「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

桜もセブンズも満開間近!

2013-03-20 17:42:04 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
今年は例年にもまして関東では桜の開花が早い。各地の桜の名所も準備期間の前倒しを迫られていて、その対応に大わらわといった状況のようだ。

ラグビーファンにとっても春はピッチ上でお花見と洒落込める季節となる。3月末からは、およそ1ヶ月間は「セブンズ三昧」となるわけだ。それも東京セブンズでいきなり「満開」となってしまう。大学ラグビーファン(とくにリーグ戦Gファン)にとっては3週連続で愉しめることになる。

◆東京セブンズ2013(3月30、31日) 秩父宮ラグビー場

今年もこの大会が東京で開催されることになったのでホッとしている。昨シーズンの状況だったら「東京はパス」でも文句は言えないと思っていたので。そのくらい日本のセブンズは実力からバックアップ体制に至るまで危機的な状況にあること露呈したのが昨年度の東京セブンズだったと思うのだが、どうもその教訓が活かされていないような気がしてならない。ここは「開催国チーム」の健闘を祈るしかないが、今回はさらに厳しい現実を突きつけられることになりかねないのではと危惧している。

言うまでもなく、セブンズは五輪種目になったこともあり、強化に取り組む国が急速に増えているし、実際に15人制で実績のなかった国が強豪国になったりしている。15人制との掛け持ちでは世界のトップレベルに到底することはもはや困難であり、「専従」のスペシャルチームを作る必要性がより明確になったのが昨年の大会だったと思う。しかしながら、スタンドの一見華やいだ雰囲気に感化されたかのような「お祭り気分」が抜け切れていないように感じる。アジアですら勝つことが難しくなっている現状に対する危機感は相変わらず薄いように見えるのが気になるところ。

と愚痴を言っていても始まらない。日本も含めて世界のトップ16チームの選手達の華麗な技とチームスポーツとしての駆け引きの妙を楽しまない手はない。それに、この大会は日本で殆ど唯一と言っていいくらいに幅広いスポーツファンにラグビーの面白さを伝える絶好のチャンスでもある。オリンピック種目としての楽しみ方を教えてくれる活きた教科書とも言える。なのに、ラグビー関係者以外はこのような世界のトップレベルの大会があることすら殆ど知らないのではないだろうか。本当にもったいないと思う。

◆第54回YC&ACセブンズ(4月7日) 横浜カントリー&アスレチッククラブ)

老舗大会も今回は大学チームにトップクラブチームを加えた戦いになっている。トップイーストのチームの参戦がないのが残念だが、東日本大学セブンズの前哨戦とも言え、大学ファンには楽しみが増えた感じ。ホストチーム(YC&AC)をあと一歩のところまで追い詰めた昨年の筑波のようなチームがどんどん出てくることを期待したい。

◆第27回関東リーグ戦Gセブンズ(4月14日) 町田市立野津田公園内の陸上競技場

この大会の見どころのひとつは、1部チームと2部チームの直接対決での下克上。昨年も準備不足を露呈して苦杯をなめた有力チームがあった。でも、最大の見どころはリーグ戦グループの1部と2部の全チームが一堂に会してそれぞれのチームの特徴を披露してくれるところにある。首脳陣はもとより、選手達の意気込みからも当該チームが今どんな状態にあるかがわかるのだ。勝った負けたでどうこうといったところがないだけに、逆にストレートに各チームの普段のラグビーに対する取り組み姿勢が見えてしまう怖い大会とも言える。もちろん、BKの選手が中心にはなってしまうが、新戦力のお披露目になることへの期待も大きい。

◆第14回東日本大学セブンズ(4月21日)

YC&ACセブンズから参加しているチームは3ラウンド目となり、チームとしての熟成ぶりが見られるかが焦点になる。でも、この大会は一昨年の新潟大学のようなチームの奮闘を見ることができるのが大きな楽しみになっている。北海道や東北のチームにとっては、全国レベルを経験するチャンスだからがんばって欲しい。そして、ゆくゆくは東日本大会から始まった高校の選抜大会のように、全国規模の大会へと拡大していけばという願望もある。セブンズに特化したチームでも参加できる大会にすることで、世界で言えばケニアやポルトガルのような存在のチームが現れて大学ラグビーの活性化に繋がるのではという期待もある。

◆セブンズの命も花のように短くていいのか?

