映画とライフデザイン

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映画「ファーザー」 アンソニー・ホプキンス

2021-06-19 18:52:11 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「ファーザー」を映画館で観てきました。


「ファーザー」アンソニーホプキンスアカデミー賞主演男優賞を受賞した作品である。最近は観たいと思う洋画新作に恵まれず、やむなくたどり着く。公開してしばらく経つが、映画館は意外にも満席だ。きっと自分と同じ心境なのであろう。

主人公の認知症を映し出している作品であるのは予想通り。娘役は女王陛下のお気に入りオリヴィア・コールマンである。このコンビで英国映画特有の崇高な流れをもつ。起承転結が鮮明に出て、一つ一つの出来事を浮かび上がらすという映画ではない。場面を一筆書きのように連続的に描きながら、アンソニーホプキンスのボケぶりを徐々にエスカレートして見せていく。


演技巧者のそれぞれの演技には文句はない。観ているうちに自分の老後もつい心配してしまうけど、最後は「え!これで終わっちゃうの」というようなあっさりした感じで、傑作という感じはしなかった。スリラーだという人もいるがそうも思わない。でも、こうやって振り返るとこの映画は二度三度観て、理解が進むのかもしれない。

ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニー(アンソニーホプキンス)は記憶が薄れ始めていたが、娘のアン(オリヴィアコールマン)が手配する介護人を拒否していた。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受ける。だが、それが事実なら、アンソニーの自宅に突然現れ、アンと結婚して10年以上になると語る、この見知らぬ男は誰だ? なぜ彼はここが自分とアンの家だと主張するのか? ひょっとして財産を奪う気か? そして、アンソニーのもう一人の娘、最愛のルーシーはどこに消えたのか? (作品情報 引用)

⒈連続性
場面が一定の範囲内に固定される室内劇映画は苦手な方である。この映画もある意味室内劇であるが、最後まで閉塞感がなかった。同じ室内にいるような錯覚を受ける。所々で窓の外から見る風景などで実は違った場面だというのを示す。それでも、ずっと同じところにいるのではという連続性を感じた。美術の卓越性が鮮明にでる。幾何の難問で補助線一本を鋭くひき解答に導く役割がここでは美術だ。


結果的にいくつか場所が移っているのであるが、場所が移転する事実は映画の場面で出ていない。気がつくと、アンソニーホプキンスは別の部屋にいるのだ。こういった錯覚感がある。当然認知症の症状が出ているわけであるし、現実に存在する人物なのかどうかもわからない人物もでてくる。ナタリーポートマンの「ブラックスワン」や一連のデイヴィッドリンチ作品のように現実と虚構を入り混ぜた場面でわれわれの思考を混乱させる。そこがこの映画のいいところだ。

⒉アンソニーホプキンス
もう84歳になる。映画界にはもっと年上のクリントイーストウッドもいるが、主演級現役俳優としては最高齢に近いだろう。続編が次々とできた「羊たちの沈黙」のレクター博士がオハコで、出演作品では最も印象に残る。ここでの枯れきった演技は申し分ない。アカデミー賞受賞に色気をだす年齢でもない。そんな時に映画の神様が微笑む。


自分の娘ローラによく似た介護士がでてきたと同時に、虚構かどうかわからない謎の男にピンタを何度もうけるシーンがある。二度でてくるが、介護士かどうかは余計な説明を入れない。自分が見捨てられるのではないかという恐怖で泣いてしまうシーンもある。こんな思いを感じてしまうことがあるのであろうか?

介護士には甘える。甘えた時には女性介護士は優しくしてくれる。まだ救いがあるんだけど、あと何年先になるかわからないが、自分も同じ場面に出くわすのであろうか?

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