年 05 月号 [雑誌]
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