「熱闘」のあとでひといき

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シェイプとポッド(続き)/脳トレ継続中

2013-08-12 00:25:07 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
ちょうどお盆休みに入ったこともあり、しばしの間仕事のことは考えないことにしよう。そう思ったら、急に「シェイプ」と「ポッド」という言葉が楕円球や選手達の動きとともに頭の中を駆け巡る状態から脱出できなくなってしまった。

トライの得点が3点から4点(5点になったのはもう少し後)に変わる頃にラグビーに出逢った。その後もサッカーに夢中になったりして競技場から足が遠のいた空白期間はあったものの、ラグビーファンをやめたことはない。だから、かなりの年数ラグビーを観てきたことになる。その間にトライの得点だけでなく、ルールもどんどん変わっていった。しかし、日本で行われるラグビーのプレー内容はどのくらい変わっただろうか?と思うここ2、3日なのである。

もちろん、本質的に変わらない(変えられない)部分はある。しかし、加速度的ともいえる変貌を続けている世界のラグビーシーンの中で、日本は半ば鎖国状態にあったのでは?という想いを禁じ得ない。トップリーグができて世界の強豪国からバリバリの現役選手が多数来日してプレーするような恵まれた状況になっても、こと大学ラグビーに関しては、(勢力地図は変わってきているが)さほど大きな変化は起きていないように感じる。

「シェイプ」と「ポッド」という2つのキーワードを手がかりとして、ラグビーを構造的に見つめ直してみて、ふとそのことに気付いた。ファンがラグビーを語るときに、「組織的に整備された」とか「ひたむきなプレーぶり」とか「FWとBKが一体化した攻撃」とか「献身的なディフェンス」といったような概念的、いや抽象的な表現が(他のスポーツに比べて)支配的になっていないだろうか?

◆ラグビーを構造的に見直すことの意義

世界的には体格面で劣る日本でも、チームによる体格差は存在する。そんな中で、大きな選手を揃えたチームを軽量小型のチームがスピードや運動量、そして戦術の工夫で打ち破るというのがひとつの「美学」とされてきたように思う。それは、ジャパンが世界と戦うときの戦術ともオーバーラップすると考えられてきた。

しかし、プロ化が進んだ強豪国の選手達は、大きな身体でありながら日本人選手以上に運動量があり、しかも低い姿勢で戦いに挑んでいるのが現実。正直、キャッチアップは難しくなっていく一方という状態になっている。スピードと運動量を維持して身体を大きくしていくのか、大型化よりもスピードと運動量を上げていくのかといった課題に対して答えが出せないうちにも、どんどん世界が進化している。

その世界にしても、スピードや運動量の競争を続けるには限界がある。そこで浮かび上がってきたのが、できるだけ相手を消耗させ、かつ自チームはスタミナを温存できるような戦術を確立すること。単なるパワー勝負、スタミナ勝負に終わらないラグビーをするためには、いかにして攻撃権を保持し続けて相手を自分たち以上に動かし疲れさせる。そのために15人がどのように動くべきかを明確にする必要性から「シェイプ」や「ポッド」といった考え方が生まれたのではないだろうか。

ラグビーは攻撃権を持つチームがその優位性を活かして得点を挙げて勝利を目指すスポーツ。防御側は守っている時間帯が長くなるほど消耗度が大きくなる。相手ボールを奪い取るためにはディフェンスで数的優位を保つために人数をかけなければならないから。アタックの局面でチームを3つのユニットに分け、また攻撃のエリアを3つに分けることでチーム戦術を共有しやすくするとともに、無駄走りによる体力消耗を防ぐ。重要な局面で集中的に力が発揮できるように、いい意味での「省エネ」を目指すのが「シェイプ」であり「ポッド」ではないだろうか。相手を組織的に混乱に陥れ、無駄走りをさせればさせるほど優位に試合を進めることが出来るわけだ。

