映画「Flow」を映画館で観てきました。
映画「Flow」は本年のゴールデングローブ賞とアカデミー賞の長編アニメーション映画賞の連覇を果たしたラトビアのギンツ・ジルバロディス監督作品だ。普段は観ないアニメ作品でもなぜか気になる。主役は1匹の猫でたまたま一緒になった動物たちと舟に乗って漂流する。セリフは一切ない。気持ちを言葉で表すことはない。字幕もない。動物たちの鳴き声だけだ。
自分の実家には猫がいて、母親が亡くなったあと妹が飼っていたが長命で死んだ。猫はガンで弱った死ぬ前の母を見ると心配そうにしていた。人間の気持ちはわかるのであろう。そんな猫のやさしい思いがよみがえる作品だ。
とりあえず作品情報を引用する。
世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとする中、ある一匹の猫は居場所を後に旅立つ事を決意する。流れて来たボートに乗り合わせた動物たちと、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。
しかし、彼らの中で少しずつ友情が芽生えはじめ、たくましくなっていく。彼らは運命を変える事が出来るのか?(作品情報 引用)
セリフがない猫の気持ちが伝わるハートフルなアニメ映画でよかった。
莫大な予算のアメリカのメジャーアニメ作品を抑えて、アカデミー賞で最優秀作品賞を授与する審査員の気持ちがよく理解できる。制作費は5.5億円とメジャー作品と比べ物にならない。人間のようなセリフがなくても、動物たちの仕草で気持ちがわかる。ぜひ大画面の映画館の前方でこの感動を味わってほしい。おすすめ作品だ。
絵画マンガ系アニメでなくCG系アニメでバックの風景は実写のようだ。森の中を渓流が流れるところに1匹の猫がいる。川で泳ぐ魚を獲物にする猫だ。特に説明もなく、樹木の間を犬や大量の鹿が突如移動していく後で、ナイアガラ滝のような水量の多い洪水が押し寄せてくるのだ。陸地も樹木も水に埋まってしまう。
作品情報だとすぐさま動物たちが一緒のボートに乗るように感じられるがそうではない。犬もカピバラもキツネ猿も白鳥もみんなそれぞれの集団にいたのに、気がつくと一緒になる。漂流してきたボートにそれぞれの動物が恐る恐る乗り込んでいく。仲間からはぐれてきた動物たちもこのボートに乗るしかない。そんな動物たちの動きは実にリアルだ。
猫の動きはいかにも身近にいるホンモノのように敏捷で素早い。すいすいと高い場所に登っていく。猫が伸びをするポーズも母が飼っていた猫のようだ。この猫は水にももぐる。魚に飛びついてくわえてボートに持ってくる。アニメなのにこういう言い方も変だが、猫を捉えるカメラワークがいい。猫や動物を絶妙のショットで捉えている。白鳥につかまって空を飛ぶシーンもあり、空間もうまく使っている。
洪水に襲われた後も常に危機一髪な状況が続く。動物たちは同じボートにずっと一緒なのではなく、何度もはぐれる。仲間割れで取り残された意地悪な白鳥もいる。それでも、お互い助け合う気持ちがでてくる。心が洗われる気分になる。
ジルバロディス監督が「この作品は、とても個人的なストーリーでもあります。かつての作品では全て1人で手掛けていた私が、本作では主人公の猫のように、チームを組み協力すること、仲間を信頼すること、違いを乗り越えることを学びました」と語る。(作品情報 イントロダクション引用)
豪華さはないが、新鮮な感動をもらった。