映画「オクジャ」は2017年のポン・ジュノ監督によるNetflix映画
「パラサイト」でポン・ジュノ監督がアカデミー賞作品賞、監督賞を受賞したのには驚いた。ただ、年初早々観たこの作品はおもしろく素晴らしかった。監督の前作が「オクジャ」である。ジャケットからみても異物との遭遇を連想させる。どちらかというと、あまり観るタイプの映画ではない。
このコロナ騒ぎがなければ、Netflix映画をこんなに観ることもなかった。運がよかったのかもしれない。Netflix配信を前提につくられた作品なので、予算もふんだんに使えて作品製作費も5000万ドルと高い。出演者も韓国人の少女を除いては、ティルダ・スウィントン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノと主演級がそろっている。当然美術、撮影、編集ともに高い映像レベルである。予算もないせいか日本映画ではなかなかこのレベルに達しない。
大企業が遺伝子操作してつくった異形の豚と一緒に育った少女との友情というのがこの映画のテーマである。あえて顔が真っ赤のドンくさい少女を主演に抜擢して、異形の動物とともに首都ソウルとニューヨークを立ち回らせる。特撮のオクジャは映像になじみ、ハラハラドキドキで笑えるシーンが多い。屁理屈は考えずにシンプルにみた方がそれなりに楽しめる。
多国籍企業のミランド社の社長(ティルダ・スウィントン)は遺伝子操作したスーパーピッグの子豚を開発したと発表した。それを世界の26ヶ国の農家で育ててもらい10年後、動物学者ジョニー博士(ジェイク・ギレンホール)の審査でコンテスト結果を決めるものとした。10年たって韓国の山村では、祖父(ピョン・ヒボン)と暮らす少女ミジャ(アン・ソヒョン)が、大きく成長したスーパーピッグ「オクジャ」と暮らしていた。ミジャにとっては「オクジャ」は親友以上の存在だった。
審査のためにジョニー博士が韓国の山奥までやってくる。大きくなったオクジャをみて感動、コンテストの一位だと決めアメリカに運ぶことになった。ところが、オクジャをミランド社からお金で買い取るという話を祖父はミジャにしていたが、結局は断られミジャのいない間に運ばれもういなかった。ミジャは怒り、連れ戻そうとソウルに向かった。ミランダ社のソウル支社では当然門前払い、それでもむりやり会社に入り込み移送されていたオクジャを見つけ懸命に追っていく。
1.ソウルの町での追跡劇
前半戦のヤマである。オクジャが移送されている車を懸命に走って追う。ミジャはソウルの急な坂を滑走し、やがてトラックの荷台にしがみついて乗る。通るのがギリギリのところをトラックが走っって危なかしい。そんなとき、オクジャを積んだ車の真横を1台のトラックが併走してきた。そこには覆面をかぶった男たちが数名乗車している。やがて車が止まり、オクジャが脱出し、ミジャとともにショッピングモールの店を逃走していく。
この追跡劇はなかなかスリリングだ。ミジャの動きはアクションスターばりでドキドキしてしまう。応援したくなる気分にもなる。この覆面の連中は誰?と思っているとやがてジェイ(ポール・ダノ)率いる動物愛護団体のメンバーだとわかる。単にアメリカに行ってしまうオクジャを取り戻そうとする話に、第三者の存在を顕在化して話をおもしろくする。いくつもの対立関係と葛藤をうむので話が重層化して深みが出る。金の子豚の存在など小技も効いていて相変わらずポンジュノのストーリー作りのうまさが光る。
2.平穏な山奥の田舎とミジャ
山奥に住む祖父と孫と一緒に暮らす異形の豚オクジャは人間の気持ちもよくわかる。ミジャが山から転落しそうになると、賢いオクジャが自分の身も棄ててミジャを助ける。そんなエピソードだけでなく、原始的に生活するミジャの姿も映す。父母は両方とも死んでこの世にいない。なんで死んだのかは明かされない。ふと思うけど、この女の子学校に行っているのかしら?もしいっているとしたら昔でいう一里(4km)ではすまないくらい歩いているのかもしれない。ほっぺたは真っ赤だ。
3.主演級の脇役たち
スーパーピッグコンテストを主催するミランダ社の社長はティルダ・スウィントンだ。コーエン兄弟やウェス・アンダーソン作品などでおなじみだが、自分にはジム・ジャームッシュ監督の「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」での吸血鬼役が一番適役と感じる。この個性的な一人二役の社長役もうまい。
ジョニー博士がジェイク・ギレンホールであることは、彼の作品をずいぶんみているのに映画が終わるまで気づかなかったなあ。変態的要素をもつ動物学者で、ずっとでていて賑やかなのでいつもの役と違う。動物愛護団体のリーダーがポール・ダノだ。ジェイク・ギレンホールとポール・ダノは「プリズナーズ」で刑事と被疑者役で共演し、ポール・ダノが監督した「ワイルド・ライフ」ではジェイク・ギレンホールがキャリー・マリガンとともに主演した。
動物愛護団体の紅一点はリリー・コリンズである。歌手のフィルコリンズの娘で、ブルックシールズばりの太い眉毛が特徴だ。恋愛映画「あと1センチの恋」では主演を演じている。実は自分のブログで一番閲覧が多いのが「あと1センチの恋」なんだけど、彼女にも気づかなかったなあ。
ふだん豚肉は食べているんだけど、この映画をみるとちょっと気にしてしまうかも?