日本のセブンズの現状は、「花の命は短くて」が当てはまるような状況にあると感じる。4月に関東の大学関連でもこれだけの大会があるのに5月以降はセブンズのセの字も出てこない。東日本大学選抜が終わってパッと散ってしまったら、来年まで花が咲くことはない状況がずっと続いているわけだ。このままでいいのだろうか。

結局は現状でのセブンズの位置づけは、「選手個々のスキールアップが15人制の強化に繋がる」といたようなチーム強化プログラムの一環でしかない。このバックグラウンドがある限り、スペシャルチームの創設なんて夢の夢に終わってしまうわけだ。当然、ファンの非難を浴びることにはなっても15人制の成績に直接的な影響はないため、取り組み姿勢に疑問を感じさせるチームが出てきても不思議はない。

しかし、上でも書いたとおり、セブンズは15人制とは異なるスポーツへと変貌し、独自の進化を遂げているのが現状だと思う。戦術面の研究はもちろんのこと、15人制のトレーニングが通用しない部分も出てきているはず。陸上競技に例えれば、セブンズは1日に何レースも走る短距離走型で、15人制は1週間に1レースの長距離走型になる。自ずとフィジカルやメンタル面のコンディションの整え方も違ってくるはずだし、そうでなければ世界では戦えない。15人制とセブンズの関係も、サッカーとフットサルの関係のような形へと変えていくという発想の転換が必要だと思う。

これから始まる「桜祭り」ではないが、セブンズを1ヶ月限定のお祭りで終わらせてしまうことは本当に惜しい。関東では春季大会が始まったことで日程的には難しくなっているが、何とか5月に全国規模の大会を開催して、花が散ってしまうのはもう少し先延ばしにできないものだろうか。
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フローラ・プリム『ストーリーズ・トゥ・テル』/終生の「恋人」との幸運なる出逢い

2013-03-20 01:17:23 | 地球おんがく一期一会


ブラジル出身の歌姫、フローラ・プリムは私がほぼリアルタイムで追いかけている大切なミュージシャンのひとり。最初の出逢いがサンタナの『ウェルカム』だから、もう40年も経っていることになる。彼女名義のアルバムはすべて手元にあり、今はひたすら新譜を待つ状態なのだが、とびきりの1枚は最初に手にしたこの『ストーリーズ・トゥ・テル』。とても、幸運な出逢いだった。

(フローラ・プリムは本来フローラ・プリンと呼ぶべきかもしれない。Antonio Carlos Jobimが「アントニオ・カルロス・ジョビン」なのと同じ。でも、我が最愛の人を「プリン」ちゃんと呼ぶのはちょっと忍びないので、ここではプリムとしておこう。)

フローラと初めて「逢った」のは上でも書いたように、ゲスト参加したサンタナの『ウェルカム』だった。地味な役割ながら同じく『不死蝶』にも参加している。また、同じ頃にはチック・コリア&RTF(Return To Forever)のメンバーの一員として来日公演も果たしている。しかしながら、「カモメのRTF」として多くのファンの心を掴んだアルバムを手にすることもなく、その頃はとくに気になる人という訳でもなかった。

しかしながら、ひょんなことから「ぞっこん」になってしまうから面白い。それもサンタナのお陰。当時のサンタナは『不死蝶』をリリースした後、なかなか新しいレコードを出してくれない。欲求不満のような状態に陥っていたときにレコード店で見かけたのが、発売されたばかりの『ストーリーズ・トゥ・テル』だった。もしレコードの帯に「サンタナ」の文字が踊っていなかったら、今もフローラは「RTFに参加した一風変わったヴォーカリスト」のままだったと思う。

ところが、頼みのサンタナは1曲のみの参加で、しかも昔のワイルドなサンタナではなくなっている。当初はなんだかがっかりだなぁという気分でレコードに針を下ろしていた。でも、このアルバムの主役はあくまでもフローラなのだ。初な少年にはちょっと刺激的なジャケットを眺めながら聴いているうちに、いつしかフローラの歌声の虜になっている自分が居たのだった。

このアルバムにはサンタナの他にも個性的なミュージシャン達が名を連ねている。ジョージ・デューク(キーボードとシンセサイザー)、アール・クルー(ギター)、アイルト・モレイラ(フローラの夫君、パーカッション)、キング・エリソン(コンガ)を基軸(?)として、曲ごとに少しずつメンバーが替わる。ところが、クレジットが最高レベルにわかりにくい。「曲Aと曲BにはXとYとZが参加している。ただし、曲BにはYは参加していない...」といった具合。省スペースを目指していたのだろうが、それならば普通に1曲ずつ参加メンバーを表記してくれたほうがよっぽどすっきりする。ちなみに、こんなクレジットを見たのはこのアルバムが最初で最後となった。