◆関東リーグ戦グループ所属校を「組織」の面から見直してみると

本格的な観戦を始めた1997シーズン以降をメインとして、各チームを「組織」の面から見直してみた。まず、関東リーグ戦Gで「組織的な戦い方」を確立したチームは関東学院だった。それは大学日本一を目指す過程で苦労を重ねながら身につけていったものだと思う。局面局面で選手個々が判断し、チーム全体で戦うイメージを共有できるようにすることを、天然芝のグラウンドで何度も何度も実戦形式の練習を積み重ねていくことで習得していったのではないだろうか。

1997シーズンから1部に昇格した流経大は、緻密なサインプレーに基づく組織化されたラグビーでリーグ戦Gに新風を吹き込んだ。それに続いたのが1部復帰を果たした東海大であり、その東海大でコーチを務めた加藤氏が監督に就任した日大だった。もちろん、各チームで「組織」に対する考え方は違っているはずだが、ひとつ共通していた部分がある。それは、選手個々が「組織的であること」を意識するあまり、のびのびと戦えなくなっていたように見えたこと。そのことは決定力不足というかたちでBKアタックに顕著に表れていたように思う。

大東大もラトゥー監督が就任したときに組織化を目指したチームだったはずだ。2次、3次攻撃まで選手の動き方を決めた豪州スタイルが目標だったと記憶している。しかし「うまくいかなかった」という理由であっさり組織化は見送られた。法政や中央は個性重視というか、組織化という考え方自体が薄かったように感じられる。攻守とともにフェイズを重ねるごとに陣形が乱れていく(人数が減っていく)ところを、卓越した個人能力を持っているか、あるいは優れたスキッパーが居たかで明暗が分かれていた印象。拓大も2部時代は組織的な戦いができていたチームだったと記憶しているが、個人能力の高い選手が突出することで(結果はそれなりに出たが)組織の考え方が崩れていった感が強い。

時は流れ、拓大は「シェイプ」を導入(あくまでも推測だが)することでチームの再構築に成功した。逆に先駆的な流経、東海だけでなく、日大も含めて他のチームはまだ自分たちに適した「組織的な戦い方」に対する答えを見いだせていないように感じられる。今シーズンとくに注目したいのは大東大で、目指すスタイルから観て、ボールを動かす「ポッド」がはまりそうな予感がする。

◆「シェイプ」や「ポッド」は大学ラグビーを変えるか?

「組織化」と書くと、どうしても窮屈なラグビーというイメージを抱いてしまう。しかし、「シェイプ」や「ポッド」にはもちろん約束事はあるものの、選手達を縛って雁字搦めにするというようなイメージはない。まだまだ理解が浅いので正しいかどうかはわからないが、選手達がしっかりと戦術を身につけたらアタックの自由度(選択肢)は確実に増えていくような気がする。最低限の約束事は決めた上でそれをどう活用するかはチームの判断にゆだねられ、また試合では選手達の臨機応変な判断力(とその共有)が尊重されるシステムになっているのではないだろうか。

使いこなすのは大変かもしれないが、何よりもいいと思うのは、選手達に頭を使うこととコミュニケーションをしっかり取ることを要求していること。また、各チームが同じ考え方をベースにしてチーム作りをしたら、代表チームのようなコンバインド形式でも時間をかけずにチーム作りが出来るようになるかも知れない。ジャパンにしても、選手個々の所属チームの考え方の違いを調整するのが大変なようだから、バックグラウンドだけでも統一する価値はありそうだ。

ということで、今シーズンは2つのキーワードを意識しながら各チームの闘いぶりを観ていきたいと思う。緒戦を観た段階で、各のチームの考え方がはっきり分かるだろう。そんなの関係ないというチームもあると思う。「伝統」に裏付けられたコーチングが支配的なチームほど新しいことを導入するのは難しい。でも、たとえ1つでも「シェイプ」や「ポッド」を使いこなしてチーム力向上に成功する大学がでてきたら、他のチームも追随せざるをえなくなる。アタックはいいとしても、ディフェンスでは相手がどんな意図を持ってどういう形で攻めてくるかが理解できていないと、自分たちのラグビーすら出来なくなるから。だから研究を始めた段階で同時に(意図するしないにかかわらず)導入が始まるわけだ。

果たして、今年はどんなシーズンになるのだろうか?

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