「パラサイト」でポン・ジュノ監督がアカデミー賞作品賞、監督賞を受賞したのには驚いた。ただ、年初早々観たこの作品はおもしろく素晴らしかった。監督の前作が「オクジャ」である。ジャケットからみても異物との遭遇を連想させる。どちらかというと、あまり観るタイプの映画ではない。
このコロナ騒ぎがなければ、Netflix映画をこんなに観ることもなかった。運がよかったのかもしれない。Netflix配信を前提につくられた作品なので、予算もふんだんに使えて作品製作費も5000万ドルと高い。出演者も韓国人の少女を除いては、ティルダ・スウィントン、ジェイク・ギレンホール、ポール・ダノと主演級がそろっている。当然美術、撮影、編集ともに高い映像レベルである。予算もないせいか日本映画ではなかなかこのレベルに達しない。
大企業が遺伝子操作してつくった異形の豚と一緒に育った少女との友情というのがこの映画のテーマである。あえて顔が真っ赤のドンくさい少女を主演に抜擢して、異形の動物とともに首都ソウルとニューヨークを立ち回らせる。特撮のオクジャは映像になじみ、ハラハラドキドキで笑えるシーンが多い。屁理屈は考えずにシンプルにみた方がそれなりに楽しめる。
多国籍企業のミランド社の社長(ティルダ・スウィントン)は遺伝子操作したスーパーピッグの子豚を開発したと発表した。それを世界の26ヶ国の農家で育ててもらい10年後、動物学者ジョニー博士(ジェイク・ギレンホール)の審査でコンテスト結果を決めるものとした。10年たって韓国の山村では、祖父(ピョン・ヒボン)と暮らす少女ミジャ(アン・ソヒョン)が、大きく成長したスーパーピッグ「オクジャ」と暮らしていた。ミジャにとっては「オクジャ」は親友以上の存在だった。
審査のためにジョニー博士が韓国の山奥までやってくる。大きくなったオクジャをみて感動、コンテストの一位だと決めアメリカに運ぶことになった。ところが、オクジャをミランド社からお金で買い取るという話を祖父はミジャにしていたが、結局は断られミジャのいない間に運ばれもういなかった。ミジャは怒り、連れ戻そうとソウルに向かった。ミランダ社のソウル支社では当然門前払い、それでもむりやり会社に入り込み移送されていたオクジャを見つけ懸命に追っていく。
1.ソウルの町での追跡劇
前半戦のヤマである。オクジャが移送されている車を懸命に走って追う。ミジャはソウルの急な坂を滑走し、やがてトラックの荷台にしがみついて乗る。通るのがギリギリのところをトラックが走っって危なかしい。そんなとき、オクジャを積んだ車の真横を1台のトラックが併走してきた。そこには覆面をかぶった男たちが数名乗車している。やがて車が止まり、オクジャが脱出し、ミジャとともにショッピングモールの店を逃走していく。
この追跡劇はなかなかスリリングだ。ミジャの動きはアクションスターばりでドキドキしてしまう。応援したくなる気分にもなる。この覆面の連中は誰?と思っているとやがてジェイ(ポール・ダノ)率いる動物愛護団体のメンバーだとわかる。単にアメリカに行ってしまうオクジャを取り戻そうとする話に、第三者の存在を顕在化して話をおもしろくする。いくつもの対立関係と葛藤をうむので話が重層化して深みが出る。金の子豚の存在など小技も効いていて相変わらずポンジュノのストーリー作りのうまさが光る。
2.平穏な山奥の田舎とミジャ
山奥に住む祖父と孫と一緒に暮らす異形の豚オクジャは人間の気持ちもよくわかる。ミジャが山から転落しそうになると、賢いオクジャが自分の身も棄ててミジャを助ける。そんなエピソードだけでなく、原始的に生活するミジャの姿も映す。父母は両方とも死んでこの世にいない。なんで死んだのかは明かされない。ふと思うけど、この女の子学校に行っているのかしら?もしいっているとしたら昔でいう一里(4km)ではすまないくらい歩いているのかもしれない。ほっぺたは真っ赤だ。
3.主演級の脇役たち
スーパーピッグコンテストを主催するミランダ社の社長はティルダ・スウィントンだ。コーエン兄弟やウェス・アンダーソン作品などでおなじみだが、自分にはジム・ジャームッシュ監督の「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」での吸血鬼役が一番適役と感じる。この個性的な一人二役の社長役もうまい。
ジョニー博士がジェイク・ギレンホールであることは、彼の作品をずいぶんみているのに映画が終わるまで気づかなかったなあ。変態的要素をもつ動物学者で、ずっとでていて賑やかなのでいつもの役と違う。動物愛護団体のリーダーがポール・ダノだ。ジェイク・ギレンホールとポール・ダノは「プリズナーズ」で刑事と被疑者役で共演し、ポール・ダノが監督した「ワイルド・ライフ」ではジェイク・ギレンホールがキャリー・マリガンとともに主演した。
動物愛護団体の紅一点はリリー・コリンズである。歌手のフィルコリンズの娘で、ブルックシールズばりの太い眉毛が特徴だ。恋愛映画「あと1センチの恋」では主演を演じている。実は自分のブログで一番閲覧が多いのが「あと1センチの恋」なんだけど、彼女にも気づかなかったなあ。
ふだん豚肉は食べているんだけど、この映画をみるとちょっと気にしてしまうかも?