肝心なメンバーの話に戻る。ベースはロン・カーターとミロスラフ・ヴィトウスが弾き分ける形。後者にとっては貴重なエレキ・ベース時代の記録とも言える。そういえば、ギターとベースが一体化した文字通りのベースギターを駆使して、『マジカル・シェパード』というアルバムを出したのもこの頃だ。ソロイストはジョージ・デューク(シンセ)やサンタナの他にはラウル・ジ・ソウザ(トロンボーン)とオスカル・カストロ・ネヴェスが主だったところ。

そして収録曲だが、ACジョビン、エドゥ・ロボ、ミルトン・ナシメントといったブラジルの定番作曲家達の作品がある一方で、マッコイ・タイナーやジョージ・デューク、そしてヴィトウスの曲も入っているといった具合。メンバーや曲のことをあれこれ書いているだけでも、とりとめのない作品のように見えてしまう。とても1枚のレコードの中で仲良く同居できるような雰囲気は、文字からは伝わってこない。

ところが、レコードを聴いていると、様々なタイプの曲が一連の流れの中で調和して耳に入ってくるから面白い。そう、この異種混合のブレンド感覚こそがフローラの魅力だということに気づく。中心は10曲中6曲を占めるブラジル人の手になる曲なのだが、そこにヴィトウスが参加したシンセ多用の宇宙志向の曲があり、またそれが絶妙なスパイスにもなっている。最初は馴染めなかったサンタナとヴィトウスとフローラが共演した作品(シルバー・スウォード)も、何度か聴いているうちに味わいが出てくると言った感じ。

しかし、この曲のハイライトはなんと言ってもA面2曲目のジャジーな「サーチ・フォー・ピース」だと思う。マッコイ・タイナーが書いた美しい曲にフローラが詩を付けたしっとり系の感動的なトラック。ここで、アコースティックピアノを弾いているのは意外にもジョージ・デュークで、ソロがまた味わい深い。どうしても甘ったるさを感じさせるシンセのサウンドとのギャップに悩んでしまうくらいだ。名手ロン・カーターのサポートもツボを心得ていて、総合的に見てもフローラのベストではないだろうかという想いが聴く都度に強くなっていく。

フローラの歌の特徴は、6オクターブにも及ぶ音域を駆使した器楽的な唱法。しかし、この「奇声」とも捉えられかねない声こそがフローラの敬遠される要素となったかもしれず、また、フローラ自身の声を痛めることにもなったのではないだろうか。フローラは2001年に俊英ピアニストのクリスチャン・ジェイコブを得てリリースした「パーペチュアル・エモーション」でも「サーチ・フォー・ピース」を録音しているが、デリケートな歌唱の魅力は断然こちらの録音の方が上なのでそんなことを考えてしまう。

フローラが70年代に残したアルバムは全部で9枚ある。ベートーヴェンの交響曲のように9つの性格を持つといってもいいくらいに、どれもが個性がキラキラしていて魅力的だ。しかし、私的ベストはこの『ストーリーズ・トゥ・テル』で次点は最後の『キャリー・オン』になる。いずれにせよ、チック・コリア&RTFに参加したことで知られるヴォーカリストで終わらせてしまうのは惜しい。80年代以降のアイルト・モレイラとタッグを組んだ作品群など充実している。

終生の恋人という私的感情は別にしても、「再評価」があってしかるべきヴォーカリストではないかという想いを捨てきれないでいる。

◆Flora Purim “Stories To Tell’”
1) Stories To Tell (Vitous-Purim-Coppola)
2) Search For Peace (Tyner-Purim)
3) Casa Forte (Edu Lobo)
4) Insensatez (Jobim-De Moraes)
5) Mountain Train (Hood-Purim)
6) To Say Goodbye (Lobo-Hall)
7) Silver Sword (Miroslav Vitous)
8) Vera Cruz (Nascimento-Hall)
9) O Cantador (Filho-Motta)
/ I Just Want To Be Here (Purim-Duke-Errison-Moreira-Vitous)

Flora Purim : Vocal
George Duke : Keyboards & Synthesizers
Larry Dunlop : Piano
Earl Klugh : Guitar
Oscar Castro Neves ; Guitar
Carlos Santana : Guitar
Ernie Hood : Zither
Ron Cartar : Bass
Miroslav Vitous : Bass & Synthsizers
Airto Moreira : Drums & Percussion
King Errisson : Congas
Raul de Souza : Trombone solo
Oscar Brasher : Flugelhorn
George Bohanon : Trombone
Hadley Caliman : Flute, Alto Flute

Recorded at Berkeley CA, May & July 1974
Produced by Orrin Keepnews
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